第12回 宮城の巻 その2  お寺の基本を触って学んだら、門前町で小腹グルメトリオ「三・団・めし」に舌鼓!定義さん・西方寺

 えっ、ここも仙台市?といいたくなるほど隣はもう山形県。広瀬川の上流、大倉川をさかのぼったところに「定義如来」で有名な西方寺はある。

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この定義橋を渡れば門前町が見えてくる(歩いてきたの?いえいえ仙台駅からバスで75分)




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ここから門前町、でも小腹グルメ食べ歩きはあとのお楽しみ…




 この地は、平重盛の重臣であった肥後守・平貞能(さだよし)が、壇ノ浦の戦い後、安徳天皇と平家一門の冥福を祈って隠れ住んだ平家落人の地であった。貞能(さだよし)はこの地に落ちるにあたり名前の漢字を「定義」とした。この「定義」を音読みして「じょうぎ」と呼ばれる。仙台弁では「じょうげ」となる。このためか、この地区はのちに小字名も「じょうげ」と呼ばれるようになり字名の漢字は「上下」となった。定義(貞能)死後、1198年、従臣たちがお堂を立てて彼の御廟と平重盛よりあずかってきた中国渡来の「阿弥陀如来画像」の掛け軸を安置したところ、深く民衆の信仰を集めたという。1706年、これらをご本尊に、従臣の子孫である早坂源兵衛が浄土宗極楽山西方寺をこの地に建立、現在に至っている。

 この寺の見どころならぬ手どころを紹介しよう。なによりもお寺にある基本がかなり触ってわかるのである。まずは、阿吽の像である。山門にある仁王様の阿吽はさすがに触れないが、狛犬とその阿吽の口をしっかり触ってみよう。


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山門の阿吽の仁王様。こちら貞能堂前の狛犬なら阿吽の口の形がよくわかる。




 貞能堂とは、平貞能の御廟であり、実際にこの下に貞能が葬られている。位牌を納めた仏壇に触れてみた。

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これが貞能の位牌のある仏壇、この真下に貞能は永眠している。




 貞能堂を出るとすぐ鐘楼である。釣り鐘の面には文様や漢字が触れられる。日本史上有名な方広寺の鐘銘事件(大坂冬の陣の端緒となった事件)の「国家安康」の文字はこのように書かれていたのか、想像を巡らせてみた。もちろん鐘をついてみてもよい。

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杖で鐘の内部を探索、深さは150センチとみた。




 こちら西方寺のご本尊は宝軸といわれ「阿弥陀如来画像」の軸である。さすがにこれは触れない。が画像だけに点図や立体コピーに模写し参観者に提供することは容易であろう。視覚障害者とともに学習のためにこの地を訪れるのなら、ぜひ関係者の方には触れる図として、阿弥陀如来の図と建物配置図くらいは準備してほしいところである。元図として、西方寺にある「ご参拝のしおり」や仙台駅観光案内所の「定義如来・みちくさあんない」などのパンフレットが役に立つであろう。


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パンフレットにあるご本尊の宝軸の阿弥陀如来画像と西方寺の寺内建物配置図、これらはぜひ触れる図にしてほしいものだ。




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現在、ご本尊はこちら新本堂に移されている。 




 この他、平家をしのぶものとして、安徳天皇の遺品をおさめた天皇塚がある。おもしろいのはこの塚に植えた2本の欅がいつしか1本の巨木となったのである。よって縁結びのご利益を授かろうとする人も多いという。


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「連理の欅」、ご神木だけに、語りかけながら静かに手で触れながら一回りしてみるとよい。




 西方寺にはどういうわけか地蔵様が多い。しかもいずれも新しい戦後のものである。延命地蔵に子育地蔵・水子地蔵など…。そういえばこの日、8月23日はわが古里関
西では地蔵盆であるが、こちらにはその風習はないようだ。



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私と一緒、杖をお持ちの延命地蔵様。一緒に手をつないでもらいました。




 新しく建立されたものとして有名なのが1986年、オール青森ヒバで作られた五重塔。この五重塔は県内では初の五重塔、展示室「玉手箱」にいくと組み立て方の技法が学べるのである。10分の1模型もあるが残念ながらケースの中、お願いすれば触らせてもらえたかもしれないが、宮大工の技法を説明したビデオは聞いていても役に立つ。簡単な組み立て部品などを用いて「あなたも宮大工」みたいな五重塔組み立てワークショップなど開催してはどうだろう。夏休みなど子ども達の自由研究にももってこい、評判を呼ぶと思うのだが…。五重塔の組み立て体験をさせてくれるところは全国でも皆無である。まして視覚障害のある私たちにとって、これが実現したら宮城・定義さんは特別な旅のポイントとなり、大きな話題となること必至である。西方寺および定義観光協会の関係者のみなさんにぜひ検討願いたいところである。



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これが和釘だ




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五重塔の組み立て部品のひとつ「枡組」。でもこれだけ触っても正直わからない、最後まで組み立ててみたいものだ。




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ここ展示室「玉手箱」では浄土くんがお出迎え、握手したとたんに大音量で「こんにちは…」、ビックリさせないでよ。




 五重塔を配する庭園では鯉へのエサやりや噴水や蓮など心いやされるポイントが満載だが、お茶席で一服するのもよい。また、樹齢300年といわれる「いたや楓」にも触れてみよう。


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お茶席「やすらぎ」にて干菓子とお薄をいただく(300円)




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樹齢300年の楓の大木、枝振りを杖で探索。ここまで伸びてるの…




 さて、お寺のお勉強も一段落したところで、いよいよお待ちかねの門前町探索に…。


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途中みつけたこのポスト、せっかくの点字つきなのに、だれがこんなに重ねて張ったの?これじゃ点字が読めません。




 定義さんの名物といえば、小腹グルメトリオの「三・団・めし」だ。まずは明治23年創業という定義豆腐店の三角油揚げ。揚げたてを醤油と七味でいただこう。


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これが三角油揚げ(120円)、豆乳片手にいただこう。




 次は「はやとみ」の焼き団子である。半殺しのご飯を生麩でつつんで焼いてある。自家製の仙台味噌もおいしい。「はやとみ」の座敷には定義こけしや仙台箪笥も手にとって観察できる。


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焼き団子(360円)を食べていた席のすぐ後ろにこけしや仙台箪笥が飾ってあった。




 そして、シメは清水館の「元祖やきめし」といわれる爆弾焼きおにぎりである。ひとつお持ち帰りで測ってみたらなんと254グラム。もともとはまかない料理であったようだ。こちらも自家製の仙台味噌をたっぷりつけて香ばしくやきあげた素朴な一品、一度は食べておきたい。


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まあ、このでっかさ。二人でひとつでもよいくらい(220円)。




 つまり、ここまでの小腹グルメ、三角油揚げの「三」・焼き団子の「団」・元祖やきめしの「めし」、あわせてトリオ「三・団・めし」となるのである。この他にも、味噌おでん(こんにゃく)や揚げ饅頭なども別腹をお持ちの方にはおすすめであることを最後に付け加えておこう。

●参考サイト

定義如来西方寺
http://www.johgi.or.jp/
定義の里(定義観光協会)
http://johgi-info.jp/


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