私が滋賀県を中心に過去実践した事例の中から、子どもたちの心に響いたなあと感じている授業のヒントを6個集めてみました。いずれも子どもたちはアイマスクをつけて授業に参加していくスタイルです。
【体験内容】
アイマスクをして百人一首のカードによる「坊主めくり」をします。お姫様のカードと坊主のカードには手触りの違うシールがそれぞれ張られています。これらを指先で触って読み取りゲームを楽しみます。
【学びのポイント】
@百人一首のカードに張られている「姫」と「坊主」のシールの違いに、指でも意外と気づくものです。アイマスクをしたままでも、ゲームにのめり込んでいける体験をしてみましょう。
A自分のカードに一喜一憂しているだけではおもしろくないものです。隣の人は坊主だったのか、お姫様だったのかがわかったり、今だれがカードをめくっているのかがわかると楽しさもふくらんできます。アイマスクをしていてもゲームの進行状況がわかることで楽しい雰囲気をみんなで共有しているという感じを味わってみましょう。
【準備するもの】
@百人一首の読み札1セット100枚(チーム数分)
a.お姫様カードは、右下に大きい円形のタックシールを張っっておく(シールを2枚重ねて張ると高さがより出て、指での気づきがよくなる)
b.坊主カードは、左下に小さい円形のタックシールを張っっておく(シールを2枚重ねて張るとこちらも高さが出て、指での気づきがよくなる)
※a.bの違いが目立つようにシールの大きさにコントラストをできるだけつけるようにする。
A場に積み上げてあるカードが倒れないようにするための箱(箱の中にめくるためのカードを入れておく)
B坊主を引いたときに、場に出すカードを入れておく箱
【すすめ方】
@数名1チームとして行うとよいでしょう。まずルールを説明します。
a.口ジャンケンで誰から始めるかを決めます。
b.カードの種類には、「お姫様カード」と「坊主カード」とそれ以外の「お殿様カード」の3種類があることを伝え、お姫様カードの識別シール、坊主カードの識別シールをみんなで触って確かめます。お殿様カードはシールのないカードでツルツルしていることも確かめておきましょう。
c.目をつぶっても、お姫様と坊主のシールの違いがわかることを試してもらいます。
d.場のカードを順に1枚ずつめくっていきます。めくったカードは自分のものとなります。100枚最後までめくった段階で手持ちのカードが多い人が勝ちとなります。
e.順番が来て、めくったカードが坊主なら、その時点で持っているカードすべてを場に出さなければなりません。
f.めくったカードがお姫様カードなら、場にこれまで坊主カードのため放出されていたカードすべてをもらうことができます。ただし、放出されているカードがない場合はもう1枚、場のカードをめくることができます。
g.お殿様カードをめくった場合はなにも起きません。次の人に順番が映るだけです。
A自分が引いたカードが何だったのかをみんなに発表しながらすすめます。黙ってしないようにします。今どの人が引いているのかがわかります。
Bゲーム終了後もアイマスクを外さずに、自分のカードが何枚かを数えてみます。
〈感想シートの例〉
▼アイマスクをしたままでしたが、坊主めくりは楽しかったですか?
ア.アイマスクをしていることを忘れるほど楽しかった。
イ.アイマスクをしたままではゲームはやはり楽しくない。
ウ.どちらともいまは言えない。
▼お姫様と坊主の区別はわかりましたか?
ア.指でもよくわかった。
イ.わかるときとわからないときがあった。
ウ.指ではよく区別できなかった。
▼どんな工夫をすれば見えない人とも一緒にゲームを楽しめるようになれますか?
【アドバイス】
@低学年でする場合はアイマスクをしていない人が「坊主か姫か」の判定を手伝う必要があるかもしれませんので、適宜大人のサポーターを配置してください。
A複数セット用意すると、教室内で複数箇所でできます。
B識別のためのタックシールは大小で区別する方がわかりやすいようです。円形と四角形などといった形の違いでの識別は難しいものです。また2枚重ねるとより識別しやすくなります。
Cアイマスクをしていても、ゲームの楽しさにのめり込んでいける雰囲気を感じてくれれば大成功です。
【体験内容】
手を使わないで口でジャンケンをしてみましょう。つまり、「グー」「チョキ」「パー」を言葉でいうのです。アイマスクをつけてジャンケン、勝ったら相手の頭をトンカチでたたけます。負けたとわかったらすぐに相手のトンカチを防ぐためにヘルメットをかぶりましょう。
【学びのポイント】
@ジャンケンを言葉にし音声で伝えることで、見えなくてもハンディがなくなり、工夫ひとつでいろいろなゲームができることを体感してみましょう。
Aジャンケンにかかわらず、さまざまな場面で、言葉に出して音声で伝えることだけでも、見えない人とのゲームや活動がスムーズにできるものです。ジャンケンの他にも、「こんな時にも言葉で伝えたら一緒に楽しめるね」って場面を探してみましょう。
【準備するもの】
@おもちゃのトンカチのイメージで、痛くないように団扇状にトンカチに似せた物で、頭をたたかれても、それて耳に当たってもケガしないように布や柔らかな紙で作った団扇状の物(面積の広いものの方が衝撃が少なくてよい)
A軽いヘルメット(大きめの帽子や段ボールの箱みたいなものでもよい)
B机1つ。それと向かい合って座る椅子2脚
【すすめ方】
@はじめにジャンケンを口ですることを伝えます。まずは隣同士で口でするジャンケンの練習です。「最初はグー、ジャンケン、パー」などと言葉でいいます。もちろん後出しは反則です。
A次に、‘口ジャンケンチャンピオン決定戦’をしてみましょう。全員立ちます。1回戦は隣の人同士で戦います。負けたら座ります。1回戦終了後、半数の人が立っているはずです。2回戦も同様に隣の人と口ジャンケンをして負けたら座ります。こうして最後まで口ジャンケンで勝ち進んだ人が栄えある‘第1回口ジャンケンチャンピオン’です。
B盛り上がってきたら、教室の中央を広く空けて、そこに机をひとつ置き、向かい合う位置に椅子をそれぞれ置きます。机の上にアイマスク2つ、団扇状の紙トンカチ、ヘルメットを準備します。
C2名ずつ体験します。椅子に座ったらアイマスクをつけます。
Dここで指導者がルール説明をします。「まずトンカチの場所とヘルメットの場所を手で確認してください。確認できたら手を膝に置いてください。口でジャンケンをします。勝った人はトンカチを持って相手の頭をたたきます。負けた人はヘルメットを素早く持って頭にかぶりトンカチを防ぎます。ジャンケンに勝ち、相手の頭をたたけたらポイントです。またジャンケンに負けていてもヘルメットで無事相手のトンカチを防いだら反対に防いだ人のポイントとなります。では、練習してみましょう。」
E他の人はまわりで観戦します。「たたいてかぶってジャンケン・ポン」とみんなで合唱してゲーム開始です。「たたいてかぶってジャンケン・ポン。最初はグー、ジャンケン、チョキ…」(下線部はみんなでいいましょう)。トンカチの位置やヘルメットの位置を自分に有利な場所に移動させてはいけません。あくまで最初の位置にその都度戻しましょう。また1組みあたり3回戦などとして交代で体験をしていきます。これまたチャンピオンを決める大会を後日開いてもおもしろいですね。
〈感想シートの例〉
▼はじめる前、どんなことが心配でしたか?
▼ゲーム中はどんな気持ちでしたか?
ア.思ったよりも楽しかった。
イ.耳で聞くだけでは不安だったが、ゲームはできると思った。
ウ.目をふさがれると積極的になれなかった。
▼声に置き換えるだけでできそうな遊びはジャンケンの他にも何かありそうですか?
【アドバイス】
@子供たちは盛り上がりすぎて、指導者が後で感想を尋ねようとしてもそれどころではなくなります。この体験では感想をあえて求める必要はないかもしれません。見えなくても楽しく遊べる体験を体でわかってくれるだけで大成功です。
A審判員を子供の中から選んで、「アウト!」とか「セーフ!」などとアクション付きで判定をさせるとさらに盛り上がります。
Bゲームとはいえ、紙トンカチで頭をたたくことに抵抗をもたれる方もおられるかもしれませんね。そんなときは、ルールを変えてみましょう。たとえば、机の上に押すと「ピンホーン!」というボタンを固定して置きます。ジャンケンで勝った方は自分の指でこのボタンを押そうとします。負けた方はかップラーメンの容器のようなものを素早くこのボタンにかぶせるのです。無事防ぎきれば勝ちとなります。(ボタンにかぶせる器状のものも、さらにケガしにくい容器に適宜変更・工夫してください。)
【体験内容】
アイマスクをして、インスタントコーヒーをつくってみましょう。スプーンで粉をコップに入れ、ポットからお湯を注ぎます。砂糖も好みの量を入れ、おいしくいただきましょう。
【学びのポイント】
@見えない人は、「手で工夫している」ということに気づいてください。コーヒーの瓶のフタを置く位置、コーヒーの瓶やコップを倒さない工夫、砂糖の量の調節など工夫するとうまくいくことに気づいてください。
A見なくても「体が覚えているからわかる」ということに気づいてください。意外とスプーンでうまく粉をコップに入れられるものです。またコップに注ぐお湯の量も手に伝わる重さでわかったという子供たちも多くいます。
【準備するもの】
@瓶入りのインスタントコーヒー
Aコーヒーをすくい出すスプーン
Bコーヒーを入れるための紙コップ(もしくは家からコップを持参させてもよい)
Cスティックタイプの小分けされた砂糖(スティックの方が手で入れたい分量を調節しやすい)
D押すだけでお湯が真下に出てくるポット(押しボタンには触ってわかる手触りの違うシールなどを貼っておく)
Eお湯(手にかかってもやけどの心配のない温度のお湯をポットに入れておく)
F混ぜるためのマドラー(割り箸などでもよい)
Gスプーンやマドラー置きとしての紙コップ2こコーヒーの粉を救うためのスプーンを入れておくための左前に置く紙コップと、マドラーを入れておくための右前に置く紙コップ)
Hゴミを入れるためのレジ袋
Iガムテープ(レジ袋を机の横に口を広げて貼り付ける。また、紙コップを机の左前と右前にひとつずつ固定する。)
J雑巾(念のためすぐ拭けるように机ごとに雑巾を準備しておく。
【すすめ方】
@教室内にコーヒーをつくって飲めるコーナーを設けます。体験者の数により、数カ所設けてもかまいません。できれば座ってできるように椅子も準備するとよいでしょう
。
A机には、次のものを配置しておきます。
a.左前に紙コップに入ったスプーン。(ガムテープで固定する)。
b.右前に紙コップに入ったマドラー(ガムテープで固定する)。
c.右手前横にポット。
d.真ん中にコーヒー粉のビン(固定はしない)。
e.机の左側面にレジ袋のゴミ袋をガムテープで留めておく。
B指導者は、アイマスクをせずに、コーヒーの作り方をみんなに見せながら説明をします。次のポイントを必ず説明に入れながら実際にコーヒーをつくっていきます。
a.「コーヒーの瓶を倒さないように手で工夫してみてね。」
b.「スプーンで粉をコップに入れるのって、目を使わなくてもできるかな?」
c.「瓶のフタは必ず締めてください。、あれっ、フタ、どこに置いたっけってなる人もいるかな?」
d.「砂糖は好きなだけ入れてかまいません。でも、全部入れちゃうと甘すぎるかもしれませんよ。入りすぎないように手で工夫してみてね。」
e.「ポットはここを押します。ボタンの位置は手で触ってわかるようになっていますから手で見つけてみましょう。」
f.「こぼれてもやけどしない温度ですから安心してボタンを押してみましょう。どこまで入ったかは見えなくてもわかるものかな?」
g.「混ぜるのはこの棒です。スプーンは混ぜる時には使わないでください。スプーンがぬれちゃうと次の日とがコーヒーを救いにくくなりますからね。」
h.「さあ、できあがり!飲んでみてください。思い通りのアジになっているかどうか楽しみですね。」
i.「終わったら感想を聞きますから、コーヒーを飲みながら、自分がつくっていた時の手の動きや、見えないからこそ工夫したこと、感じたことを思い出しておきましょう。」
j.「最後にとっても大切な約束をいいます。友だちがやっている時にまわりで見ている人は決して手伝ってあげてはいけません。言葉で教えてあげるのもいけません。自分が考えて工夫してみようとしている時に、横からいろいろと指図されるのってあまり気分よくありませんからね。黙ってみていましょうね。」
k.コーヒー作りで出てしまったゴミは机の横のレジ袋に自分で入れておいてくださいね。
B体験は2人組でします。体験者と見守り社です。体験者は椅子にすわったら、まずアイマスクをつけます。
C見守り社は、所定の場所から、コーヒー用の紙コップ・スティック砂糖・ミルクの3点を持ち、それぞれを体験者に「これが○○ですよ」といいながら3点を手渡します。
Dこの時に、見守り社は体験者に対して次のことを伝えます。
a.最初に今手渡した3点を好きな場所に置いてください。
b.ポットの位置と押しボタンの位置を教えます(体験者の手を取ってポットとその押しボタンの位置を教えて確認してもらいます)。
c.コーヒーの粉のビンの位置、スプーンの入っている紙コップの位置、マドラーの入っている紙コップの位置、ゴミ袋の位置を同様にそれぞれ体験者に確認してもらいます。
d.「では、始めてください」と開始を伝えます。見守り社は決して助けてはいけません。
e.体験者が作業を終えたら、見守り社は、「できあがったコーヒーを一口味見したらアイマスクを外して交代です。」と伝えます。
E体験者は、コーヒーを作り終えたら、飲み残しのコップを安全な場所に置いて、パートナーの見守り社と交代します。今度は見守り社だった人が体験者となります。
Fペアともに体験が終わったら、残りのコーヒーをじっくり味わいながら「感想シート」を書きます。
〈感想シートの例〉
▼はじめる前、どんなことが心配でしたか?
▼アイマスク中、あなたが手で工夫してみたことはどんなことですか?
▼見えなくてもコーヒーはつくれそうですか?
ア.とても私にはむずかしいと思った。
イ.これなら、なれればできるなと思った。
ウ.意外と簡単だと思った。
【アドバイス】
@体験者の学年によっては、コーヒーにこだわる必要はありません。佐藤入りの粉末飲料を用いると、、佐藤を別に入れる動作が省けますので所要時間を削減することもできます。
A不用意に手賀あたって瓶を倒したり、机からものを落としたりすることも起きるでしょうが、騒ぐことなく指導者が現状回復しましょう。
B体験のコーナーは可能なら壁面に向かって設置するとよいでしょう。
【体験の内容】
アイマスクをして廊下に散らばるゴミを箒で集めてみましょう。集まったゴミはちりとりで取ります。
【学びのポイント】
@「こう箒を動かしたのでゴミはあの辺りにあるはず」と常に予想しながらゴミを1箇所に追いつめていきます。「今はこうなっているはず。だから、次は…」という作戦を立ててイメージ通りにことがすすむかどうかを楽しんでみてください。
Aまた、同じ場所を何回も掃かないように自分の動いた範囲を覚えていられるものなのかも確かめてみてください。
【準備するもの】
@箒
Aゴミ(水でぬらした新聞紙をちぎったもの)
B廊下を前後でしきるための長机(ロープや紐を用いてもよい)
【すすめ方】
@廊下のように細長い空間で行います。ぶつかっても痛くないような長机のようなもので前後を囲み3〜5mの空間を作ります。
Aここにぬらした新聞紙をちぎってばらまきます。
B「どんな方法でもよいので箒を使って制限時間内にゴミを1箇所に集めてください。」とこの体験内容を説明します。
C指導者は、体験者をひとり招き入れ、アイマスクをつける前に箒で新聞紙のゴミを試しに掃いてもらいます。箒を持つ手に新聞紙のゴミを掃く感覚が伝わることを確認させます。
Dいよいよアイマスクをつけてもらいます。体験者はこの廊下の壁や長机を手で触りながら指導者とともにこの空間をひとまわりします。
E2〜3分の制限時間を決めてスタート。タイムアップとなったら体験者にちりとりを手渡しゴミをちりとりに入れてもらいます。体験者は、ちりとりにゴミを入れ終えた時点でアイマスクを外します。
F体験者は席に戻り「感想シート」を書きます。
〈感想シートの例〉
▼はじめる前にどのような作戦を立てましたか?
▼頭で描いたようにゴミを1箇所に集めることができましたか?
ア.どこを掃いているか自分の位置がわからなくなった。
イ.作戦通りに動けたと思うが、禹持ったほどゴミはうまく集められなかった。
ウ.予想した通りゴミを集めることができたと思う。
▼体験を終えてみて、もう一度するとしたら、今度はどのような作戦でゴミを素早く1箇所に集めますか?
【アドバイス】
@他の体験者がしているところをあまり見ない方が新鮮です。うまくゴミを集めた人の真似が続かないように体験場所の位置や同時並行にすすめる数、体験を待つ場所などの配置を考えましょう。
A実際に私がする方法を紹介しておきましょう。
a.長机に背中をもたせかけ廊下の右端に立ちます。
b.廊下の右端から真横に向けて強めに覇気ながらゆっくり前に進みます。常に廊下の右端にまず箒をあてがい横に掃きます。一度掃けばその箒が排た幅の分だけ前に歩を進めます。ゴミは左側の壁沿いに移動するはずです。
c.箒が前方の長机にあたるところまでくれば範囲をすべて掃いたこととなります。ここで廊下の反対側に移動します。
d.最後に、ゴミが寄せられているはずの廊下の反対側の壁にそって、箒をすべらせるように使って、ゴミを1箇所に集めます。
【体験内容】
アイマスクをして、9人分の容器に3種類の飴玉を配ります。飴は包装紙の色がちがうだけです。手で触って3種類の違いはわかりません。今どの種類の飴をどの容器まで配ったのかが覚えていられるでしょうか。目による確認はできないのです。
【学びのポイント】
@飴の区別が手ではできません。よって、同じ容器に同じ飴の種類が2こ入ってしまったり、容器を不用意に倒してしまい飴の種類が混じってしまったら、どうしようもなくなります。目を使わないとこの作業はできないのでしょうか?
Aそこで、失敗しても手による確認作業だけで、最小限のやり直しでできる方法を考える必要があります。効率的で、しかもトラブルが起きたときはやり直しが目を使わなくてもできる方法ってあるだろうか、みんなで考えてみてください。
【準備するもの】
@小包装の飴3種類、それぞれ10こずつ(手触りでは飴の種類がわからないもの)
A3種類の飴を分けて入れておくためのお菓子鉢3こ(同型のもの)
B9人分のおやつ入れに使う紙コップ9こ
【すすめ方】
@飴が種類ごとに入っているお菓子鉢を3こ机におきます。「これから飴を9人分のコップに入れてもらいます。」といいながら、紙コップ9こを3×3、つまり3列3行の形に指導者が机に並べます。
Aそして、「アイマスクをして、9人分の紙コップの中に、3種類の飴をひとつずつ配ってください。」と伝えます。
B体験者は、アイマスクをつけた後なら、やりやすいように鉢の位置や紙コップの位置を変えてもかまいません。とにかく各紙コップの中に3こずつ、種類が違う飴がどのコップにも入っていればいいのです。そして、もともとの配置である3×3、3列3行の形に紙コップを整えて終了となります。
C体験者は、途中でわからなくなったら、「ギブアップ」といって交代します。必ずしも全員が体験しなくてもかまいません。まわりで見ている人も、前で体験している様子を見ながら、頭の中で疑似体験ができるからです。ただし、決して回りの人はアイマスクをして体験している人に声をかけてはいけません。
〈感想シートの例〉
▼はじめる前、どんなやり方でやろうと思っていましたか?
▼アイマスクをして実際にやっているときに、予想外のことが起きましたか?
▼体験を終えて、もう一度するとしたらどんなふうにしますか?
▼見えなくてもおやつを配ることはできそうですか?
ア.とても私にはむずかしいと思った。
イ.これなら工夫次第でできるなと思った。
ウ.意外と簡単だと思った。
【アドバイス】
@今、机の上はどんなふうに容器やコップが並んでいるかのイメージができているかを確認するために、指導者は、「コップは今どのように並んでいますか?」などと質問してみてもいいでしょう。
Aもっとも大切なことは、速くできる方法をみつけたかではなく、トラブルが起きても目を使わずに手だけの確認で最後までやりきれる方法をみつけたかです。このことを最後のまとめとしてみんなで確認してほしいと思います。
B実際に私がする方法を紹介しておきましょう。
a.机に並んでいる紙コップ9こを重ねて1つにまとめ左手で持ちます。
b.右手だけで犯し鉢3こからひとつずつ飴を取り出し重ねた紙コップの一番上のコップに入れます。3種類入れたら紙コップを倒さない位置に静かに起きます。どこか基準となる位置をさがして、まず1こ目のコップを置きます。(お菓子鉢の無効側に接して置くなどの基準を作るのです。)
c.これを繰り返し、紙コップ9こすべてに飴を入れます。入れ終わったコップを3×3、3列3行の形になるように、1こ目のコップを基準に順に置いていきます。
【体験内容】
点字器(点字盤を使用)で点字を書いてみましょう。国語や社会と同じように一斉授業の中で、点字についての授業をアイマスクをして受けてみましょう。あなたは先生の指示にどこまでついてこれますか?総合的な学習の時間などで機会を見つけてやってみてください。
【学びのポイント】
@授業は先生の例示と黒板による説明などで、普段の教科のように進みます。初めて扱う点字器です。アイマスクをして受ける授業、アイマスクを外せばわかることも、このままアイマスクをしていたのではわからないまま授業が進んでいく感じを味わってみましょう。
Aアイマスクをして受けている時の不安感を体験しながら、どのようなサポートがあれば、見えなくても安心してこのままでも点字の学習に取り組めるのかを考えてみましょう。
【準備するもの】
@点字用紙および点字器(点字盤)をクラス人数分(お近くの点字図書館や視覚障害者上方施設、盲学校などに貸し出し・販売の相談してみてください)
A点字記号一覧表のプリントをクラス人数分(上記同様に要相談)
Bアイマスクをクラス人数分
C1脚の長机に2名ずつ座って受けられる教室
【すすめ方】
@あらかじめ点字器・点字一覧表プリント・アイマスクのセットを参加者ひとりずつの座る位置に配っておきます。体験者は点字を習う特別な教室が準備されていることを知ります。
A入室時にくじ引きで座る位置をアトランダムに決めます。仲良し同士が意図的に隣同士とならないようにします。
B指導者は、これから始める点字の授業への興味付けを簡単にした後、「見えない人たちの文字だから、見なくても書けます」といって、各テープルの左側の列の人はアイマスクをつけるように指示します。「10分交代で次は右側の人がアイマスクをします。」と伝えます。
C授業の開始です。指導者は、「まず、これをこの向きに持ってください。」「ここを開いてください。」「こんなふうにならないように注意してください。」と自分が前で実演しながら点字器への点字用紙のセット方法を例示してすすめていきます。(あらかじめ指導者は、点字器への用紙のセット方法を専門機関にて教えてもらっておくこと)
Dアイマスクをしている側の体験者(各机当たり1名)からは、「‘ここ’ではわからない」「見えない」などの不満が出されても、指導者は無視してすすめます。そして、アイマスクをしていない各机の右側の体験者が、左側で困っているアイマスクをしたままの体験者にどのような超えかけをしているか、手伝いをしているかを観察します。(おそらく、アイマスクをしていない体験者たちも自分のことだけで必死で隣で困っている物がいることには気付かないはずです。)
E次に、「点字記号一覧の表を見てください。」といって、全員に点字のア行に注目させます。黒板に点字ドット(点字の記号)を書いてみて、この形と同じ点字をア行の表からさがさせます。また、わかったら正解を言わせます。アイマスク者側からの「わからない、見えない」との不満に対してはここでもまだ無視をします。「あなたたちが普段受けている授業もこんなふうにやっているのじゃないの?」「それともプリントや黒板は使わないのですか?」などと頃合いをみて言います。
F「はい、10分立ちました。」」といってアイマスクを外させます。「ついてこれなかった人はいまの間に追いついてください。」といって、今度は各机の右側の列がアイマスクをつけるように指示します。
Gいよいよ点字を書いてみます。点字を書くための鉛筆のようなものとして、「点筆」を紹介します。持ち方を例示します。「ここにこの指を当てます。」「こんなふうにしてはいけません。」…、そして「では書いてみましょう」といって、黒板に点筆の動かし方、各マス内にある6この点の呼び方(点の番号)などを板書します。「はじめてください。必ずこっちからこっち向きに書いていくのですよ。」と伝えます。(指導者は、あえて、「こっち」「ここ」などの指示語を多用する説明をしたり、黙って板書するなど、全員が見えているかのように振る舞いましょう。)
Hこのあたりで一度「はい、先生の説明がよくわからない人?」といってみます。「見えないからわかりません」などの意見が出たら、「でも見えている人はちゃんとついてきていますよ、変ですね、どうしてでしょうね。」といいます。
I体験者の様子を見ながら、アイマスクをつける時間が最低2回ずつ終えるように交代しつつ、このまま進めます。必ずしも10分交代とならなくてもかまいません。(疲れ具合などによっては、1回ずつのアイマスク時間体験でもかまいません。)
Jそして、ある程度ざわついてきた頃に、指導者は軽い怒りを装った声で、「どうしてついてこれないのですか?」「仕方ありません。アイマスクを外してもよろしい。何か先生の教え方でまずいところがあるのですか?」といって、ここで初めて体験者からの不満を引き出します。アイマスクをしていたら、授業についてこれない点を全員から出させます。それらはすべて共感的に受け止めます。
K最後に、「じゃ、あなたたちがアイマスクのまま、見えないで困っていたとき、隣の人はどうしていたのですか?」という一言を指導者から投げかけます。「アイマスクをしていなかった隣の人は、横に困っている人がいたことに気づきましたか?、なにか手伝いましたか?」などと言葉を継ぎます。
L反対に、「じゃ、困っていた人は、隣の人にヘルプを求めたのですか?」ともいってみます。
Mこうして、「クラスに見えない友だちがいたり、黒板が見えにくい人が隣に座っていたら、みなさんはどうしますか?」といったテーマと今の体験がつながっていることに向かい合わせます。
〈感想シートの例〉
▼アイマスクをして授業が始まったとき感じたことは次のどれにもっとも近いですか?
ア.ひとりぼっち感、取り残された感じ、不安だった。
イ.わからないままにでも、よく聞いてついていこうとした。
ウ.やる気がなくなってきた。どうでもよくなってきた。
▼アイマスクをしたままの授業では何が困りましたか?
▼アイマスクをしていても、先生がどんなことをしてくれたらついていけたと思いますか?
▼アイマスクをしていても、隣の人や友だちがどんなことをしてくれたらついていけたと思いますか?
【アドバイス】
@特に、【すすめ方】J〜Lのところでは、サポートに気づかずにいた自分に思いが向くようにします。手伝わなかった隣の人が悪いというイメージが残らないように言葉を選ぶ必要があります。また、アイマスク者の立場の時、、自分からヘルプがなぜ出せなかったのかについても深く考えさせましょう。
A点字の五十音を実際に学ぶ授業ではありません。このやり方はあくまで1回切りでよいでしょう。実際に点字の仕組みなどを教えるときには、これ以降は見えない人はどうやっているのか?、指でどう確認するのかなどの視点を入れながらすすめていきます。見える人の文字(墨字)とは一見違うけど、見えなくても点字があれば私たちと同じことが学べるように工夫されているんだという気づきに目が向くようにします。けっして、点字の仕組みの紹介や点字への外見的な興味漬けが障害者理解教育の目的ではありません。
|