ムツボシくんの山城全盲物語
むつぼしくんが飛行機に乗っている画像
2020年3月21日

【手で見る京都検定4】  コロナ退散を願ってこの時期に八坂神社に茅の輪

 ハーイ!ムツボシくんです。なんと八坂神社に茅の輪がこの時期に設置されました。末社に疫神社もある八坂さん、新型コロナ退散を祈念してのことです。例年、八坂さんの茅の輪、半年間のけがれを祓い清める6月末と、祇園祭を終えた7月31日に置かれます。京都新聞のネットニュースによりますと、これは「明治10年以来の設置」とありました。うーん、明治10年の春にもなにか疫病の流行または厄払いしなければいけない出来事があったのでしょうか?京都検定1級受検者のムツボシくんとしては気になるところです。今年の問題で出されそうじゃありませんか。それはそうと、まずは八坂さんにムツボシくんも出かけてみたのでした。

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本殿前の茅の輪をくぐるムツボシくん


 左右に置かれている茅の輪、左→右→また左と3回くぐるのが作法です。これは見えなくてもちょっと杖で確認しながら歩けばできるものです。(うーん、あとで調べたらくぐって正面に戻ってきたときにそのつど御礼をするのが正式作法、しかもくぐるときに唱える言葉も決まっているとか…。まだまだですね。)

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縁結びの神様でもある八坂神社本殿にもお参り


 拝む前にジャランジャランと鈴を大きく鳴らしたかったのですが、その綱もコロナ感染予防のために巻き上げられていました。

 このまま戻るのもつまんないので、摂社・美御前社にもお参りしましょう。こちらは美のパワースホットとして近年有名になっている社。ムツボシくんも還暦をすぎてカラスが踏み荒らしたようなお肌にカツ!を入れることにしましょう。社殿前にある「美容水」と呼ばれる湧き水。2〜3滴お肌につけると身も心も美しくなれるとか…。

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これが美容の湧き水、3滴だなんてしゃらくせい、顔を洗っちゃいました!

 身も心もスッキリしたムツボシくん、この時期実施されている「京都冬の旅、特別拝観」に出かけました。お目当ては特別拝観社寺を3カ所制覇すればいただける俵屋吉富でいただくお抹茶と名菓「雲龍」のセット。

 ちょっと動機が不純?かもと思いつつ、今出川駅を下りればわずか徒歩10分の圏内にある3寺院を選択。大聖寺、三時知恩寺、光照院がそれ。日本史で習った南北朝時代の北朝持明院統の名前の由来となっている持明院跡の石碑(平安後期の貴族藤原基頼がその邸宅に築いた持仏堂の名前が持明院だった)も見つけることができました。

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持明院仙洞御所跡の石碑(のちに後深草条項の御所となったので「仙洞御所」の名前がある)

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こちらがお目当てのお抹茶と雲龍。3カ所回ったのでもちろん無料です!

 さて、今回の締めくくりは、1級問題で出てもおかしくない1934年開業の喫茶店としました。ここ「フランソア喫茶室」は2003年、喫茶店として初めて、国の登録有形文化財に指定されたお店。昭和初期、当時の京都人の西洋へのあこがれを集めたような空間のようです。

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イタリアンバロック様式と言われるフランソワ喫茶室、おじゃましまーす!

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こちらが「京都でサンドイッチと言えば…」の名物「たまごサンド」

[参考]フランソワ喫茶室
 https://www.francois1934.com/
2020年2月11日

第16回京都検定、ムツボシくんが2級を突破!

 ハーイ!ムツボシくんです。2019年12月8日に実施されました第16回京都検定2級を、ムツボシくんは受検していたのであります。京都市内の商店街の問題が出題されるなど、公式テキストにはない予想外の問題に四苦八苦…、氷雨降る寒い日でしたがなんとか無事終わりました。

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同志社大学が試験の会場、問題は持ち帰れます。


 今回は、全盲者の受検に対して、主催者側の京都商工会議所は次の配慮を受け入れてくれました。

(1)別室受検
(2)解答時間の延長(1.3倍)
(3)読み上げによる出題、解答は口頭。ただし、この読み上げ者兼解答筆記者は私が準備すること。

 あくまで民間にての試験ですので、なかなか点字による出題・解答を求めることもできませんでした。それでも、1.3倍というのは全100問、見直しも含めて十分な時間がありました。

 さあて、結果はひと月後に発表…!その結果が先日届きました。

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無事、合格!2級の合格証が届きました。


 今回の2級受検者数は、2,521人。合格者数は、820人。2級合格率は、32.5%でした。ここまできたら、今年は1級にチャレンジ!ですよね。ただ、この1級は難関です。これまでに全盲者が2級に何名合格しているのかはわかりませんが、1級受検にチャレンジした全盲者はまだいないとの主催者の話でした。

 1級は記述式が60問、しかも解答語句は漢字のものは漢字で書かないと減点。他に250文字くらいの短い文章で答える問題も3問出題。現在、主催者側とは、読み上げ者による出題・画面読み上げソフト組み込みパソコンの持ち込みによる解答という方法で何とかならないかと検討を始めてもらっているところです。

2級は4択問題、こんな問題が出ます。
1級は記述式、こんな感じです。

 それにしても、今回2級を受検してみて分かったことは、あまりにも全盲者には受検対策本が少ないことでした。公式テキストですら音訳・点訳はありませんでした。ただ、京都の点訳グループ・点友会による各年ごとの過去問とその解説本が5回分あり、これがおもな参考書でした。点友会のこの5会分の過去問が点字で完成していなかったら、今回の受検もあきらめていたかもしれません。感謝です。

 最後に、もうひとつ、合格してみて分かったことがあります。なんと京都では、合格証を提示したら主な施設の入場料やホテル(レストランも含めて)の利用料が割引されるという特典もあったのでした。

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さっそく合格者の特権行使なのだ!二条城を無料にて拝観(唐門)

(でもね、二条城は障害者手帳提示で介助者も含めて常に無料ですって…。京都検定の合格証を見せるまでもなく無料ゲートに案内されちゃったのでありました。)
2020年1月9日

杖が昇天、白鳥座の隣りで白杖坐となる!?

 ハーイ!ムツボシくんです。みなさん、ちょっと聞いてください。ムツボシくんがお出かけの折は白杖(はくじょう)を利用していることはご存じですよね。なんと、先日、ムツボシくん、白杖、2度も折られちゃいました。1日に2回ですよ、2回…!こんなこと、初めてです。今回の物語はY駅から始まるのであります。

 その日は、JRにてR市に出かける用事があり、乗車するY駅前を改札に向かって白杖で歩いておりました。すると、例のごとくというか、もう、こちら京都ではなれっこというくらい、人が突然目の前を横切ったり、すぐ側を抜いていったり、そのうち、何回かに1回は杖を蹴とばされるものなのです。

 アアーッ!

 そう、だれかが杖を足元に挟んだまま、歩き去ろうとしているではありませんか。杖を持って行かれそうです。そこに、別の人がこの杖を踏んだのでしょうか。ムツボシくんの杖を持つ手にかなりの重さがかかったかと思う間もなく「バキッ!」。急に手元が軽くなりました。

 そう、音とともに、杖、折れちゃったのです。実は、今回持っていた杖は、すでに、折れそうな状態にはなってはいたのです。下の方がやや曲がりぎみ、まもなく折れるかも…とは感じておりました。そうです。京都を歩くようになり、これまで何度も踏まれたり、車に蹴とばされたり、この杖には痛い思いを散々させてきたのであります。

 ああ、ついにこの日、この場所にて白杖は折れたのでありました。「ごめんね、白杖くん!痛かったね…」

 折った張本人は若者でした。「大丈夫ですか」とは尋ねられたものの、こちらも何もいえません。「大丈夫じゃない」「弁償しろ」といっても、せいないことです。

 ムツボシくんの鞄には、いざというときのための、室内用の極細杖は1本入ってはいますが、まあ、点字ブロックもある駅ですので、このままR駅に向かうこととしました。

 「いいですよ」と、心にもない優しい言葉を投げ捨て、ムツボシくんは、折れた杖の先はそのままに、少し浮かせながら、そっと地面をこするかこすらないかの触れ方でその場を後にしたのでありました。

 JRに乗りながら、この先、この折れた杖でこするような使い方でも大丈夫か?それとも、鞄からあのヒョロヒョロの極細杖を出すべきか、善後策を考えていました。そして、思いついたのが、下車するR駅の改札で一か八かのヘルプ要請をすることでした。ヘルプとは次のようなことです

 つまり、ここまでの事情をすべて話して、「もしも、もしもですが、あればでいいのですが、そう、置いておられたらでいいのです…」。まずは下から低く低く話掛けます。「もし、あったらでいいのですが。割り箸と、ガムテープでこの杖を一時的に直したいのです。手伝ってもらえないでしょうか」といってみました。もちろん、折れた杖を見せながらです。

 すると、このR駅員のお兄ちゃん、「はい、すぐに探します」とキビキビとしたお声が返ってきたではありませんか。実は、それほど期待はしておりませんでした。それが、それがです。1分も待たないうちに割り箸と布テープを持ってきてくれたのでした。助かった!これで、しばらくは歩けます。折れた部分は、割り箸を添木にしてぐるぐる巻きにしてもらいました。しっかり固定できたみたいです。軽く地面を突いても大丈夫です。駅で杖を直してもらったのは初めて…本当に感動しちゃいました。(お昼でしたが、あの駅員さん、せっかく買い込んでいたカップラーメン、食べる割り箸、なくなっちゃったのでは…。もしかして今頃は鉛筆2本ですすっていなけりゃいいのですが)

 そして、時は流れて夕方のことです。用件もすませて自宅近くまで戻ってきました。この交差点を渡ればムツボシくんのマンションも目と鼻の先。音響信号が渡れる音になりました。もうここまでくれば安心感も出てきます。

 アッッッ!

 私、横断歩道の真ん中で、「あっ」といって立ち止まっちゃったのであります。突いていた杖の感触がなくなったのです。自転車のブレーキがキュキュキュキュ!

 そうです。自転車がムツボシくんのあの瀕死の重傷、包帯ぐるぐるの城杖くんをまたしても挟んで行きかけたのです。車輪に杖先を巻き込んだものの、そのまま走り去ることもできずブレーキをかけたのでしょう。あえなく、白杖くん、この日、2回目の骨折とあいなったのでありました。

 ムツボシくんは、杖を車輪から引っこ抜こうとして必死なのに、自転車の持ち主の声が聞こえてきません。「こいつ、だまったまま、立ち去ろうとしているな」と思ったムツボシくん、まわりを歩いている人を意識しながら、あえて大きな声で

 「あーあ、どうしましょ。折れちゃいましたよ」といってやりました。ほんとは、割り箸が折れたのではありますが、そんなこと関係ありませんよね。

 まだ、声がしてきません。

 ようやく車輪から抜けたブラブラの城杖を、見せるつもりで掲げ持ち「どうしたらいいんですか?」といい放ちました

 ここで、ようやくですよ。「大丈夫か」、なんと、おじいちゃんの年老いた声がしてきました。この声、聴いて、もう叱る気もなえてしまいました。全盲者にとって杖が折れたら「この先どうやって歩くのだろう」なんてことを考えられる想像力もないようです。

 「まあ、なんとかします。どうしようもないじゃないですか」とこの日2回目の捨て台詞。音響信号も鳴り終わった横断歩道の残りを危なっかしく渡り、折れた杖の先端をブラブラさせながら戻ったのであります。よく知った道で、残り家までは100mくらいだったのが救いでした。

写真1
折れてしまっても杖は杖、家まではもう少し



 1日に2本の杖が折れるよりは、1本が2回、折れる方がましだったね、とでも思わないといけないのでしょうか。

 警察を呼んで、弁償することに持ち込むこともできたでしょうが、見えないムツボシくんから逃げるのも簡単ですよね。

 証拠のビデオがすばやく撮れるといいのでしょうが。そのすばやくビデオを撮る練習もこれからの視覚障害教育ではこのご時世しなきゃいけないのでしょうか。

 それともです。人込みでは杖を突いてはいけませんという声もあると聞きます。それはおかしいとムツボシくんは思います。今回も前に杖を出してしっかりついていたのではありません。本当は1m暗い先を杖で探索したいのですが、人がいるので自重しての使い方をしていました。それでも、こんなふうになるのです。

 杖を折った今回の二人も、悪気はもちろんないのです。でも責任はあるように思いますが、どのように責任をとってもらえばよいのかわかりません。なんせ、「杖が使物にならなくなっちゃったら、この人はどうやって歩くのだろうか」ってことすらも想像できない人たちなんですよ。ムツボシくんはどうしたらよかったのでしょうか。

 この日、3年8ヶ月の短い壽命を終えたマイケーン・白杖くん!どうか昇天したらお星様となってムツボシくんの安全な歩行をこれからは見守ってくださいね。白鳥座の隣り、白杖座となって…!