ムツボシくんの仙台全盲物語
むつぼしくんが飛行機に乗っている画像
2023年10月25日
温泉宿、見えない人は部屋の風呂!?


 ハーイ!ムツボシくんです。今回は、全盲でも温泉宿の大浴場につかりたい!というお話です。全盲だとなかなか温泉宿で宿自慢の大浴場や露天風呂に入るのをあきらめざるを得ないという話をよく聞きます。介助してくれる友もいない一人旅はもちろんですが、夫婦の旅においても介助者が異性の場合、旅先で大浴場内でのヘルプが受けられないからです。そこで、ムツボシくんはどうしているのか?その方法を紹介しましょう。

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川が温泉(宮城県大崎市吹上温泉)



 【見えなくても旅先で大浴場に入る方法】

 (1) まずはフロントに電話をします。「私視覚障害で見えないのですが、10分でいいので大浴場でサポートお願いできますか?」と頼みましょう。ここで、相手側に「これは大変なこと、頼まれるのでは?」と思わせる間もなくです。気軽に、そう、ごく気軽に「脱衣場と浴室をちょっと一緒に歩いていただくだけでいいのです。10分ほどですみますので。」「連れて歩いていただければ、脱衣の棚や浴室への入り口の位置、浴室内では洗い場と湯船の位置を覚えますので。」「覚えたらあとは一人で動けます。一緒に入っていただく必用はありません部屋に戻る時にはフロントに電話させていただきますのでその時に迎えにきてくださいますか。と続けるのです。

 (2) フロントの係から「いいですよ。」と返ってきたら早速自分の部屋まで迎えにきてもらう時間を打ち合わせしましょう。「手が空いた時間でかまいませんよ。」とも付け加えておきましょう。

 (3) 脱衣場で案内してもらいつつ覚えておくことをまとめておきますね。
 a.大浴場の入り口・下駄脱ぎ場・脱衣場に入る扉の位置関係
 b.脱衣場の入り口から壁や棚など何かをつたって最短距離で行ける浴室入り口までのルートの確認
 c.自分の脱衣の棚を上のbのルート上で確保
 d.内線電話の位置の確認と使い方を尋ねる

 (4) 次は浴室です。浴室内で最低これだけは覚えましょう。
 a.白杖を持参して入ります。扉から一番近い湯船の位置までを案内してもらい、また扉まで戻るルートを確認
 b.扉から最も近い洗い場までのルートを確認
 c.洗い場では、椅子・桶・シャンプーやボディーソープなどのボトルの確認。カランの使い方も心配なら尋ねておく。

 (5) 最後は一人で歩けるところを見せて仕上げです。
 a.浴室にる扉に立ち、「そばで見ていてくださいね、ちょっと覚えたかどうか一人で歩いてみます。」と伝えて白杖を使って歩きます。扉←→湯船、扉←→洗い場。
 b.脱衣場に戻り、扉←→脱衣棚、脱衣棚←→内線電話、脱衣棚←→出口。
 c.見えない人が一人で歩いているところをみてもらい安心してもらいましょう。迷うルートがあったら再度覚え直しましょう。

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成功例@山形県天童温泉「ホテル王将」



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成功例A石川県「金沢白鳥路ホテル山楽」



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成功例B高知県土佐清水市足摺温泉「海上館」



 【注意】

 (1) 白杖を持って浴室に入ることをおすすめします。洗い場ではまず杖先を洗いましょう。杖を湯船につけるのはもちろんNGです。

 (2) 宿に介助をお願いするタイミングですが、ムツボシくんの経験から言いますと、実際に宿に到着してから依頼をした方が成功率は高いようです。事前に電話やメールでお願いをすると「人手が足りないので」とか「危ないので」などと難癖をつけて断ってくることが多いようです。

 (3) 旅行会社などを通して予約を入れる場合、「障害者差別解消法」のガイドラインもあって、旅行会社がこの頃は「お手伝いできることはさせていただきます」などの対応が増えてきました。ただ、まだまだです。この夏のパッケージ旅行でのH急社とムツボシくんとのやり取りはこんな感じとなりました。

> ムツボシくん様のご要望について宿泊ホテルに確認を行いました所、2泊のホテルともに、「家族風呂」「貸し切り露天風呂」の設備はございませんでした。また、「宿の職員の方などで浴場内での介助を希望」というご希望につきましても両ホテルに再度確認を行い、協議した結果、ホテルから下記の通り回答がございました。

> ■フロント係など勤務人員が不足しており、満足な介助を提供することが難しい。

> ■ムツボシくん様 ご自身で入浴された際に事故や怪我をされた場合、ホテル側として責任をとる事ができない。

> 誠に恐れ入りますが、今回のご旅行につきましては、先日お伝えさせていただきました「お部屋の浴室をご使用いただく」というご回答となりますことご理解頂きたく存じます。

 予定通りの断り方ですね、ある意味お見事です。ムツボシくんはこの旅行、あえて温泉での介助はないものと思い出かけました。部屋に案内された後て、何もなかったかのようにフロントに電話。大浴場での介助を依頼したのでした。すると、あれあれ2泊とも、手のひらを返したように「いいですよ!」ですって。H急社よ、あなたはどこと交渉してくれていたの、これまで?やっぱり、介助依頼は当日その場がよいようです。
2023年9月26日
見えなくても探れた八坂の塔の心柱
 ハーイ!ムツボシくんです。視覚を用いずに建築様式を理解するのはなかなか困難なもの。そんな中、これまで話にはよーく聞いていたけど、実際にはそのものに触れてみたことがなかった「心柱」に先日偶然出会えました。産寧坂を散歩中のこと、いつもは閉まっているこちら八坂の塔(法観寺)が開いているではありませんか。

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京都東山のシンボル・五重塔の法観寺八坂の塔



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扉が開き五重塔内を見学



 さっそく拝観。初層には阿弥陀仏など多くの仏像が配置されているようです。それらはもちろんさわるわけにはいきません

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2層までが見学可能、それにしても急階段



 そこで、何か触覚でこの知識欲を満たせないかと危険な急階段を2層まで上ったときのことです。なんと心柱が目の前近くにやってきたではありませんか。

 飛鳥時代以来、塔先端の相輪と地下に埋めた仏舎利とを真っ直ぐつなぐ精神的な柱でもある心柱。現代においてもスカイツリーの免震機能として使われている心柱。延長したムツボシくんの手で確かに感じ取れました。いわばお釈迦様そのものとも言える心柱、誠にもったいない所業ではございましたが、じっくり探索させていただきました。

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初めて心柱を実感!確実に何かが伝わってきます



 こちら八坂の塔でもう一つの触り所はこちら!四隅の天井で魔除けの役割を果たす風鐸。風鐸には猪目(いのめ)と呼ばれるハート型の切り込みや穴が意匠としてつけられているのです。古代にもハート型のデザインが意味を持っていたのですね。

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釣り下げられた青銅製の風鐸にみるハートのデザイン



 法観寺は聖徳太子による創建ともいわれる京都でもかなりの古刹。この重文の五重の八坂の塔は高さ46m。全盲者にとって杖1本で楽しめる寺院の一つと言えます。

2023年8月4日

‘手でみる清水寺’を学生に案内してわかったこと

 ハーイ!ムツボシくんです。先日、ムツボシくんは依頼を受け、プロダクトデザインを研究している学生さんたちと清水寺を訪問しました。「見えない人がお寺を主体的に楽しむためにはどんな方法が有効か?」ムツボシくんの最近の関心事がこの日のテーマ。アイマスクを用いて「手でみる清水寺」の一端を学生さんたちにも体験してもらったのです。デザイン系の学生さんたちの研究への刺激となればうれしいのですが…。

 【言葉による説明はどこまでも受け身的】 まずは清水寺塔頭・善光寺堂の首振り地蔵を前にして、見える人から目をつむったままの人にこの地蔵さんのことを自由に言葉で説明してもらいました。地蔵前まで目をつむったままやってきた学生さんに、果たしてどんなイメージが言葉を聞くだけで描かれたのか?さあ、目を開けて答え合わせ!

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首振り地蔵前。言葉だけの説明でどんなイメージが描けますか?



 でも、幸いこの地蔵さんは手でさわれるのです。また首を回すこともできます。目をつむってさわり、そして首を回してみる。それだけで言葉は流れる向きを変えるのでした。見える人から発せられる言葉を見えない人が聞く→(さわることで)→は見えない人から見える人へ‘質問という言葉’が発せられるのです。「ここは何色?目はこれで開いておられるのかな?」などなど…、聞くだけの受け身的立場から質問をする主体的立場への転換が起きたみたいでした。

 【さわれないものは粘土でイメージの素をください】 言葉による説明には限界があるため、どうしてもさわって確かめたいという思いがつのります。でも、それができないのが文化財などです。早く3Dプリンタによる文化財等のさわってもよいレプリカが気軽に出回ることを願っています。ただ、「なんだ、さわれないのか…」といってあきらめず粘土の活用をムツボシくんは呼びかけます。形は大雑把でかまいません。全体像や各部をイメージするための‘イメージの素’がほしいのです。見たことのないものなら、「粘土があるとないとでは全然ちがうね」と学生さんたちにも共感いただきました。

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虎が線刻された有名な石灯籠を粘土で表現する学生さん


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 ‘清水式’と呼ばれる風変わりな千手観音を粘土で伝える学生さん



 【第一発見者にならないと感動が生まれない】 さわれるものがあっても、見える人が先に「これは○○です」と説明をしてはいけません。まずは黙ってじっくりさわってもらう。そして、さわりながらどんどん質問をしてもらう。イメージが積み上がっていくプロセスを見えない人自身が楽しめてこそ感動につながるのです。こうして見えない人自身が「自分でさわってわかったという第一発見者」になることが「手でみる」という醍醐味なのです。
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「弁慶の足裏の形がくぼんでいますよ」なんて先に言ってはいけません



 最後に、学生さんたちに最も印象を残した場所がこちら。まさに‘手でみる清水寺’の真骨頂!手でさわって、手で考える場所。見える人もわからない。一緒に「なんで?」を出し合えるおもしろい場所が清水寺本堂外壁のこの溝の謎なのです。
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本堂外壁のこの溝、なんでできたの?工具でつけた溝とは違うんだけど…。



 この日、学生さんたちには、アイマスクによって俄全盲者になってもらいましたが、それでも‘手でみる清水寺’はかなり印象に残ったみたいでした。見て楽しむ世界とは異なり‘手で楽しむ世界’が清水さんには確実にあることをムツボシくんも印象づけられた1日でした(負け惜しみかな…?)。

2023年4月25日

あなたの触覚が2度阿弥陀様とつながる

 ハーイ!ムツボシくんです。今回はあなたも阿弥陀様と直接つながってみませんか?というお話。場所は金戒光明寺(京都市左京区)です。ここは法然上人が比叡山を下り、はじめて草庵を結んだ浄土宗発祥の地。山門には後小松天皇の宸筆で「浄土真宗最初門」の額が見られます。

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満開の桜と山門



 また私たち全盲者の偉大な大先輩、近世筝曲の祖・八橋検校が埋葬されている常光院(通称八はしでら)は金戒光明寺の塔頭であり、この山門の手前を右に進むとすぐです。お正月ともなるとどこかしら聞こえてくるお琴の調べ「六段の調」の作曲家が八橋検校です。

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門前左に立つ「八はしでら」の石碑



 さて、金戒光明寺では2度触覚を通して阿弥陀仏とつながることができます。まずは1回目。アフロヘアの阿弥陀様として有名な五劫思惟阿弥陀仏に出会いに行きましょう。ガイドヘルパーさんに連れて行ってもらうのもいいでしょうが、今回は点図ボランティアとムツボシくんが製作した点図の境内図があります。点字の線をたどって南門から境内へ。そして墓地の中を三重塔に向かって東に進むというルートをまずは頭に入れます。これから歩く方向や曲がり角を事前に頭に入れて歩くのと、ただひたすらガイドヘルパーに引っ張って目的地に連れて行かれるのと旅の気分がどれだけ違うか、みなさんには想像できますか?

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点図の境内図、点字は読めなくても線をたどることで方向や広がりがつかめる



 点字の線をたどると阿弥陀様の方向は…、「次は右に曲がるのですね」。すると阿弥陀様は墓地の中の坂の石段横におられるとのこと。さっそく触覚を通じての対話を始めましょう。わあっ、噂通りの髪型。お顔がとっても柔らかな印章、ただムツボシくんは少し集合体恐怖症の気があるので特徴的な螺髪をじっくりとは触れられませんが、時間が経つと直接阿弥陀様とつながった感じがしてきます。

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お外におられる石仏、阿弥陀様との触覚による対話が可能



 そして2回目の阿弥陀様とつながる体験はこちら。御影堂の中です。

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金戒光明寺御影堂。鏡の御影と呼ばれる法然上人のお姿や多くの仏像を安置



 普通、お堂の中には触れてもよいものはないものです。こちらの御影堂にも重文クラスの仏像がおられますがもちろん触覚による対話はできません。ただ、レプリカではありますが、なんと重文指定の「山越阿弥陀図屏風」と触覚でつながることができるのです。

 この屏風は往生者の枕元に置かれ、彼岸に旅立つ者と屏風内に描かれた阿弥陀様の手とを五色の糸で結ぶためのものでした。実際、現存する屏風には糸がいまも残っているとのことです。

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パンフレット「黒谷金戒光明寺」より「山越阿弥陀図屏風」



 ここ御影堂ではレプリカではありますが、山越阿弥陀図が再現され五色の糸が阿弥陀様の手より垂らされ、それを握って極楽往生をムツボシくんもひたすら願うことができるのでした。

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五色の糸で屏風内の阿弥陀様と触覚でつながるムツボシくん



 でも、実際どんな阿弥陀様の絵なんでしょう?お姿が拝見できないのはくやしくも悲しいものです。そこで点図ボランティアとともに「山越阿弥陀図」を点図にしてみました。

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点図の山越阿弥陀図。指で図を読み取るにはここまで原図をデフォルメ



 阿弥陀様との触覚による対話をテーマに金戒光明寺を紹介しましたが、他にも手でみるポイントがこのお寺にはいくつかあります。

 最後に東側に広がる墓地の見所を紹介しましょう。こちらは亀のお墓?「亀趺(きふ)」と呼ばれる珍しい墓石です。

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亀のお墓は山本鐵心の墓石



 山本鐵心は江戸初期、大坂の陣にて後藤又兵衛を破る活躍を見せ家康の信頼を得た人物のようです。

 この墓地の北東部には幕末期、新選組をかかえる京都守護職の本陣があり、今では300基を超える会津藩の殉難者の墓地となっており、松平容保の像もあります。

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会津藩殉難者墓地・京都守護職本陣跡



 その近くの塔頭・西雲院には法然上人が腰掛けて、ひたすら念仏をするとたちまち紫雲がたなびく霊験あらたかな体験をしたという「紫雲石」があり、念仏有縁の地がこことなっています。

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西雲院の紫雲石



 視覚障害のみなさんも「見えないからつまんない!」と嘆く前に、点図の境内図を手元に時間さえ許せば、手でみる旅が楽しめる数少ないお寺の一つとして金戒光明寺を訪れてみるのはいかがでしょうか。なお、今回紹介した点図2枚・「金戒光明寺境内図」「山越阿弥陀図」について興味と必用のある方はどうぞ遠慮なくムツボシくんまでメール連絡ください。
2023年2月11日

餅の花が咲いた相楽神社・餅花祭

 ハーイ!ムツボシくんです。恥ずかしながらムツボシくん、お餅を枝に飾って花に見立てるなんていう見える人たちの文化、知りませんでした。お餅の花は豊かな稔りの象徴なんですね。

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2023年北野天満宮お正月の花手水、紅白の餅花がいっぱい枝に咲く


 
奈良に近い木津川の西に餅花祭で有名な相楽神社があります。本殿にとっても大きな餅花が咲き誇るのが毎年2月1日、ムツボシくんも出かけてきました。(この神社、「相楽」と書いて「さがなか」と読みます。難読地名ですね。)
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こちらが餅花が奉納された相楽神社
 


 ムツボシくん、さっそく境内へ。すると総代長のNさんの声が耳に届きました。「えっ、なんで総代長の声がわかったのか?」ですって…。実は数日前のKBS京都ラジオでここ相楽神社の餅花祭について取材を受けておられたのがNさんだったのでした。
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とにかくでっかい!餅花は夏みかん大の小麦粉の団子



 Nさんにしっかり触らせてもらいました。餅を挿している土台は、中に瓢箪型の粘土を入れた藁の包み(ションマラと呼ぶ)。ここに先が二股に割れている竹の棒が枝に見立てられ10本ほど挿されています。この竹の枝に5個の餅花が3個と2個に分けて咲いているのでした。餅花の下には紙で紅白の萼、お餅には紅でかわいいバッテンなども描かれていると言います。このションマラが本殿いっぱいに20ほど上からつり下げられていました。
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地元ケーブルテレビ(KCN京都)の記者さんともお話



 この餅花を奉納するのは中世以来残る宮座の組織だと言います。常駐の神職はなく、当番にて村の住人が祭祀を行う組織が宮座のようです。

 午後一時になると祭礼が始まりました。地域の人に教えてもらい作ったションマラを奉納した相楽小学校4年生たちも賑やかに境内にやってきたのでありました。
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神職が各宮座の総代を鈴でお祓い

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巫女神楽の奉納が始まる

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神楽を舞う巫女
動画はこちら



 午後二時ころ、祭礼が終了すると、各座の人々が餅花を取り外して帰っていきました。餅花は地元に配り各家で食するようです。
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祭礼が終わりションマラから外して餅花を持ち帰る地元の人たち



 ムツボシくん、果たして謎めいたでっかい餅花とはどんなものなのか、少しでもイメージできるようにヘルパーさんに作ってもらおうと紙粘土を持参してきたのではありますが、来るまでは、餅花の形も大きさもすべてが謎めいていたムツボシくん。紙粘土を持参しヘルパーさんにお願いして「らしい形」を作ってもらわないと…と思っていたのでした。今回は実際の餅花をさわらせてもらえて、謎も氷解、すべてスッキリしちゃったのでありました。

[参考サイト]
○儀礼文化歳事記/京都府木津川市相楽神社の餅花祭
 http://www.girei.jp/seasonalterms/mochi202012.html

2023年1月20日

手でみる都七福神まいり

  ハーイ!ムツボシくんです。今回は一度に七つの寺社をめぐる都七福神まいりのお話です。七福神まいりの発祥は、室町時代まで遡ると言われ、京都が発祥の地。特に新春1月中に巡拝すると七難即滅、七福即生が極まり功徳が大きいとされています。七福神とは、ゑびす神、大黒天、毘沙門天、弁財天、福禄寿神、寿老神、布袋尊の七神です。このうち日本出身の神様はゑびすさんのみ。「…天」のつく三体の神様はインド出身、残る三体は中国出身となっています。

 なんと今年は都七福神草創600年記念事業として金印の御朱印が授与されている新春の京都。ムツボシくんも大きな福をいただこうと先日七福神まいりに出かけてみました。また、七福神様のお姿を恥ずかしながら私知らなかったのです。見えない人の中には私同様、「七福神なんてさわったことなぁい」と言われる方もおられることでしょう。そこで、福をいただくとともに七福神に触れる旅に出かけてみませんか。それでは手でみる七福神探しの旅の出発です。

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これは便利!1月限定、定期観光バスで出発!都七福神まいりコースがあります



 まずは景気づけに商売繁盛のゑびすさんに会いにいきましょう。京都ゑびす神社です。ゑびすと言えば釣り竿と鯛が特徴です。

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鳥居の福箕(ふくみ)にコインが投げ入れられれば福来たる(東山区・京都ゑびす神社)



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右手に釣り竿、左脇に鯛を挟むゑびすさん(授与品売り場の3万円のゑびす像がわかりやすい)



 ゑびすさんは少し耳が遠いと言われます。そこで本殿の左横に回ってゑびすさんの肩をそっとたたいて「私に気づいて」と言わんばかりにもう一度お願いをします。

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ゑびすさんの左耳に音が届くようにこちらの板壁をたたく



 続いて、大黒天と布袋尊を見分けてみましょう。大黒天は松ヶ崎大黒天(妙円寺)、布袋尊は宇治市の萬福寺です。この二神はいずれもサンタさんみたいに袋をかつぎお腹も出ています。ただ持ち物に違いがあるのです。

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打ち出の小槌と袋を持つのが大黒天(左京区・松ヶ崎大黒天)



 そして萬福寺では、天王殿の布袋尊をお参りしたら土産物売り場に行きましょう。ここに売り物ではありませんがとってもよくわかる布袋さんの像があります。

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萬福寺天王殿の布袋尊(宇治市・萬福寺)



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大きな袋のみなら布袋尊。瓢箪を持つこともある(萬福寺お土産物売り場)



 七福神の中で紛らわしいのが寿老神(革堂)と福禄寿神(赤山禅院)の見分け方でしょうか。これら二神は元は同じ仙人だったという節もあるくらい。ともに頭が長くて髭をたくわえ杖や巻物を持っています。この二神は連れている動物で見分けましょう。

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寿老神はお腹の前に横向きの鹿がいる(中京区・革堂)



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鹿がいないのが福禄寿。鶴や亀を率いることもある(左京区・赤山禅院)



 さて、残るは六波羅蜜寺の弁財天と東寺の毘沙門天。ただ、これら二神を触る像が六波羅蜜寺にも東寺にもありません。しかし、赤山禅院と革堂では七福神像7体を並べてあり自由に触らせてもらえるのです。特に弁財天と毘沙門天についてはこの二寺で触っておきましょう。弁財天の特長は唯一の女神で楽器の琵琶を持っています。そして毘沙門天は弁財天とは対照的で勇ましい。甲冑をまとい右手に如意寶珠(武器にもなる)、左手に宝塔を持ち、足で邪鬼を踏みつけている姿です。

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六波羅蜜寺弁天堂(東山区)



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東寺毘沙門堂(南区)

 東寺にてどこかに毘沙門天の触れる像はないのか?とうろうろしていて見つけたのがこれ!

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毘沙門天が邪鬼を踏みつけている足の形のおみくじ



 以上、定期観光バスでめぐる七福神まいりコースは約7時間半。料金は宝船弁当付きで約1万円。介添え舎も含めた障害者割引があります。おまいりとともに、ぜひ七福神の特徴を手で読み取ってみてはいかがでしょうか。

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こちらが宝船弁当(ホテル京阪・京都グランデにて)

○参考サイト
都七福神まいり(都七福神事務局公式)
 https://miyako7.jp/