第38回 京都の巻 その9 清水寺を手でみるとこうなる!(前編)

 今や日本に存在する世界遺産の中でもベスト3に入る人気観光スポットの清水寺。修学旅行生からも圧倒的な支持を受ける。

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錦雲渓越しに臨む清水寺本堂



 今回はこの大寺院を視覚を用いず、いかに攻略すべきかに焦点を当ててみる。出かける前には次の二つを準備することをお勧めしたい。手触りの良い紙粘土とムツボシくん監修の清水寺境内図の点図の2点だ。

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ベタベタしない百均紙粘土で同行者にザッとした形を作ってもらおう



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ムツボシくん監修・清水寺境内図の点図



 さて、清水道を突き当たると朱塗りの仁王門に続く石段だが、まだ石段は上らない。左手に進み善光寺堂にまず行こう。ご本尊は柔和なお姿で有名な如意輪観音像だが、珍しいお地蔵様がさわれるのだ。お堂に上がり右におられるのがその首振り地蔵だ。合掌したらお地蔵様の首を回してみる。軽く回るようならその願いは叶うとされている。また思い人がいる方向に首を回して願うと縁結びにご利益が…とも。


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「阿吽」ではなく「阿阿」の狛犬





 今度は、さきほどの石段前まで戻り、少し上って狛犬の口元に注目する。狛犬の口の形がここ清水では左右ともに「阿」になっていると言う。「阿吽」ではないのだ。残念ながら高いところなので手では確かめられないが弱視の方なら拡大鏡でチェック!

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首が一回りする珍しいお地蔵様。足下、右と後ろ側は狭いので落下注意!

 仁王門まで上ったら、右端の柱に注目。肩の高さ付近で、表側から門の裏側へと通された貫材でイチゴ一つ分くらいくぼみがあるものを探そう。これが清水寺の七不思議の一つ、カンカン貫(かんかんぬき)だ。門の裏にもこのくぼみができている。表のくぼみを叩くと門の裏のくぼみから「カンカン」と澄んだ音が聞こえる。なぜくぼんだのか、なぜよく聞こえるのか、いずれも謎だ。

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門全体はさわれないが仁王門はカンカン貫を見つけてみる



 仁王門をくぐったら西門(さいもん)の方に進む。西門の右前にある丸い穴が上にある石灯籠に手を伸ばしてみよう。火袋用としての丸い穴の下全面に八方睨みの虎が刻まれているのだ。見る角度を変えても虎と目が合うという不思議な構図。江戸中期の有名な絵師・岸駒(がんく)の下絵による作品だ。手の長い人なら線刻の虎を感じられるかも。石灯籠の大凡の形を知りたいのなら見える人に紙粘土を渡してその場で作ってもらおう。

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岸駒下絵の虎の石灯籠 



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紙粘土で作ってもらった!灯籠というより穴の空いた石の板。ここが虎の顔



 西門左を通りその先が三重塔。三重塔としては国内最大の31m。弱視の人なら南東側の屋根の鬼瓦に注目。ここのみ各層とも鬼瓦が龍の瓦になっていると言う。このように清水寺には不思議が多い。

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三重塔は南東側三層のみ龍の鬼瓦



 三重塔と左横並びの位置にあるのが随求堂(ずいぐどう)。ここでは珍しい胎内めぐりができる。階段を降りて暗闇の廊下を手探りで一回り、私たち全盲者には何ら問題ない動きだが、見える人にはかなり戸惑うようだ。見える同行者をくれぐれもおきざりにしないように…。この随求堂のご本尊は、人々の求めに従って願いを叶えてくれるという大随求菩薩(だいずいぐぼさつ)だ。

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胎内めぐりができる随求堂の全景



 「胎内めぐりもしたし…」と言って急いで随求堂を立ち去る前に近くにあるこちらの平家物語にまつわる石灯籠もさわっておきたい。「景清爪形観音」とよばれる石灯籠だ。右に立つ石の立て札には平仮名で2行縦書きに「かげきよつめがた/くわんぜおん」と彫られているらしい。「かけきよ」「くわんせおん」の文字が指で判読できた。観音様はどこに?と思うが、火袋の中の壁に景清が爪で刻んだ小さな観音がおられるという。

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火袋に手を入れてみた。果たして観音様にさわれるやいなや?



 平景清は、壇ノ浦の戦いで平家が滅亡したあと、落ちのびて清水寺に潜伏し源頼朝の命を狙っていたと言う。景清は源氏の打倒をこめて、その頃自らの爪で石に観音像を刻んだ。その石が火袋として用いられ、この石灯籠となったのだ。[後編に続く]

○参考サイト
清水寺(公式)
 https://www.kiyomizudera.or.jp/
清水寺の七不思議について
 https://kyoto-note.com/kiyomizudera-nanafushigi/


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