第40回 滋賀の巻 その1 7千万年前の石の上に立つお寺・石山寺を探る 石山寺は、聖武天皇の勅願により奈良時代(747年)に良弁僧正が創建した真言宗の大本山。ここは、また紫式部が「源氏物語」を書き始めたところとしても有名だ。その石山寺だが、実は寺名通り、巨大な岩盤の石の上に立つお寺だったのだ。しかもだ。7千万年も前の白亜紀の物語がこの地に眠っていた。 梅林秀行氏によると、約7千万年前(白亜紀後期)、今の琵琶湖に相当する範囲には巨大なカルデラ火山があったと言う。長径約60kmにも及ぶこのカルデラを「琵琶湖コールドロン」と呼ぶ。そして石山寺が立つ場所はおおむねこの琵琶湖コールドロンの外輪山周辺部に当たるらしい。国の天然記念物でもある石山寺の硅灰石(けいかいせき)こそが、なんと7千万年前の石なのだ。山の上に立つ多宝塔に向かって縞模様の残る硅灰石を探りながら石山寺を登ってみよう。 多宝塔が頂上に立つ巨大な硅灰石 まず、瀬田川沿いに面する東大門と言う石山寺の正門をくぐる。その上、中の仁王像は運慶とその子湛慶の作というがこれはさすがにさわれない。 重文の東大門 拝観料300円(割引有り)を納めたら、いよいよ硅灰石を登り国宝・多宝塔へとなるが、その前に立ち寄りたい硅灰石の突出部がある。参道の脇にある「くぐり岩」と呼ばれている大理石の巨石がそれだ。中央には大きな穴が開いており、この穴をくぐることで願いが叶うと言うパワースポットだ。 くぐり石はただ前日が雨だと立ち入り禁止となるので注意 介助なしでチャレンジしてみては?冒険気分が味わえる大きさだ! さて、いざ頂上へ。200段以上はある石段を登る。鎌倉時代(1194年)に源頼朝の寄進により建立された日本最古の多宝塔のある広場に出る。 これが多宝塔!作ってもらった紙粘土、二層目は円形だ。屋根がこんなに反り返っていたとは… この広場の西にある鎌倉時代の石造宝塔にはこんな話がある。この塔は「めかくし石」と呼ばれ、目隠しをして塔身を抱きとめることができれば願い事が叶うと伝わる。 目隠しはもちろん得意!これで願いが叶うならお安い御用… さて、ここからは本堂に向かって少しずつ階段を降りていく。まずは重文の経蔵(滋賀県最古の校倉造)だ。この経蔵もまた、多宝塔と同じく硅灰石の上に建てられている。おもしろいのは、この石の一部が腰かけられるように窪んでおり、安産の腰掛石と呼ばれているのだ。この石に座りながら柱を抱くと、なんと安産の御利益を授かると言う。 さすがに柱は抱かずに少子化ストップを祈願 ここからもう一段降りたところが本堂だ。本堂は平安時代(1096年)に再建された国宝。滋賀県最古の建築物だ。ご本尊は秘仏、二臂如意輪観世音菩薩。この観音様は天皇陛下の命により封じられている日本唯一の勅封観音とのこと。安産・福徳・縁結び・厄除けの霊験あらたかな観音様として信仰深い。 懸造の本堂は青紅葉だった 紫式部の間 観音様とつながる紐を持ってご挨拶 本堂からさらに一段下がった広場にはいくつか触り所がある。硅灰石の手前の向かって右側にあるのが、良弁杖桜と呼ばれる八重の山桜だ。良弁は桜の枝を杖にしていたのか?杖が芽吹いたという古桜だ。 カーボン製の白杖からは何が芽吹く? こちらは南北朝時代の宝篋印塔。おもしろいのは、この塔のまわりには、四国八十八ヵ所の砂が敷かれており、お砂踏みができるようになっているのだ。一回りするだけで八十八箇所結願だ。 逆打ちに一回り 石板には漢数字が彫られており、一番目の石には目印の丸印が… 最後の触り所は天智天皇の石切場だ。天然記念物の硅灰石が道沿いに露出しており、15か所の採石痕が残ると言う。近年、ここから切り出された石が、飛鳥の川原寺中金堂(7世紀半ば)の礎石に使用されていたことがわかったと言う。本堂よりも下に位置するこの石切場、ここ硅灰石の石山は本堂が立つ前から都に石材を供給していたのだ。 約3tの直方体の石材が切り出されたと言う 石山寺探索とともにおすすめのランチがこちら!石山寺門前にある「湖舟」の元祖志じみ釜めし(税込み1800円)だ。 瀬田シジミではないだろうが実にうまい! [参考サイト] ○50代からの旅と暮らし発見マガジン/東西高低差を歩く関西編 第27回(梅林秀行)〜石山寺〜観音聖地を「信仰の地理学」から考える〜 https://nodule.jp/info/ex20220104/ ○新近江名所圖会/第144回 やっぱりあった!! 古代の石切場跡〜石山寺〜(ヨミモノシガブンシンブン) https://www.shiga-bunkazai.jp/shigabun-shinbun/best-place-in-shiga/ %E6%96%B0%E8%BF%91%E6%B1%9F%E5%90%8D%E6%89%80%E5%9C%96% E4%BC%9A%E3%80%80%E7%AC%AC144%E5%9B%9E/ ○お食事処/湖舟 https://www.shijimimeshi-koshu.com/news/9 indexに戻る |