第24回 宮城の巻 その9  そうだ!亘理に行こう… そして始まったホッキ貝解体ショー 〜おみやげがくれた見えない人にとっての旅の魅力〜

 3年前、私が仙台にやってきて出会った美味の一つにホッキ貝のお寿司がありました。「えっ?なんで、こんなにおいしいもの、いままでの半世紀も知らずに生きてきたんだろう」と思ったものです。私のおいしい貝ベスト2に食い込む美味なのでありました(2位かよ、じゃ1位は?そりゃみなさん、なんてったってホタテ貝じゃありませんか。)辞書によりますとホッキ貝は鹿島灘から北の海に生息、私はこれまで近畿の陸地に生息、互いに出会わないはずだったのであります。

 さてさて、宮城にて、ホッキ貝と言えば亘理町なのであります。そして先日、この亘理にて物産市が開かれるとの情報をゲット!私はさっそく出かけたのでありました。


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おもしろいぞJR亘理駅1番線ホーム!最近3mほど前に迫り出したのか点字ブロックが2本引かれている。「危ないので黄色い点字ブロックまでお下がりください」と言われたらあなたならどの線まで下がる?




写真2
亘理駅東口側の道には点字ブロックはない!この交差点、音響信号なし、点字ブロックなし、しかも歩道と車道との段差もなし、これじゃ全く渡れませ〜ん!




 私へのこの‘通行いじめ’にもめげず、やってきました「伊達なわたりまるごとフェア」。同行してくれたボランティアを急かしつつ、私はいきなり行列最後尾はどこ?と叫びながら、ようやく振る舞い特産イチゴをゲット!したのであります。

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こちらが会場中央ゲート。粒は小さめだが甘〜いイチゴを3つ、しっかり確保。



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振る舞い汁もゲット!春を告げる味「白魚汁」だった。



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現在も残る仮設住宅(工業団地のこの会場には多い時には、仮設住宅が34棟(1棟に8戸)も建てられていた)。



写真6
会場近くにあった県道10号の津波ポール。亘理町ではここまで浸水したのだ!




 おっと、無料の振る舞い狙いばかりで行列している場合じゃありません。ホッキ貝、ホッキ貝…。ありました!ありました!亘理のホッキ貝3兄弟!ホッキ家の長男はやっぱこちら、焼きホッキ!でしょう。初めての貝殻付きにびっくり、ホッキ貝ってこんなにきれいな二枚貝だったんですね。三兄弟の末っ子はこちら、ホッキまん!具はグッドなんですが、皮にはまだまだ改良の余地ありってところでしょうか。そして、しっかりものの長女はこちら、ホッキ飯!文句なしのおいしさです。

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焼きホッキ、2つ買って貝殻を重ねてみた。デッカイ二枚貝だった!



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亘理の新名物「ホッキまん」、直径は10cm以上、皮がモチモチ感すぎるのが残念!



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満足しての帰りの常磐線、ホッキ飯の弁当は最高!




 今回、この話はここで終わらないのであります。実は、おみやげとしてナマのホッキ貝1個をいただいて帰ったのでありました。さあてどうする?このホッキ貝…!よしよし、見えなくてもさばいてやろうじゃないか。亘理への小さな旅が私にくれた‘魅力的な初体験みやげ’です。さっそくネットにて「ホッキ貝の開き方」を検索…、音声による画面読み上げをじっくり聞くこと約10分。始まりました、始まりました、視覚障害おじさんによるホッキ貝の解体ショー!非科学研究所のトボケタ博士の登場であります。

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まずはホッキ貝の身体測定!最大横幅10cmだった。




 【1.貝を開く】 ナイフを用意、思い切って差し込んでみました。貝柱を切ると貝を開くことができる、とネットにはありましたが、さてさてどこに貝柱があるの?とりあえず手応えのあった場所をゴリゴリ、切れたようです。

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ナイフを無理矢理差し込む。



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ジャジャーン、ホッキ貝のご開帳!



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貝殻を外して手のひらに貝の身体を乗せてみた!全体にクリーム色のようだ。




 このあと、抜け殻となった貝殻を触ってみたら、貝柱の位置がわかりました。二枚貝の蝶番部分を野球のホームベースとしたら、貝柱は1塁の後ろと3塁の後ろ、ちょうどポテンヒットになりそうな位置に2箇所でした。

 【2.食べられない部分を除去】 うーん、これは難しい。ネットによると、ヒモには黒い筋がありこれを取り除くとありました。また砂を含む水管も除去とあります。ヒモがどれかの見当はつきましたがどこに黒いものがある?とにかくヒモの感触以外のものはすべて取り除くという方針で臨みました。

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見つけたぞ!このちょっと感触が違う細いものが黒いものでは?



 【3.寿司ネタとなる本体の処理】 いよいよ本体部分の処理です。2枚に下ろすように切り開き、中の腸を取り除くとあります。別のページでは「よく水で洗う」ともあります。お寿司のにぎりではこの弾力ある部分のみがネタになっていたっけ、そんなことを思い出しながら、えーい、ヌルヌルするものはすべてこの再除去、除去、除去!なのであります。

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おいしい部分を慎重に2つに切り開く。



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中にふわふわするものがいっぱい…、これが腸なのか?



 ネットでは、きもや水管も処理してくださいなんてありましたが、どこにそれらがあるのかはついに分からずじまい。食べられそうなしっかりした堅さのもののみを選抜したのでありました。

 【4.熱処理にて完了】 なんと5〜8秒熱するだけでよいとのこと、堅くなりすぎないように注意だそうです。するとピンク色に変わるようです。すぐに氷水に取って完了です。

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網のおたまにてさっとゆでる。おいしい部分がピンク色になったようだ!



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すぐに氷水に投入、うーん、まずは山葵のみでパクリッかな?




 見えなくても旅は楽しめる!それは、見知らぬ土地での人との語らい、食と触との出会い、そして初めて知ること、初めてすることです。今回亘理町への小さな旅がくれたもの、それはまさに‘初めて知ること、初めてすること’の魅力でした。次にお寿司屋に行ったときに食べるホッキ貝、きっとさらにおいしくなっているでしょう。私たち触る文化で生きている者にとって頭で食べる割合は多いのです。ホッキ貝、今回の体験にて、知識が分厚くなった分だけきっと味も分厚く感じるようになっていることでしょう。

[参考サイト]
○ホッキ貝の解体ショー by みうさんのかーさん[クックパッド]
 http://cookpad.com/recipe/85461
○伊達なわたり/亘理町観光協会
 http://www.datenawatari.jp/



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