ムツボシくんの山城全盲物語
むつぼしくんが飛行機に乗っている画像
2024年4月17日
数々の神の使いに触れられる大豊神社
 ハーイ!ムツボシくんです。京都屈指の桜の名所と言えば「哲学の道」。見えない人にとっては、花より団子と言いたいところでしょうが、ここ哲学の道沿いに並ぶカフェやスイーツはムツボシくん世代に言わせれば異常なインバウンド価格!とても手が出せません。それでも、どうしても哲学の道で手を出してみたいというあなたにお薦めの場所を紹介します。こちら大豊神社です。

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哲学の道から大豊神社への分かれ道にある有名な桜

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桜満開の大豊神社の鳥居



 大豊神社は、元々は山岳信仰から始まったと言われ、そのご神体は背後の椿ヶ峰というお山。そのためでしょう。境内のあちこちに立派な椿が咲き誇り、あなたが手で愛でてくれるのを待っています。

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樹齢400年の大豊八重神楽という椿(花が鈴なり)

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夫婦の難儀を晴らしてくれる夫婦梛(めおとなぎ)の木と椿



 この他にも、白と紅が一輪の中で半分ずつに色づく「奇跡の一輪」と呼ばれる椿、本殿前には洛中一古い枝垂桜と向かい合う枝垂紅梅など手で花を愛でるポイントがいっぱいです。

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2月29日本殿前の枝垂紅梅が見頃間近です

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4月4日本殿前の枝垂れ桜が満開です



 この神社では本殿よりもむしろ境内にいくつもある末社がそれぞれの特色があって興味深いです。

 さあて、手で愛でる大豊神社。実はここからが本番です!本殿・末社を問わず、境内には数々の動物像の狛犬があるのです。いわば、神の使いたちに手で直接ご挨拶ができるのであります。この季節、動物像たちは椿で飾られます。

 まずは本殿前には古くからの狛犬に加えて近年奉納された狛蛇。来年は巳年、こちらがブームになるかもです。

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本殿には狛蛇、白蛇と黒蛇、左右でポーズも異なる



 特に有名なのが縁結びの大国社。こちらの狛鼠。左側の吽形狛鼠は長寿を表す水玉、右側の阿形狛鼠は学問を意味する巻物をそれぞれ抱いています。さわりどころですね。

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末社大国社の狛鼠、お口の中にはしっかりネズミの歯



 その他にも、火伏せの愛宕社の前の狛鳶(とび)。鬼門除けの日吉社の前の狛猿。商売繁昌の稲荷社前の狛狐を触ってみましょう。

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愛宕社の狛鳶と日吉社の狛猿(猿は扇子を持ってお団子を捧げ持つ)



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稲荷社の狛狐(こちらも学問成就の巻物をくわえている)



 最後は良縁招福の石「福縁石」に触れてみましょう。触れながら願いをこめると良縁がやってくるかもです。

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福縁席に願いをかけるムツボシくん

[参考サイト]
○大豊神社/京都 哲学の道 狛ねずみの社
 https://ootoyojinja.jp/
2024年3月9日
唇と舌でみるムツボシくんの花見 〜ソメイヨシノよりは河津桜がイイ〜
 ハーイ!ムツボシくんです。今日3月7日、ムツボシくんは桜の花見だったのであります。淀水路(伏見区)の河津桜です。淀と言えば京都競馬場で有名ですが、ここんとこ、京都で一番早い花見スポットとしても淀水路は知名度を上げてきているのであります。ネットによりますと、街づくりを目指し、2002年に伊豆を訪れ2本の河津桜の苗木を購入し淀水路に植えたのが始まり。現在は約300本。2006年に発足した「淀さくらを育てる会」が中心に植樹が進められ、街おこしがされてきました。今年は最寄り駅の「淀」を通る京阪本線では、ホームと言わず車内と言わず「ただいま淀では河津桜が見頃です」と放送も盛んです。

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京阪淀駅前のロータリー、この時期はもちろん河津桜がお出迎え


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淀駅から徒歩10分ほどで突然満開の河津桜が…


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平日の午前とは思えないこの賑わい


 さて、全盲の視覚障害者は桜をどのように感じ取るのか?です。梅と異なり匂いでは楽しめませんが、こんもりと密集してぼんぼりのように咲いている様子は、紙風船をやさしく飛ばすようにぽんぽんと手のひら全体で楽しめます。ただ花一輪を指先で愛でることはソメイヨシノでは難しいのでした。ソメイヨシノの花は指先で探索するには少し小さすぎるのです。

 そこで、河津桜なのです!ピンク色も濃く弱視にもお薦めの河津桜。花一輪が大きいのです。これなら集中すれば指先でも探ることができますが、お薦めの技があります。唇と舌先で花を探るのです。これなら、1枚ずつ花弁を抜いて花占いだってできちゃいます(おそらく5枚なんだから「スキ!」から必ず始めること!)。お花見に出かけるのなら視覚障害者のみなさん、断然、河津桜の花見をお薦めします。

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舌に軽く触れさせ花の下の軸をゆっくり回しながら観察するとよくわかるよ

【注意】ただし、なんでもかんでも唇や舌先で植物を観察してはいけません。有毒
植物かもしれないからです。トリカブトは有名ですね。他にも身近なところでは、ス
ズラン・チョウセンアサガオ・キョウチクトウ・クリスマスローズなど、花や葉・根
に毒を含むものが日本にも存在しているからです。観察する前にはよく調べておくこ
とも大切ですね。



[参考サイト]
○淀さくらを育てる会
 http://yodosakura.blogspot.com/
2024年1月20日
2024年京都で龍を手で見るならここ!
 ハーイ!ムツボシくんです。今年の干支「辰」にちなみ、今回は龍を京都で手で見るスポットを紹介します。

 【伏見神宝神社】 伏見稲荷大社の千本鳥居をくぐり奥社奉拝所(奥の院)へ。そこを左に進むと右手の急な坂の上に鎮座するのが伏見神宝神社。龍に触れることができる珍しい神社となっています。

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伏見神宝神社の全景



 創建は平安時代初期、かつては稲荷山に祀られており、中世以降衰退していたものを昭和32年(1957年)に現在地に再建。こちらには狛犬ならぬ狛龍があり、じっくり手で見ることができます。

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左右の狛龍に触れ、天と地を行き来する龍の形をみてみよう



 次に、境内の摂社のひとつ龍頭社(りゅうずしゃ)。稲荷山の地主神とされる龍頭大神が祀られています。西陣織の金具の龍頭にちなみ「衣の神様」とも。また、この龍頭大神はかぐや姫が求婚者・大納言大伴御行に持ってくるように課した「龍の首にある五色の玉」の持ち主。そこから、この地は竹取物語発祥の地とも言われています。

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龍頭像の口には宝珠、3本の爪もよく触ってみよう



 祠の横には水の中から姿を表す龍頭像があり、龍が口にくわえている宝珠を回しながら祈ると願いが叶うとされています。ただ、今年はその宝珠が外されていました。

 本殿の奥に進もう。霊山である稲荷山を遥拝するパワースポットがあり、朱塗りと竹製の2つの鳥居の真下には、磐境(いわさか)があり、神社の御神石とされる、降臨石「たけのこ石」が祀られています。「見えないので特別に触らせてください」と心の中でお願いしそっと触れてみました。

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降臨石のたけのこ石。苔むした形はまさに筍に見える



 【瀧尾神社】 JRや京阪の東福寺駅からすぐの神社です。全長8mもの龍の彫り物が拝殿の天井に立体的に張り付いているのです。雲竜図や蟠龍図などが天井に描かれた寺院などは多いのですが、この彫刻をどうやって天井に固定しているのでしょう。これまた珍しい神社であります。

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瀧尾神社拝殿の天井の龍の彫刻(江戸後期九山新太郎の作)



 創建は不明、平安時代や遅くとも鎌倉時代には成立したと考えられています。1717年にのちの大丸百貨店となる呉服店を伏見に創業した下村彦右衛門正啓の支援を受け下村家大第の援助のもと社殿も整えられ、本殿の欄間には精巧な十二支の彫刻も残っています。ただ、この龍だけは言葉で説明されてもイメージできるものではありません。そこで見えない人の観光必須アイテム・紙粘土の登場!近くの茶店に休憩がてら、同伴者にザッと作ってもらうとよいでしょう。

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3本爪でとぐろを巻きその隙間には雲があり、雲間には金の宝珠が…