第26回 秋田の巻 その2 見えない旅人の強い味方、観光ガイドボランティアと歩く雨の桜の小京都・角館 今回は見えない人がどうやって旅を楽しむのかってお話。4月末、武家屋敷群で有 名なしだれ桜満開の角館を訪れたムツボシくん、私のような見えない旅人を楽しませ てくれるのが現地の観光ガイドボランティアのみなさんなのであります。 雨に煙るしだれ桜の町・角館を歩くムツボシくん さすが武家屋敷の町「角館」、セブンイレブンだってこのたたずまい! JRの駅員のサポートで角館駅からタクシーに乗り込みガイドボランティアとの待ち合わせ場所「角館樺細工伝承館」へ。あらかじめ私が見えないことを伝えてありましたので、ガイドのWさんの方から見つけてください無事合流。さっそく町歩きに出かけることができました。 「江戸前期、この城下町(佐竹北家)に京都のお公家様から嫁入りしたお姫様が八坂神社のしだれ桜の枝を数本持ってきたのが始まりと言う角館のしだれ桜。その子孫が今もこんなふうに息づいているのです。」とWさん、その証拠とも言えるこの町最古のしだれ桜の前に連れて行ってくださいました。DNA鑑定もされており、確かに京都円山公園のあの有名なしだれ桜と同系だとのことでした。 これが角館最古のしだれ桜。上に松の寄生を許しているのがなんとも言えぬ貫禄 観光ガイドの団体に事前に連絡を入れるときには必ず「私は見えないこと」「でも旅を楽しみたいこと」そして「触ってもいいものがあったらぜひ触らせてほしいこと」、これらを伝えます。 「こちらが角館の下級武士の屋敷です。垣根は黒文字を用いています。内職として板屋楓細工がなされていました。」とWさんは次々と私の手を取って案内してくれます。こうした旅先での手による初体験が見えない旅人にとって何よりのご馳走となるのであります。 黒文字を用いた武家屋敷の垣根 竹篭細工のように編む実演を見せてもらった板屋楓による細工物 この木が板屋楓 ガイドさんには、お土産物屋さんを案内してほしいことも伝えておくといいでしょう。角館の文化は貧しい下級武士の文化のようでした。箸立てや茶筒など昔はどこの家でも見かけた樺細工、こちら角館の桜の木の皮によるものだったんですね。それもまた武士の内職仕事から始まったとのことでした。 お土産物屋さんに並ぶ容器や小引き出しに桜の皮を張る樺細工品 町歩きでふとガイドさんの話に気になって「それ、触らせてください」と足を止めてもらうこともあります。ムツボシくんが今回気になったのがこれらです。 全盲なら気になる単語「歩行」が町の名に。「歩行町」という看板。下級武士の町「おかちまち」と呼ぶそうです。 十字路をわざとずらした武家屋敷通りの四つ角。今では車がカーブしやすいように黒壁の角が斜めにされている。 上級武士「石黒家」の馬乗り場。馬をつなぐ穴のあいた石と乗馬するための高い石に触れてみた。 最後に、地元のガイドさんならではの情報もをおねだりしてみたところ、別れ際、駅近くのフルーツパーラー「さかい屋」に連れていってもらったのであります。道の駅風の八百屋さんみたいな店内、この一角がパフェ専門ブースになっているのです。イチゴがワンパックすべて盛りつけたようなパフェ、これで500円とは安い! イチゴパフェにピーチパフェまで注文、ともに500円! 見えない人のみなさんも、旅を何もためらうことはありません。まずは、行きたい町の観光協会などのホームページからその土地の観光ガイドの団体を見つけて電話しましょう。そして、伝えてください。「見えないこと」「旅をしたいこと」「お手伝いしてほしいこと」「何でも触れて感じたいこと」「肘を持たせていただいたら一緒に町歩きができること」…。 待ち合わせ場所を決めたら、さあ出発!地元の方に案内してもらえる旅ができるのです。方言、特産品、歴史話、そして名物のお店…、見えなくてもきっと満足できる旅がそこにはあります。 [参考]かくのだて歴史案内人組合 http://kakunodate-kanko.jp/guidedtour.html indexに戻る |