第33回 京都の巻 その4  あなたの歩行能力が試せる地主神社

 突然ですが、京都には、白い杖を普段から利用して歩いておられる視覚障害の方にはぜひ訪れてほしい神社があります。それが京都市東山区清水1丁目の地主神社(読み方は、じしゅじんじゃ)です。この地名でもわかるように、地主神社は、清水寺の境内に立つ鎮守社で、縁結びの神として信仰を集めています。もちろん世界遺産です。

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地主神社の全景、本殿、拝殿、惣門はともに重要文化財。



 地主神社には、1本の桜の樹に八重と一重の花をつけるという珍しい桜があります。平安初期、嵯峨天皇がこの桜を振り返るために3回も車を引き替えさせたという「御車返桜」(おくるまがえしのさくら)として有名な桜です。

 ただ、私、「花より団子」、「景色より体験」です。ここ地主神社には、ぜひとも体験してほしいことがあるのです。視覚障害教育において大切な課題の一つに「歩行能力を高める」と言う課題があります。その力がどれだけ身についたかな?って試せる場所がこの境内にあるのです。しかも、あなたの思い人との縁も占えてしまうのです。「恋占いの石」と呼ばれるのがそれです。

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これが恋い占いの石



 本殿前にある1対の立石は「恋い占いの石」と呼ばれています。一方の石から、10mほど離れた他方の石へ、目を閉じて歩いていければ願いが叶うと言われているのです。まさに歩行能力を高める課題そのものですね。私たち全盲の者にとって真っ直ぐにどれだけの距離歩けるかは歩行能力の基礎中の基礎力なのであります。私が盲教育に携わっていた時は、全盲の子どもたちには、最低10mは真っ直ぐ歩けないといけないと口を酸っぱくして言っていたものです。アメリカの原子物理学者ボースト博士により、この一対の石は、縄文時代の石であることが証明されたという記事をどこかで読んだことがあります。京都のこんな場所に縄文時代からの石が向かい合って今も頭を出しているのですね。何ともスピリチュアルです

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足裏に集中すると方向がわかるかもですよ。



 とにかく参拝者が多いので、ぶつかってしまうことは覚悟の上、むしろ、ぶつかって方向が狂ってもその狂った分だけ自分でちゃんと方向を修正できるかって言うのも歩行能力ですので、まさにここは歩行能力を試すのにピッタリ!です。

 地主神社では他にも触りどころがありました。

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撫で大黒さん。



 この神社の祭神、大国主命の大黒さん。具合の悪い身体の部位と同じ場所を撫でるとよくなるという他にこんな御利益があります。小槌は良縁・開運・厄除け。頭は受験・成績向上。お腹は安産祈願・子授け祈願。手は勝運・芸能上達。足は旅行安全・交通安全。俵は出世・土地守護・家内安全・夫婦円満。福袋は金運・商売繁盛…。もちろん私は福袋を重点的に撫でさせていただきました。

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人型の絵馬は願いを書いて水に浮かべます。



 他にもドラを3度たたいて願いをかける幸福祈願所では、ドラは音の余韻が長いほど願い事が叶いやすいとか。女性だったらどんな願い事でも一つだけは叶えてくれるおかげ明神とか。敷地はそれほど広くはないのですが、触れる物は多い方です。ただ、建物の構造やその特徴を知ることができないのが残念でした。

 最後に、この地主神社への行き方ですが、これがちょっと面白い。地主神社に行くには清水寺に入り、本堂を通り抜けて行かないといけません。つまり、400円にて清水寺の本堂の拝観券を購入してご本尊の十一面千手観音を拝んで、有名な清水の舞台から行くのが正しいルートのようです。

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