第3回 東京の巻 その1 「視覚障害生修学旅行の聖地、日本点字図書館を10倍手で探り尽くす方法」 日本点字図書館(以下、日点と略す)は、1940年全盲の本間一夫(1915〜2003)が創設した今では日本最大の視覚障害者のための図書館である。ここを訪れる修学旅行生も多いことだろう。日点を手で楽しむために、まずは、日点のホームページから次の2つのページだけは事前にしっかり耳で聞いておきたい。そして、館内および本間記念室の見学を申し込んでおこう。 (1)図書館紹介映像 http://www.nittento.or.jp/about/video/index.html (2)館内バーチャル見学 http://www.nittento.or.jp/about/virtual/index.html 創立者、本間一夫と日点の仕事の概要を頭に入れたらいざ高田馬場にゴーである。 これが日本点字図書館、エドワード鈴木が設計した鎖のデザインがとても印象的な概観 少しでも見えるのなら、ぜひ外壁に垂れ下がる鎖のデザインに注目してほしい。これは滝をイメージしているという。常に流れ続けて新しい水を送り続ける滝、そのようにとどまることなく視覚障害者に情報を流し続けている図書館という意味であろう。見えないものには建物全体のデザインを触れて確かめられるレプリカがなかったのが残念である。 玄関を入ったら、本間先生の胸像が迎えてくれる。これにまず触れてみよう。若かりし頃のネクタイ姿の本間先生である。 本間一夫の胸像、もしかして先生、こんなにタラコ唇でした?(失礼) 次は本間記念室である。点字に感謝しているものであれば、ここの見学は圧巻である。まず生前お仕事をされていた本間先生の机と椅子がそのまま保存されており、椅子には当時の座布団までがそのままである。もちろん、すべてに触れさせてもらえる。机の上には、愛用されていた点字盤やポータブルカセット、白杖、書類決裁箱などが整然と並べられている。引き出しを引いてみた。その中には、いつも来訪者をにこやかに迎えてくださった本間先生の心が詰まっていた。みなさんからいただいたプレゼント類が大切に引き出しに保管されていたのである。 これが本間記念室、生前の点訳本であろう夏目の『虞美人草』の点字本が読みかけとなっていた。 点字の貸し出しカード、本間先生自筆のインデックスカードである。 小野館長が見せてくださった貴重な当時の点訳本にも驚かされた。本間先生は、点訳本に仕上げるときには、「本書の点訳者に感謝して」という一文を手ずから書かれ、点訳者の方のプロフィールなども紹介されているものがあった。当時の点訳者の方々の貴重な記録となっているとともに、これからも残していきたい本間の心である。 昭和18年の点訳本、点訳者オシブチサチコさんへの感謝の文が本間の自筆で綴られていた。 昭和13年の神戸盲唖員出版所から出た本、地図が描かれた墨字印刷物の紙を再利用している。 戦前の解剖学参考書、点図が多数描かれている(写真は頭蓋骨のページ) また、戦前の点字本からは「点字本がいかに貴重なものであったか」ということがよくわかる。明治27年6月という奥付けがある小学日本の歴史という当時の教科書となる点字本には、「持ち主 神保均五郎」という名も奥付に記されていた。なんと背表紙は金文字。イギリス製の印刷機だったのか今よりも大きな点字であった。 金の箔押し加工がなされた点字本、当時は教科書も個人で作成を依頼していたのか?とても高価なものである。 創立当初特注した4本の本棚のうちの一つがここ記念室にある。当時の月給の2倍をかけたというものである。とても分厚く漆塗りの檜葉の木だろうか、200冊の重量に負けてゆがむこともなく今でもしっかりしている。2度に渡る租界のときにも貴重な点訳本とともに戦火を免れたものである。 創立当初からの書架、横板を止めている楔(くさび)にも触ってみてほしい。 最後に、通常の館内見学ツアーでの触りどころを紹介しておこう。録音スタジオや点字印刷の機器などを触ったら、廊下に展示されているこちらの写真の触図原版を触ってみよう。さて、どこの触地図かわかるだろうか。 有名なランドの園内触地図も日点が協力していた、点字のラベルもついているのですぐにわかる。 返却コーナーでは、事前にお願いしておき、ぜひバーコード処理する貸借作業を体験させてもらおう。視覚障害生の中には、スーパーやコンビニなどのレジでよく聴いてはいるあのピッピッピッという音のことがバーコードという名前のものだと知ってはいても、実際の作業となるとイメージできない人もかなりいるのではないだろうか。また郵便局への搬入に用いる台車にも触れてみよう。この台車が毎日2〜3台点字本とCDケースを満載して郵便局にトラックで運ばれている。そして、地下の書庫では、可動式書架を動かす体験もさせてもらおう。実に軽やかに動くものである。 郵便局との間を行き来する台車、毎日2トントラックで運ばれている。 可動式書架、キーをさしてボタンを2度押せば左右に動かすことができる。 帰る前、時間があればぜひ玄関横にある用具部をのぞいてみよう。ガラスのないショーケースが象徴的である。事前に日点の「わくわく用具ショップ」のホームページから触ってみたい用具などを決めておくとよい。現物を触りながらじっくり使い方を言葉にて説明してもらえるだろう。 ガラスのないショーウィンドウ、用具部ではタッチショッピングが存分に味わえる。 販売サイト わくわく用具ショップ http://yougu.nittento.or.jp/ indexに戻る |