ムツボシくんの仙台全盲物語
   むつぼしくんが飛行機に乗っている画像
2014年12月21日

福祉icscaで楽々通過!人生もこれくらい簡単にゲートが開くといいのですが…

 ハーイ!ムツボシくんです。仙台市交通局では、この12月6日よりicsca(イクスカ)というICカード乗車券が使用できるようになりました。今は地下鉄のみですが、来年12月からは市バスでも利用可能予定です。ムツボシくんはこれまでこの手のICカードは持ちませんでした。というのは、身体障害者手帳による料金割引がICカードでは自動的にできなかったからです。現在もICOCAやSuicaで改札を通過しちゃうと障害者割引運賃は適用されません。駅員のいる窓口にてICカードを提示して割引手続きをしなくてはいけないのです。ところがこの仙台のicscaは違うのです。普通に改札を通るだけで自動的に割引運賃で精算されていくのです。そう、福祉icscaってわけです。

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うーん、これは楽ちん…。割引切符買わなくていいのがこんなに楽だとは…。




 ムツボシくんも、購入時に身体障害者手帳を提示。毎年更新の必要はあるものの「福祉icsca」はほんの数分ですぐに手に入れることができました。また、券売機もテンキー操作、音声ガイド付きで簡単にチャージ・利用履歴照会ができます(ただし、履歴明細は紙が出てくるだけですので、誰かに読み上げてもらう必要がありますが)。

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テンキー2を押せば簡単に現金チャージ。これならひとりでできます!



 そう言えば、仙台市の地下鉄は優秀なんです。早くからホームに安全柵もあります。仙台では新幹線のホームですら安全柵はないのですよ。

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仙台地下鉄南北線富沢ゆきホーム。赤い柵がホームドア。



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開くホームドア毎に付いている点字表示。何両目のどの位置のドアなのかが触覚マークでわかる。




 なんか良いとこずくめの仙台交通局のようになっちゃいましたが、手放しでほめるわけにもいかないのです。来年12月開通の地下鉄東西線により、わが宮教大行き市バス路線は全面的に撤廃されちゃいそうです。大学近くに地下鉄の駅ができるからかえって今より便利になるのでは…?なんて考えている人もいるかもしれませんが、バスなら大学正門まで運んでくれていましたが、地下鉄の駅は約10分離れたところの予定。ムツボシくんのように白杖歩行や足の不自由な人たちの大学へのアクセスはむしろ悪化すると言わざるを得ません(もちろんバス路線を残して!の要望は出しているのですが…)。

 また、仙台市交通局のホームページもまだまだ利用しにくいサイトのひとつのままです。例をあげますと、icscaの説明の次のページ…

●icscaご利用ガイド
http://www.kotsu.city.sendai.jp/icsca/ic_guide.html

 「icscaご利用ガイドについて:12月1日から販売となったicscaについての詳しい手引書です。購入方法や使い方,困ったときなど,次の目次からご覧ください」と書かれてはいるのですが、肝心の目次項目を視覚障害者用画面読み上げソフトは読み上げません。どうやら「ひとつひとつPDFファイルを開いて確認してね」ということのようです。PDFは視覚障害者の音声読み上げ環境ではあまり使ってほしくない仕様です。ぜひ普通のwebページも準備してほしいところです。

 今回の福祉icscaでは、自動改札の楽々通過で感動したムツボシくんですが、視覚障害者の人生にとって社会参加のゲートはまだまだそう簡単には反応しないようです。「安心して白杖で街歩き、できるスカ?」。「音声で読み上げないページも情報なんスカ?」。「全盲ですが、企業さん、雇ってみようかなんて気、あるっスカ?」。ああ、ムツボシくんたち視覚障害者はいったい社会のどこをどんなふうにタッチしたらゲートが開くのでしょうね。

●参考:仙台弁(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%99%E5%8F%B0%E5%BC%81
2014年12月9日

巨大ハンバーグにみる視覚障害教育

 ハーイ!ムツボシくんです。前回に続いて点字メニューネタから始めましょう。そのお店はといいますとハンバーグレストラン「びっくりドンキー」です。このチェーン店には点字メニュー(拡大文字付き)があることは知っていたので、仙台クリスロード店にも安心して入店できました。

 禁煙席に案内してもらって最初に手渡されたのがこの巨大扉開閉式墨字メニュー。背が高すぎて、弱視の方なら首を伸ばしても読みづらいでしょうね。もちろん巨大だからといって文字も大きいわけではないようです。

 「点字メニュー、あるって聞いたのですが…」とさりげなくムツボシくん。

 「はあーい…。ご準備しておりまーす!」と、待ってましたとばかりのお返事が返ってくるではありませんか。去年のガストとは手応えが違います(ガストの点字メニューの話 → ガスト前編 ガスト後編)。

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届いた巨大メニューはこちら!椅子を立ってのぞきこむムツボシくんでありました。



 こちらのお店のシンボルは、300グラムのハンバーグ、さすが店名に「びっくり」とあるだけのことはあります。このサイズで約800円。通常は150グラム、するとその2倍の食べ応え。点字メニューを開くと、まず、このハンバーグの大きさがわかる点図があるではありませんか。150、200、300グラム、3種類のハンバーグの大きさが楕円の点線できれいに描かれています。

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これがレギュラーハンバーグ300グラムと、その点図、60前のムツボシくんに食べきれるかな…?



 ムツボシくん、この300グラムにかぶりつきながら考えつきました。そうそう、これって、見えない子どもたちにナイフとフォークの使い方を練習させるのにもってこいだな…と。目を使わずにナイフとフォークです。使いこなすには、頭に順々に切り進んでいく絵柄がイメージできていかないといけません。「このあたりは先ほど切り取ったから、今はこんな形がお皿に残っているはずだ!」なんてことをその都度その都度思い描きながらハンバーグを一口大に切っていける、これは見えない子どもたちにとってとてもよい教育活動となります。しかも、おいしく進めていける学習ですものね。きっとよい成果が出ることでしょう。軽くナイフでまだ食べてないハンバーグの形を素早く探索、そして即時にその形を頭にイメージ…。次はどこを切り取ろうかな…なんて考えながら食べる、これぞ食の醍醐味です。今の時代、もしかしたら、家族の人や先生たちが食べやすく切ってから「はい、どうぞ、召し上がれ!」なんてされている子どもたちが多いのかも?でも、それでは食の面白さも半減!買い物に例えるのなら、「あなたは見えないのだから、私が洋服、選んで買ってきてあげたわよ」なんて言われて黙って着ているのと同じでしょう。買い物の醍醐味、それは自分で選ぶことなのですから。

 最後に、話を点字メニューに戻しますが、この点字メニュー、どういうわけか6ページが続けて2枚あったのです。どうしてこうなってるんだろう。さすがのムツボシくんも、300グラムをお腹に納めるまでには解けないナゾでした。

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6ページが2枚続くのはなぜ?単なる間違いなの・・・
2014年11月21日

宮教大点訳サークルがはじめての作品‘点字メニュー’を牛タン屋「善治郎」に贈呈

 ハーイ!ムツボシくんです。去る2月26日「宮教大に念願の点訳サークル「ムツボシくん」が誕生!」の記事でお知らせしていた「たんや善治郎」というお店の点字メニューがついに完成!! 11月10日、サークル員とともにお店までお届けにいってきました。

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こちらが「たんや善治郎」という牛タンのお店です。



 点訳サークル「ムツボシくん」を代表してSさんから店長さんに無事点字メニュー5部を手渡すことができました。何度も書き直したり、イラストのついた点図の表紙を工夫したりと約半年かけての初めての私たちの作品となりました。

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点字メニューの贈呈です。新店舗もまもなく開店とのこと。贈呈した5部がお役に立つといいのですが…



 サークル員の多くが他のクラブ活動やアルバイトでぎっしりつまったスケジュール。点訳サークルとしての活動は月1回しかとれないという条件の中、みんなよくここまでこぎつけてくれました。そこで、今夜はお祝い…!T店長からはウーロン茶の差し入れもいただき、みんなで「牛タンパーティ」と奮発しちゃいました。

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仕上がった善治郎点字メニューを使っての第1号オーダーはムツボシくん!見開きページでは、右ページが点字、左ページには同内容が普通字(墨字)で書かれています。




 「たんや善治郎」といえば、厚切り牛タンに加えて、ゆで牛タンや牛タンの角煮、牛タンソーセージなど、牛タンの楽しみ方がいっぱいです。みんなも次々に注文.。みるみるうちにテーブルはお皿を置く場所がなくなります。

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おーいムツボシくん!まだ何かたのもうとしてるけど…、財布は大丈夫!



 点字メニューの作り方のノウハウはまたそのうちに「ムツボシくんの思索室」にて公開するつもりですが、大切なことは、メニューの種類やそのお値段が指で検索しやすいようにレイアウトすること。そして、点字が読めないお店の方のために、お客さんが読んでいる点字が何なのかがわかるように、必ず普通字(墨字)による対訳を点字の横などにつけておくことでしょう。

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 「牛タン、はじめて!」って仲間もいました。点字メニュー第2作ができたら、またそのお店でパーティだね…



 実は、すでに仙台点字メニュー化計画は密かに進んでいるのでありまして、第2作に着手中なのであります。1日でも早くこの場で「できました!次の点字メニューが…」なんていえる日がくることを顧問のムツボシくんは願っているのであります。

●仙台名物牛タン焼きの店|たんや善治郎
http://www.tanya-zenjirou.jp/

2014年10月24日

科学の微笑みを見た!「科学へジャンプ・イン盛岡2014」

 ハーイ!ムツボシくんです。今回は10月18日、岩手県立盛岡視覚支援学校にて開かれた東北版「科学へジャンプ」のお話です。とってもおもしろかったですよ。

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こちらが会場となった盛岡視覚支援学校、創立100年を超える伝統がある



 会場の盛岡視覚支援学校といえば、創立者の岩手の盲巨人‘柴内魁三(しばないかいぞう)’先生のことを話したくなりますが、ここはガマン、話は科学でジャンプなのであります。

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こちらが柴内魁三先生の胸像、ムツボシくんとツーショット、ツルツル頭はやはり事実だった!



 そもそも「科学へジャンプ」という事業は、ホームページによると、「2007年春に一部の有志の発案で「科学へジャンプ・サマーキャンプ2008」が企画され、それを発展させる形で2009年度から2011年度まで科学技術振興機構(JST)の「科学へジャンプ・視覚障害者全国ネットワーク構築」事業により、全国版のサマーキャンプと全国8カ所での地域版キャンプが実施される体制」が整い、こうして、「科学へジャンプ」のキーワードの元に、視覚障害者を教育・支援する人たちが、また生徒・保護者同士が、互いに連絡し合える全国規模のネットワークができたといいます。今回のものは、今年度の東北地方版「科学へジャンプ」なのであります。よって、参加者も東北各県から盛岡に集まってきています。青森県から福島県まで、盲学校の子どもたちから地域校に学ぶ子どもたちまで、そして、小学生から高校生までです。総勢20名近くでしょうか。子どもたちは、午前と午後の2コマ(1コマ90分)のワークショップを低学年・高学年・中学生・高校生の4班に分かれて楽しんだのであります。みんな多くの友だちが新たにできました。保護者のみなさんも子育てや将来の子どもの進路などについてフランクに語り合い互いの交流に花が咲いたようです。

 では、ワークショップをひとつのぞいてみましょう。こちらは小学高学年班用のワークショップ「重い石・軽い石・人に役立つ石・くさい石」というワークショップです。

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同じ砂なのになんで重さがこんなにちがうの?磁石で砂鉄をチェックしてみた!



 北海道苫小牧の砂と仙台市の砂の重さ比べ、同じ入れ物なのに、苫小牧の砂は持ってすぐにわかる、重いようです。なんで?ここからその理由の探検です。ついに発見、磁石を当ててみてわかりました。砂鉄がこんなにも入った砂だったのです。指導にあたられているのは仙台三桜高校の地学の先生Oさん(元宮城県立視覚支援学校教諭)。岩石を「五目飯のおにぎりみたいなもの」と説明…、なるほどです。例えば、このおにぎりの中のシイタケが鉄の粒だとしたら、石に磁石を滑らせるだけで、どこが鉄の粒なのかがわかるとのこと、これまたなるほどです。

 次は地層の液状化現象の実験です。ボウルに砂と水を入れます。そしてマンホールに見立てたピンポン球を砂に埋めるのです。砂の上にはマンション代わりの石を建てておきます。さあ、地震がやってきたらどうなるの?あれっ、あんま機登場!あんま機がどうやらナマズの役のようです。
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おや早くもマンションが倒れています。



 地震が20秒続くとあれれ、マンホールが浮き上がってきました。手を入れてみると砂と水がまるで海のように波立っています。

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これが液状化現象、20秒後ピン球が顔をだしてきた



 このワークショップはまだまだ続きます。次は砂の底に堅い地盤を模したスポンジを埋め込み、再度実験、ただし今回はマンションには長い竹串の足を取り付け、建てるときに砂の奥のスポンジまで届くように差し入れておきます。あんま機スタート!すべてが手で確認できる実験、みんなの中に科学の微笑み‘わかった!’が広がります。

 高校生班の「食べ物は生き物・イカの背中」というワークショップでは、イカの解剖がやられていました。

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イカの目と目の間に指を入れると「フン」というイカの水出し口があるそうです。これがイカのジェット推進力の源…



 「世界の水を考える」というワークショップでは、地球の水を100個のプリンカップに例えてみました。私たち人間が使える生活水の量は果たして何個分なのでしょう。子どもたちは実際に水を100個分入れてみました。正解はなんと0.8個分にすぎないようです。

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入れてみて、並べてみて実感できる地球の水の大切さ



 この他にも、興味深いワークショップが並びました。「発電をしよう」、「いろいろな感触カードをさわって表現しよう」、「縄文時代に触れてみよう:土器や石器を通じて思いをはせる」、「めざせ!CO2マスター!」などなどです。

 自分の手で確かめ、くみ上げていく知識や事実とその因果関係がすぐイメージとして、子どもたちの頭の中に確実にたたみ込まれていく瞬間を見たような実感、魚をさわることから逃げてきたムツボシくんも、来年はイカ、さわってもいいかななんてそそのかされちゃうほど科学の魅力に誘惑されてしまった1日でありました。

○参考サイト:科学へジャンプ
http://www.jump2science.org/
2014年10月4日

震災の地、大船渡でしゃべって・食べて・BRTで考えたこと?

 ハーイ!ムツボシくんです。9月25日、大雨の中、ムツボシくんは大船渡高校をめざしてワンマンディーゼルカーに朝から揺られておりました。まず、仙台から一関、そして大船渡線で気仙沼、さあてここからが初めてのBRTで大船渡市の盛(さかり)駅、あとはタクシーで目的地・大船渡高校という段取りだったのであります。ところがところが、朝からの大雨でBRTが運転見合わせ、道路が途中冠水だとか…。ムツボシくん、気仙沼で立ち往生!そこで尋ねまくったところ、岩手県交通なるバス路線は冠水にもめげず迂回を何度か繰り返し盛駅まで走っていることをキャッチ。なんとか目的地に到着したというわけでした。それにしてもBRTは軟弱ですね。他のバス路線が冠水にも負けずがんばっているのに早々と運休にしちゃうとは…。

 大船渡高校では、1日総合大学という企画に参加。私は「手で考える教育学」というテーマで授業をしてきたのであります。いつものように、「さあて、みなさん、見えない人は縄跳びできるでしょうか?」と問いかけ。見えない人は一から十まで手伝ってあげないといけないと思い込みがちな生徒さんたちを前にしていたのであります。

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56歳、飛んでいます。二重跳びを実演しているムツボシくん!



 授業の中身については今回は省略。ほぼ5月の宮城野高校訪問の記事にて紹介している通りです。授業に入る前の「つかみ」について今回は書いておきましょう。

 「さすがに大船渡、遠いですね。大雨でたいへんでした。あのBLTが止まっていたんですよ!」と、わざとBRTというところをBLTと、ボケてみたのでありました。私の地元・関西なら、このボケに対して、「BLTは、サンドイッチやんかいな…!」とすぐにつっこみが入るところです。でも、こちらは少しざわめくもシーン!「おいおい、ここはなあ、‘BLTはサンドイッチやんか’とつっこまんかい?」と私。

 でも、大船渡の高校生はまだなにをこの人いってるんや…、みたいな反応。そこで、「BLTって知ってる?、スタバやサブウェイにあるやろ、サンドイッチやんか」と(まだ生徒たちはあまりのってきていません)。

 「あのな、BLTサンドとはな、Bはバナナやろ、それにラッキョとタバスコやで」と念押しのボケ!ようやく大爆笑!みんな、そんなわけないやろ、という気分になれたようでした。ついでにBRTは何の略かも教えてきましたよ。「バスで楽についちゃうよ」の略ですね、これまた大爆笑!ムツボシくん、気分良く高校を後にしたのであります。

 さあて、時間があったので、盛駅周辺をぶらぶらした話です。ラジコプレミアムで確かKBS京都だったかな、実は盛にあるハンバーガー屋が紹介されていたことを思い出しました。覚えていたのはでっかいホタテがゴロゴロ入ったホタテバーガーがあること。さっそく訪ねてみました。

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この高さ、口裂け人間じゃないとこりゃ、かぶりつけないわ。内部のホタテにも期待が高まります!

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分解してみてわかりました。中身はホタテ入りのクリームコロッケがバンズで挟んでいるだけ。ホタテだって普通サイズが1つのみ。うーん、残念!



 昼食は盛駅すぐ横のショッピングセンター2階のこちら、「夢茶房」です。

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こちらが軽食喫茶「夢茶房」入り口




 大きな円テーブルに案内されました。なんとテーブルの各位置に座席番号がテープで貼り付けてあるではありませんか。お姉さんが近づいてきたので、「日替わりみたいなランチ、あります?」と尋ねると、「はい」。「じゃあ、今日は何ですか?」。厨房に聞きにいった様子、戻ってきてお姉さんが言った一言がおもしろかったのです。「今日のランチ、何?」に対して、お姉さん、「肉です!」って。あのね、「肉です」って?、せめて「お肉です」といってくれないかな、とは私が心でつぶやいただけ…。「じゃあ、その肉をひとつください」と注文しちゃいました。ムツボシくん、このあたりで気づいたのであります。どうやら、こちらのお店、少し障害のある方を雇っておられるみたいだということに。待つこと10分、ランチを運んできてくれたのはお兄さんでした。運ばれてきたのも一発にわかります。だって、「ラン・ラン・ランチ…!」なんて鼻歌まじりで運んできてくれたのですから。私も、あわせて「ラン・ラン・ランチ、いっただきまーす!」と聞こえるように言ったのは言うまでもありません。このお兄さん、ランチの後のコーヒーを運んできたときも黙ってはいません。「コーヒ・コーヒ・コーヒー」とまたしても歌っていました。そして、私の前に置くときだけは、「はい、ヒーコ」ですって。思わず今度は私が大爆笑する番でした。

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この日のランチは「肉です」って。豚しょうが焼き定食、コーヒー付いて600円




 盛駅に戻りましょう。BRTの専用バス路線がレールのないホームに来るのです。向こう側は釜石方面行きの三陸鉄道南リアス線。駅桟橋下にバスと電車が並ぶ光景なんて、そうは見られないものです。

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左2番線はレールを外しコンクリートで底上げしてのBRTホーム、右3番線が三陸鉄道、電車のホームです。




 帰りは、BRTも心入れ替えたのか、冠水は続いているにもかかわらず岩手県交通バスに負けじと迂回運転に踏み切ったようで、しっかり気仙沼まで走ってくれました。

 途中、あの有名になった「奇跡の一本松」という名の駅もできていました。一つの観光地?なんでしょうか。

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BRTの車内から奇跡の一本松らしい光景を撮影



 この陸前高田付近の光景で頭に焼き付いてしまったものがありました。それは草ぼうぼうの瓦礫混じりの更地の中、点字ブロックだけが元気?に歩道に延びている風景でした。

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津波がなめつくした地面に残る点字ブロック、あなたは何を思う…
2014年9月29日

ムツボシくん、NHKに登場!就労に悩む視覚障害の若者支援で仙台市の取り組みを紹介

 ハーイ!ムツボシくんです。ムツボシくんが今回出演した番組はこちらです。

●番組名「視覚障害ナビ・ラジオ」 NHK福祉ポータル ハートネット
http://www.nhk.or.jp/heart-net/shikaku/

 NHK第2の視覚障害・視覚障害者をテーマとする番組の歴史は長く、「盲人の時間」に始まり今年でちょうど50年とか…。すごいですね。私たち視覚障害者とラジオの親密ぶりがよーくわかります。この番組はこれまで「聞いて聞かせて視覚障害ナビ・ラジオ」として放送されていましたが、10月より新たに名前を変えてさらにブラッシュアップ!その名もなんと「視覚障害ナビ・ラジオ」です(えっ?それって「聞いて聞かせて」がとれただけじゃん!なんてつっこまないでね)。その記念すべき第1回にムツボシくん、どういうわけかお招きいただいたのでありました。

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9月24日、渋谷の608スタジオにて収録するムツボシくんと宮城盲の千葉先生。ムツボシくんの前があの有名な青木裕子アナ。



 テーマは「卒業後の若者の就労を支える」です。盲学校などを卒業してもなかなか社会に受け止めてもらえなかった視覚障害の若者たち、そして彼らを応援してくださっている方々へのメッセージとなればいいのですが…。全国各地方の事情があるでしょうから、今回紹介した仙台市の事例がどれくらいお役に立つ話となっているのかはあやしいのですが、ムツボシくんも、宮城盲の千葉先生も青木アナにうまくのせられ二人で1時間もしゃべってしまいました。石井ディレクタさん、あとはよろしく、30分番組への編集たいへんでしょうね、とまあ、私たち二人仙台組はい言いたいことだけ言って雨の渋谷を後にしたのでありました。

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打ち合わせを入れると2時間、収録を終わってNHKからさようなら。石井さん、ごめんなさい!



 でもでも、さすが天下のNHK。この食堂の広さはどうでしょう。千葉先生いわく、「机と椅子をとっぱらったら100メートル走できますよ」ですって。いただいたのはカキフライ定食。カキフライ5個にキャベツ、サラダ、小鉢、具だくさんスープ、さらに杏仁豆腐のデザートまでついてなんと600円ちょっと。わが宮教大の生協食堂ならこれだけプレートに乗せちゃうといくらになることやら…です。

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NHKのむっちゃでっかい食堂、館内にはこのような大規模食堂が3つあるとか…


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カキフライを食べながらのムツボシくん、だいたい宮教大の生協にカキフライのメニューすらなかったっけ、トホホホホっ!



 そして、そして、さすが天下の公共放送NHK。やっぱこちらの自販機にも点字はなくて、ムツボシくん一人では飲みたいジュースが選べなかったのでありました。

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NHK食堂前の自販機、点字で自由に飲み物が選べるようになるのはいつかな…?

●NHKラジオ第2「視覚障害ナビ・ラジオ」
        …卒業後の若者の就労を支える

 〈放送日〉10月5日午後7:30〜8:00
 〈再放送〉10月12日午前7:30〜8:00
2014年9月23日

拙者は陸奥の国、ムツボシ丸なるぞ。スキがあったらかかってらっしゃい!

 ハーイ!ムツボシくんです。まずは、こちらの若武者?ムツボシ丸をご覧あれ…!

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白杖一刀流開祖。ムツボシ丸見参!



 ムツボシくん、政宗に大変身です。仙台市博物館企画・「政宗のよろいと陣羽織を着てみよう」に先日参加してきたのであります。

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青葉城三の丸跡に建つ仙台市博物館




 まずは臑当(すねあて)、しっかりした鉄板が足を覆うと思いきや、騎乗の人となったときに馬と接する部分はちゃんと鉄ではなく革張りとなってました。続くのは太ももから腰にかけてを覆う佩楯(はいだて)、そして籠手(こて)。細かな鉄板を縦横に組みながら縫い付けるとともに、体の柔軟な動きに連動させたい手首や上腕などには鎖が配されてます。

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臑当から佩楯と、まずは下から政宗に変身開始




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籠手は左右が首のところでつながっている。手先には親指と中指を通す指輪もあった。




 いよいよメインの政宗の黒漆五枚胴…。この胴だけで重量は15キロだとか。前・左脇腹・背中、そして右脇腹が2枚、あわせて五枚の鉄板でできていました。こんなん、一人じゃとても着れないよって代物です。体にかかる重さを分散するための止め紐の工夫もなかなかのもの。

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政宗の五枚胴は左手を通して右脇腹でしっかり紐締め、この五枚胴は仙台胴とよばれる。




 最後は、兜です。政宗の兜といえば、弦月の前立…。桃山時代のこの兜、前立の意匠でも自己主張していたのですね。1m近くの金箔の細長い三日月形はさぞ戦場に映えたことでしょうね。

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戦場でこんなに目立っていいの?この弦月、味方軍にとってのよいシンボルだったのかも…。




写真8
兜のてっぺん、こんなとこに丸く孔が空いていた。



 仕上げにもうひとつ、それがこの頬当…。頬から顎にかけての保護鉄板にちゃんと鼻カバーまでついて、おまけにこの偽造ヒゲ、実にコミカルでもあります。なんと顎の下には流れる汗を外に逃がす孔までが鉄板についていました。

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顎の下側には汗の排水孔が。政宗の顔はムツボシくんより小顔だったのだ。きつくて着用不可、トホホホ…



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どうでしょ、この凛々しいムツボシ丸くん…、総重量21キロ、走ってみるとやっぱガチャガチャいいますね。




 ムツボシくんの変身に3名の学芸室員、ありがとうございました。大満足の20分…。こんな企画なら見えないというハンディはほぼゼロです。細部まで手と指でじっくり触らせてくださった関係者の方に感謝です。これまでの言葉だけで築き上げてきた具足のイメージがすべてリセットしなおせた、実にお風呂上がりのようなさわやかな瞬間でした。ぜひ、見えなくても楽しめる、これまでの古いイメージの洗濯ができるような企画、博物館には大いに期待したいものであります。とまあ、2代伊達忠宗から5代伊達吉村のよろいシールをもらってますますご機嫌のムツボシくんでありました。

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よ、ロヤルミルクティを飲みながらご満悦のムツボシくん…


写真12
前立の意匠に注目!2代から5代までのよろいシール。こうなりゃ13代まで集めちゃおうかな…

○参考:仙台市博物館
http://www.city.sendai.jp/kyouiku/museum/
2014年9月15日

ムツボシくんの点字勉強会の古里、ぼちぼち会が結成25周年・イン・彦根

 9月10日、古里・彦根に立ち寄りました。それにあわせて、点訳サークル「ぼちぼち会」のみなさんが集まってくださり、一気に想い出花壇に懐かしい花が咲き出しました。

 滋賀の点訳サークル「ぼちぼち会」は1990年結成。今年でちょうど25周年の歴史あるサークルです。結成のきっかけは、1990年から始まった「コミュニティ・カレッジ 点字の世界」という県委嘱の生涯学習講座。この講座を滋賀盲にいた私が同僚と企画したこと。この年、第1回の講座の修了者が自主的に集まられた12月、ぼちぼち会は産声をあげたのでした。県委嘱だった講座は形を変えながらも今も滋賀盲主催の点訳ボランティア養成講座として続いています。ありがたいことです。

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9月10日、仙台からの里帰りのムツボシくんをみなさんが囲んでくれました。

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集まれば「あなたは何年の講座卒業制? 同期はだあれ? 何年やっても万年初心者ですよ…」なんて会話が飛び交います。



 25年間のぼちぼち会の成果は、現在「ムツボシくんの点字の部屋」の中の「ムツボシくんの点字データ集」に集められています。私たちがやってきた点訳活動の特色は点図入りの学習参考書を世に出すこと、そして、原本にどこまでも忠実なだけの原本の奴隷のような点訳はしないこと、点字使用の方が読みやすい編集を加えた新たな点字版として点訳をすすめること、この3点でした。よって、早くからエーデルソフトのお世話になり点図も描ける点訳ボランティアになってくださいとみなさんにはお願いをしてきたのでした。

 昔の資料をさがしてみました。ぼちぼち会結成3年目の1992年度、この年に開催していたコミュニティ・カレッジ点字の世界の講座報告書が出てきました。私の言葉です。「本講座開講3年目を終え、今年も新たに30名の方が点字とはじめて出会い、点字で文章を綴る楽しさを味わわれました。また応用クラスでは、単なる文章の点訳を越えて、点訳によるパソコンネットや触覚をフルに活かした盲人用地図の作成など、点字や触覚による世界がもつ今後の可能性にもふれていただくことができ、意義深い講座となりました。さらに、視覚に障害のある人々がもつ日常の生活感覚や触覚・聴覚を中心としたくらしや生活術等にも、実際に視覚障害をもつ講師との交流を通して目を開いていただくことができ、単なる点字学習にとどまることのなかった点を評価したいと考えています」。

 この時の受講生の方の感想も見つかりました。

★回を重ねるにつけて、点字の仕組の素晴らしさに感心しています。先生も熱心に分りやすく教えて下さいますのでこれからもがんばりたいと思います。盲人の方との接し方が分りませんでしたが、気持ちよく接することができるようになれたら素晴らしいと思っています(初級コース)。

★ずいぶんおもしろくなってきました。もっともっとたくさん文字を書いてみたいです。点字の歴史についてのお話では、点字誕生までに本当に長い時間がかかったけれども視覚障害者の方々にも文字が読めるようになって本当によかったと思います(中級コース)。

★今日初めてパソコン点字を習って、機械に弱い私でもプリンターから出てくる点字を見てうれしくなりました。視覚障害者のためにもっと便利な機械が開発されるよう期待します(応用コース)。

 9月〜12月の土曜日午後12回(各3時間)の講座。修了製作は、滋賀盲近くのお店の点字メニュー製作(初級)。パソコン点訳で仕上げるエイズに関する本の製作(中級)。エーデルソフトで仕上げる日本地図の製作(応用)と1992年の報告書にはありました。

 こうして25年間毎年開いてきた「点字の世界」の講座とそこで学ばれた受講生を迎えて発展し続けてきた滋賀県の点訳サークルぼちぼち会。早くから点図にこだわり、だれもが会長ができる運営にこだわり、25年たった現在も月2回、ボランティアのみなさんにとってもいまや「母校」となった滋賀盲の会議室に集まって作業をしてくださっています。今期の中川会長いわく、この秋からは小学1〜6年生のための道徳の副読本(光村図書)の点訳にかかる予定」とのこと。あっという間の3時間半、温かな陽だまりにスポッと迎えられたひととき、ずっと一緒に歩んできたみなさんとのお食事は体にも心にも栄養満点、ビタミンBOCHIBOCHIがたっぷりの心癒やされる一夜となりました。みなさん、ごちそうさまでした。

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彦根のシンボル彦根城のパノラマ、この麓にぼちぼち会の拠点滋賀県立盲学校がある。

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国宝彦根城天守閣、紅葉を愛でに彦根にどうぞ!




●ぼちぼち会の点訳本のご紹介

点字で学ぶ小学生のみなさんのための点訳データ集
http://nagao.miyakyo-u.ac.jp/tenjiheya/TEN_Sho_2.html

点字で学ぶ中学生のみなさんのための点訳データ集
http://nagao.miyakyo-u.ac.jp/tenjiheya/TEN_chu_2.html

点字で学ぶ高校生のみなさんのための点訳データ集
http://nagao.miyakyo-u.ac.jp/tenjiheya/TEN_koko_2.html

ちょっとおもしろ点訳データ集
http://nagao.miyakyo-u.ac.jp/tenjiheya/TEN_omosiro_2.html
2014年8月21日

つまんなかった東京国立博物館

 ハーイ!ムツボシくんです。今回は実につまんなかった話です。だから愚痴めいた文章になっちゃうかも…です。

 先日、東京にいたときのこと。少し時間があったので、何か新しい発見があるかな?と東京国立博物館(トーハク)に行ってみました。そして、ガッカリ・ガックリだったというお話です。

 この博物館はおそらく日本でははじめての近代的な博物館。そう、由緒あるところなのです。そして、多くの建物で構成されています。東洋館・平成館・法隆寺宝物館等々…。とにかくデッカイのです。ああ、それなのにムツボシくんが手で触れるものが皆無なのでした。見事になにもかもが触れないのです。

 たまたまやっていた東洋館の「縄文を訪ねる」みたいなシアター映像館。ここではじめてレプリカ土偶3つとご対面! この日、ムツボシくんがこの博物館で触れたものはこれが最初で最後となりました。

写真1
「遮光器土偶」。目のところに眼鏡のようなものをかぶせているみたいに見えますよね。



写真2
「山猫土偶」。目や耳、手の指もどこか確かに山猫みたい…



写真3
「ミミズク土偶」。これもいわれてみたら、ミミズクみたい。



 わずか30分ほどの映像とレプリカ触りを終えて、いざ、インフォメーションへ…。「あのう、他に何か触れていいもの、ありませんか」と訪ねてみて、「ありませんね」という慚無い返事とともにいただいたのがこれまたつまんない点字パンフレットです。

写真4
これがトーハクの点字パンフレット。概要のみの文字のみ。せめてそれぞれの館の配置図や代表作の図の一つや二つは点図にしてほしい。



 しかたないので、土偶のコーナーでもらった土偶ステッカー1枚をおみやげに、早々と上野を退散したムツボシくんでありました。

写真5
おうちの電子レンジに張った土偶ステッカー。これでパンを入れたら、‘ホットドグー’ができちゃったりして…!



 それにしても、国立第1号の博物館がこの有様。「ガラスケース越しに見えないお方は博物館とは無関係ざますわね」なんていわれた気分でした。所蔵品の本物には触れられないのは仕方ありませんよね。でも、見える人向けには所蔵品の写真集を作るんでしょ。じゃあ、見えない人向けに所蔵品のレプリカ、もっと作ってくれたっていいのに…、なんて思うのは贅沢な考えでしょうか。きっと、こんなこと言うのは、見えない人の僻みなんでしょう…。見える人だって、レプリカを手で触ってみると、ガラスケース越しや写真とはまた違った新たな発見がきっとあると思うのはムツボシくんだけではないと思うのですが…。

●東京国立博物館
http://www.tnm.jp/
2014年8月11日

星の祭のことならムツボシくんにおまかせ!レポート・オブ・「仙台七夕祭り」

 ハーイ!ムツボシくんです。「何を今さら…」というお声も聞こえてきそうですが、やはり仙台に住むムツボシくんとしては一度はレポートしなくっちゃね。ということで、今回は、時々雨模様の8月7日、ムツボシくんが見聞きした仙台七夕をリポートします。でも、正直、このお祭、視覚を持ちいずに手や耳だけで心から楽しめるの?と尋ねられるとまだ大きくうなずけないムツボシくんではあります。

写真1

写真2
これが七夕祭の仙台だ(七夕飾りの下を走り抜ける市バス、そして、アーケード街はこの賑わい)



 江戸の初期からとも言われるこの仙台七夕には実は飾り物にルールがあるのです。必ず次の7つの飾りをつけないといけません。今回、金賞を見事ゲットされたキクチ文具店のホームページから飾り物のこのルールについてまとめておきましょう。

●仙台七夕参考サイト:株式会社キクチ
http://www.kk-kikuchi.com/tanabata.html

写真3
飾り物に欠かせない7つの小道具を説明する看板



1.短冊…歌や書の上達を願うもの。昔は、梶(かじの木)の葉に歌をしたためた。現在は願いごとを書く。

2.吹き流し…飾り物の主役。昔の織り糸を垂らした形をあらわす。機織や技芸の上達を願ったもの。赤・白・青・黄・黒の五色が基本。

3.折鶴…延命長寿を願うもの。かつては一家の最年長者の年の数だけ折ってつるした。

4.投網…魚介の豊漁・食べ物に不自由しないよう豊作を祈るもの。今年の幸運を寄せ集めるという意味も含む。

5.層籠(くずかご)…飾り物作りでできた和紙飾りの裁ち屑を中に入れて下げることで、清潔と節約の大切さを養う。

6.巾着…富貴を願い、節約、貯蓄の心を養う。

7.紙衣(かみごろも)…紙で作った着物、裁縫や技芸の上達を願う。七夕竹の一番先端につるす。子どもが丈夫に育つよう病や災いを身代わりに流す形代(かたしろ)の意味もある。

写真4
7つの飾り物:こんなふうに飾ります。荒町商店街:私たち視覚障害者の仲間が仕上げたアイサポート仙台の作品」



写真5
これが一番町4丁目地区で金賞受賞のキクチ文具点の作品



 こんな光景にも出会いました。アーケードのない商店街では、竹を路面に突き刺して固定するために、道には飾り物のための穴が準備されているのです。最初から七夕仕様の商店街なのですね。滑車を利用して飾りの上げ下げも自由自在です。

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一番町商店街。七夕仕様に作られた穴付きの路面



写真7
いままさに雨にそなえて滑車で飾りを下げようとしている三越の七夕飾り



 雨への備えといえば、この日は降ったりやんだりの変な空模様。吹き流しなどはビニールの袋にたたみ込んだり、巻いて雨に濡れないように守られます。こうやっていたらもしもの夜間のいたずらからも防れそうですね。

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おや変な雲行き。こうやって素早く雨から飾りは大切に守られるのです。



 七夕祭りは仙台市民の参加型大イベントともいえます。各商店街のお祭が中心でしょうが、飾りを市民の輪で作り上げて展示することもできるのです。次の写真は、豊年の方々が子ども達に七夕飾りの作り方を教えてできあがった小学生の作品となっています。

写真9
さくら野百貨店前でみつけた子ども達の作品



 江戸以来の伝統のある仙台七夕。お商売をされる方の思いや市民の願いがこんなにもつまったものだとは、ムツボシくん、仙台2年目にしてはじめて知りました。一見、みんなで飾り物つくって飾るだけなら、ちょっと規模の大きな市民文化祭じゃないの?なんて昨年は感じておりました。でも、この仙台七夕を見えなくても楽しむにはどうすべきか…?答えはやっぱ参加するしかないようです。飾り物をつくってみてこそ楽しめる祭となりそうです。また、偶然、飾り物を滑車で上げたり下げたりする場面にもし出会われたら、一度「ちょっと体験させてください」などと頼んでみるのもいいかもですね。商店街を歩くだけで顔や手に自然と吹き流しがからみついてきます。屋台もいっぱい、人情もいっぱい、そして汗もいっぱい。だからウチワもいっぱいもらえますよ。ぜひ来年はみなさんも仙台七夕にいらしてください。
2014年7月12日

猫派のムツボシくんも思わずグラッ!盲導犬と生きるというのもいいかも…

ハーイ!ムツボシくんです。宮教大視覚コース1年が今回は日本盲導犬協会仙台訓練センター(仙台市青葉区)を見学しました。外は雨。でも犬舎の中はガラガラ、こんな雨の中でも訓練のために未来の盲導犬くんたちはお出かけでした。

 さて、私たちを出迎えてくれたのがPR犬の‘ココちゃん’(8歳)と訓練士のSさん。3階の研修会室まで案内してくれます。「ちゃんと後ろからみんなついてきてる?」といわんばかりに、ココちゃん、ときどき振り返っていたようです。

写真1 おや、ハーネス登場、さあ、これをつけたら大好きなお仕事、お仕事…



 「盲導犬と歩けばどこでも好きなところに行けそう、なんて勘違いしておられる方はおられませんか?」とは訓練士のSさん…。こんな問いかけから始まりました。これは大きな誤解のようです。大雑把にいうと、盲導犬が視覚障害者の目の代わりにしてくれるお仕事とは次の3つだそうです。

 1つは「障害物をよけてくれる」ということです。歩きたい途中にある障害物をちゃんとよけて、よけた後は元の道に戻るということです。もちろん、前だけじゃなくて、頭の高さの障害物にも盲導犬は目を配ってくれるのです。

写真2 立ち並ぶコーンの通り抜け、ちゃんとユーザー分の幅も考えて通り抜けられるところ、もう見つけちゃったもんね!



 2つ目は「曲がり角をお知らせすること」です。白杖1本単独歩行をしているムツボシくんのような視覚障害者にとっては、この「曲がり角を性格に見つけながら歩くこと」は迷わないためのとても重要な技となります。だからそれだけ曲がり角の発見やその方向の確認などにはとても気をつかって集中して歩いているのです。これを盲導犬のパートナーがある程度代行してくれるとは、かなり魅力的…。猫大好きのムツボシくんも思わずグラッときそうな盲導犬の能力です。

写真3 曲がり角を発見。ちょっとゆっくり歩いてお知らせ開始!はい、ストップ。こちらに曲がれますよって少し体傾けてハーネスに伝えてあげようっと…。



 そして、3つ目のお仕事。それは「階段・段差を発見すること」です。目が見えないと路面や床面の段差はとても怖いものです。盲導犬は昇り階段では前足を1段目にかけてストップ。ハーネスの持ち手に階段のことを伝えます。降りる段差では、その直前でストップして知らせます。

写真4 1段だけ昇りかけてストップ!どうします?昇り階段ありますけど…




 さて、犬くんたちの訓練でもっとも大切なことは何でしょう。それをSさんが教えてくれました。「グッド」という言葉をかけてもらったら「うれしいなあ」「ああ、気持ちいいなあ」「ぼく、今いいことしたんだ」といった気分を犬くんたちが感じるようにすることだそうです。褒めるのは言葉なのです。「グッド」「すごーい」などの言葉なのです。決してご褒美に物を与えてはいけないのです。相手が犬くんだといっても、気持ちと気持ちが互いにつながるってことはやはり言葉なのです。気持ちを言葉に乗せるのです。なんかムツボシくんと学生たちがテーマにしている障害児教育にも全面的に通じるところがあるお話でした。そして、まずは遊びの中で、この気持ちの交流をいっぱいするそうです。ココちゃんはボール遊びが大好き。さっそく実演。投げられたボールをくわえてすぐにご帰還。何回もSさんの「グッド」が飛び交います。

写真5 壁にはねかえるボールだってすぐにキャッチ。ヘヘ、どんなもんだい!



 次は、ちょっと難問…。Sさんはココちゃんに「ウエイト」と、待つことをもとめました。そして、大好きなボールを目の前で投げます。「待ってて」といわれているにもかかわらずボールに反応してはいけないのです。

写真6 得意のボールキャッチ。お客さんに見せてあげたいけど、いまはウエイト。動かないものね。



 最後に、仙台訓練センターで盲導犬くんたちに使われている隠語をご紹介!「ゴー、ドア」=「ドアの方にすすんで」。これは当たり前の命令ですね。「ヒール」=「ユーザーの左横について!」ですって。また、「ワン」とはおしっこ、ないの?」、「ツー」とは「ウンチ、ない?」を意味するそうです。うーん、明日から「ヒール」「ワン」「ツー」視覚コースで流行りそう…。「ムツボシくん、どこいくの?」と聞かれて「ウーン、Wan!」なんてね。

●日本盲導犬協会」仙台訓練センター(スマイルワン仙台)はこちら
http://www.moudouken.net/center/sendai/#to-contents
2014年7月9日

大学受験用日本史の人気参考書「石川日本史B講義の実況中継」が全シリーズ、点図入りで点訳完成!

 ハーイ!ムツボシくんです。私が顧問をしております滋賀県の点訳サークル「ぼちぼち会」のみなさんのご協力で、人気の大学受験用日本史参考書の点訳がこのたび約1年をかけて完成しました。原本は全5冊。これを点訳しますと全30巻というボリュームとなりました。

写真1
これが点訳原本、「石川日本史B講義の実況中継」全5冊



 ここで少し受験参考書の点訳状況についてお話します。ひとことでいいますと、まだまだ不足しております。受験用ですので、できるだけ新しいものの点訳がほしいところですが、それがなかなか揃っていないのです。全国の点訳書(点訳データファイルを含む)は現在はインターネット上の図書館「サピエ図書館」に集められ登録されています。全国各地の点訳ボランティアのみなさんのおかげで確実に私たち点字使用者の読書環境は日々改善されてきています。でも、受験参考書となると、タイムリーな点訳が必要にもかかわらずあまり進んでいるとはいえないのです。みなさんも一度この「サピエ図書館」にアクセスしてみて、受験参考書ではどんなものが点訳されてきたのかを検索してみてください。未だに10年以上も前の参考書しかそろっていない科目も見つかることでしょう。ここ、サピエ図書館は、会員でなくても、つまりログインしなくても検索はできるようになっています。

●サピエ図書館はこちらから。「1.点字データ検索」を試してみてください
https://library.sapie.or.jp/cgi-bin/CN1MN1?S00101=S00MNU01

 参考書の点訳状況でもう一つの問題は図が点訳されていないということです。歴史関連の参考書は、少ないとはいえ比較的点訳されている方ではありますが、それでも地図やグラフ、模式図など理解に必須な図が点図で提供されているものはほぼ皆無なのです。その意味で手前味噌とはなりますが、今回、点訳完成されたぼちぼち会(滋賀県)の「石川日本史」の点訳は全編に点図が挿入されており、日本史を受験科目にもつ受験生にはぜひ一読をすすめたい画期的な点訳となっております。

写真2 上
写真2 下
センター試験で出題される平城京の図(上)も、こんなふうにしっかり点図(下)で理解



 大学入試センター試験を点字で受ける場合、点図の地図やグラフ、その他図をみて解く問題が最近はあたりまえのように出題されます。でも、普段から点図を見ないで文字だけで学習してきた人にとっては図の読み取りは時間がかかって、図入りの問題はなかなかの難問となります。点図をみたこともない受験生にとって、入試本番に点図の問題と直面してもあわてるだけです。点図で学習できなかったこの受験生の不利、これって点字受験生個人の勉強不足と切り捨てて良い問題でしょうか。ぜひ、全国の点訳ボランティアのみなさん、図の点訳にもチャレンジしてみてください。そして、点字学習者にとって心強い図入り参考書の製作にますますのご協力をお願いします。

 ちなみに、ぼちぼち会の点図入り点訳はここ「ムツボシくんの点字の部屋」→「点訳データ集」からダウンできるようになっています。受験生のみなさん、世界史の図入り参考書もすでに点訳完成しております(『上住のわかる世界史標準講義』全4冊)。

●図入りの大学受験参考書の必要な方は、「点字で学ぶ高校生のみなさんのための点訳データ集」へ
http://nagao.miyakyo-u.ac.jp/tenjiheya/TEN_koko_2.html
2014年7月4日

宮教大視覚コース1年が「拡大読書器」など視覚支援機器を実際に触って体験…!

 ハーイ!ムツボシくんです。宮教大の視覚障害教育コース1年生の10名とムツボシくんは、7月2日、株式会社トラストメディカルを訪ねました。視覚障害のある方を支援する様々な機器をを取りそろえておられるのが「トラストメディカル」(仙台市泉区)なのです。もちろん、目的はどんな支援機器が実際に使われているのだろう、このことに実感をもち、将来、支援する側となるために必要な問題意識を育てることです。おっと、今日のムツボシくんはちょっとおカタイかも…。

写真1
これが株式会社トラストメディカルの社屋です



写真2
まずはお勉強、支援機器の給付制度などの説明をしていただきました



 学生は、これまで話には聞いていた拡大読書機や弱視レンズをさっそく触って使わせてもらいました。視力0.02の状態が疑似体験できる眼鏡をかけての読書体験。当然、この視力では文字の拡大が必要です。そんなときはやはり拡大読書器となります。据え置き型のものから、携帯型のものまで各種ありました。画面に大きく映し出される文字を首を左右に振りながら読んでいたら、車酔いのように気分悪くなってくることもあるようです。そこで、大切なのは、自分のよく見えている視野の部分をうまく1点に固定し、顔や視線は動かさずに、カメラの下にある本の方を左右に1行ずつ動かしていく読み方です。これも最初はトラストメディカルのような代理店におられる支援専門員の方や、眼科医、視覚障害福祉機関などでロービジョンリハビリテーションに関わっておられる専門家からリハビリを受ける必要があります。

写真3
据え置き型の拡大読書器で新聞を読んでいます(50倍近くまで大きくなりました)



 また、読むだけではなく、ペンを持ちながらの書字の体験も…。これは難しいものです。普通文字を書くときは、みなさんはペン先を見て書きますよね。でも、拡大読書器を使っての書字は違うのです。手元は見ません。ペン先が拡大されて映っている画面を見るのです。画面を見ながらペン先を動かしていくのです。これも慣れるまでにはリハビリを受ける必要がありそうです。でも、マスターすれば自筆署名でないといけない文書だって、もうへっちゃらです。いちいち手続きをして代筆者をお願いする手間もなくなります。

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携帯型の拡大読書器。下にペンを入れて宅配便伝票の記入にチャレンジ



 最後は、弱視レンズ。手持ちルーペ類、眼鏡式のレンズ、そして遠方が見える単眼鏡…。使う人の見え方にあわせてどんなレンズがその方のニーズにマッチするのかを決めていくのがこれら支援機器ではもっとも大切な専門知識となります。

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眼鏡式レンズ、これなら両手が空いて便利かも。でも、かなり近づかないとピントあわせが難しい。



 この他、音声で情報を案内する体重計・時計。そして画面読み上げ対応パソコンなど。でもでも、学生たちが何よりももっとも興味をもったものはなんだったでしょう?それは文書をスキャナ台にセットしてその内容をボタンひとつで読み上げてくれる支援機器でした。なかでも「よむべえスマイル」(アメディア社)は大人気!手書きの文字もスキャナが読み取って解読し読み上げてくれるからです。誰の書いた文字が最も読み上げ率が高いか、ボールペン・鉛筆・サインペン…どのペンが最も読み上げてくれるかなど時間の許す限り学生達は探求をしていたのでありました。それって遊び?と探求心、うーん、紙一重…。まっいいか!

○今回お世話になった「株式会社 トラストメディカル(眼科に関わるすべてをお手伝いします)」

http://www.trust-medical.co.jp/
2014年6月6日

ムツボシくん、視覚障害教育のおもしろさを高校生に語る!

 ハーイ!ムツボシくんです。5月31日(土曜日)、ムツボシくんは高校の教室にて偉そうにしゃべっていたのであります。ここは宮城野高校(仙台市宮城野区)です。この日は、「学問の世界」という特別講座が開かれており、進路先選択に生かしてもらおうと、なんと17講座が一挙開講。歴史学あり、経済学あり、物理学・数学あり…、そのうちの「教育学の世界」という講座をムツボシくんが担当したっていうわけです。

 教育学といっても幅が広すぎます。そこで、今回は全盲の障害をもつ子ども達への教育をテーマに少し高校生達に考えてもらいました。

 まずは、「まったく見えないってことはどんなことなのか?」の疑似体験からです。目をつむっただけでは全盲にはなれません。なぜなら、「明るさ」が見えるからです。そして、目をつむっていても「暗さ」がわかるからです。明るさも暗さも見えない世界、それが全盲です。例えていえば、後頭部に目があると思って、後頭部の目で後ろを見ようとしているような感じでしょうか。

 みなさんは、「見えないとほとんどのことができない」「なんでもサポートしてあげないとたいへんだ」などという偏見をもってはいませんか?。そこで、「見えないと爪切りはどうでしょう、ひとりでできるでしょうか?」とムツボシくんから質問。ポケットから爪切りを実際に出して構えると、生徒達はざわつきます。論より証拠…。やってみましょう。「さあて、何が切れて落ちてくるか…?です。無事、爪が切れて落ちるか、それとも赤いしずくがポタリポタリって」

写真1
高く生徒の前に爪切りを掲げて、いままさに切ろうとしているムツボシくん



 ペチペチペチ、そうです。できるのです。爪切りもお箸でお豆をつかむのも、包丁でキュウリを刻むのも…。練習すればできるのです。でも、どうやって教えてあげたらいいのでしょう。どんな練習をさせたらいいのでしょう。それを考えるのが視覚障害教育のおもしろさの一つです。練習方法を工夫して、点字を指で読めるようにしてあげられるって素敵なお仕事じゃないでしょうか。

 はい、次、これは積み木で作った3段の階段です。この階段をどのように図にしたらいいでしょう。みなさんのように見えている人は、こういう立体は斜めからみた見取り図を描きますよね。でも、触覚の世界で物事を考えている私たちは、決して斜めからの見取り図では立体図を考えないのです。見えた経験のない人にとって斜めの世界や遠近法の世界は触覚では体感できない世界なのです。

写真2
積み木でできた3段の階段の模型を生徒にみせているムツボシくん



 そこで、算数や数学などでよく出てくる立体の問題などは、「正面からみた図」や「上からみた図」「横からみた図」といった投影法で考えます。これらの見る角度の違う平面図を頭の中で組み合わせて立体をイメージするのです。これも見えない人なら誰でもすぐできるというものではありません。もちろん、いくつかの平面を組み合わせて立体をイメージするための練習が必要です。あなたならどんなふうに指導していきますか、これも視覚障害教育のおもしろいところです。

 グラフが2枚あります。左右共に同じ2次関数のグラフです。触ってわかるように点図で描かれています。さて、目でみたとき、どっちの方がよく描けているといえますか。左でしょう。ちゃんと縦横の方眼も描けていますからね。じゃあ、目をつむって触ってみましょう。右の方がグラフがしっかり指で触れましたね。方眼を縦横にバカ正直に描いちゃうと肝心のグラフの線が見つけにくくてたまりません。右のように方眼はあえて描かずに、目盛りだけが数えられる点のみ描いておけばグラフの問題は解けるのです。そうです。見える人にとって「よくできた図」と、触る人にとって「読み取りやすい図」とはまったく異なるのです。このような触覚で物事を考えていくというおもしろさも視覚障害教育の神髄の一つです。

写真3
点字の図形。左は方眼の縦横の格子線まで触ってわかる2次関数のグラフ、右は方眼の代わりに各座標にのみ点がつけてある同じグラフ



 「あなたは奥羽山脈を1本の直線で表したことがありませんか。どうして山がこのように直線になるのですか、と全盲の生徒から尋ねられたらどのように応えますか?」。これがムツボシくんからの最後の問いかけでした。地図の表現を学ぶようになるまでに、全盲の子どもたちに、どんな山のイメージ、山のつらなりのイメージをつけてあげておかなければいけないでしょう。一朝一夕には山のイメージなんてできません。幼稚園段階から小学校段階にかけて、どんな遊びを、どんな体験を積み重ねさせたらいいのでしょう。こういったことをデザインしていく教育の世界があるのです。おもしろいと思いませんか。少しでも興味を覚えてくれるのなら、ぜひ一度宮城教育大学を訪ねてみてくださいね。こうしてムツボシくんはこの日の授業を閉めたのであります。

●宮城野高校ホームページ(Miyagino High School Web Page)
http://miyagino.myswan.ne.jp/

【ムツボシくんの点字の部屋、開設1年】

 昨年の6月6日、この「ムツボシくんの点字の部屋」は開設されました。おかげさまで、1年間続けてこられました。アクセス数も、1ヶ月あたり700件くらいでしょうか。地味でマイナーなこの世界ですから、こんなものでしょうか。ムツボシくんが宮教大にいる間はまだまだ続けていきます。ぜひ、少しでもおもしろいって思ってくださった方、この見えない世界の話、ご友人などにもご紹介してくださいね。今後ともどうぞよろしくです。
2014年5月3日

宮教大 新歓に2年連続「南天とおる・たろう」が登場!

 2014年度1年生を歓迎する会が28日、視覚障害教育コースの仲間たち約40名で開催されました。今年の1年生は10名。女子8名・男子2名、出身地別では、地元宮城が7名、この他は秋田・福島・茨城が各1名です。

 ムツボシくんは今年は1年生担当。柄にもなく、知ったかぶりして次のようなメッセージを送りました。

 「ある見えない男の子が、‘ねえ、先生…飛行機が空飛んでいて、虹にぶつかっても大丈夫なの?飛行機こわれないの?’と尋ねてきました。1年生のみなさん、みなさんはこの男の子の疑問にどう答えてあげますか。どんなふうに何年かけて彼を納得させていけるでしょう。こういったことを考えていくのが宮教大の視覚障害教育コースです。私たちと一緒に、この男の子にすてきな空と虹と飛行機のイメージをプレゼントしましょうね。」

 さて、やってきました。今年もこの新歓に、あの伝説の漫才コンビが登場です。そう、南天とおる・たろう。二人合わせて「何点とるだろう」ですね。昨年に続いての2年連続の登場です。今回のネタは、果たして吉本文化のない東北のこの地でうけたのでしょうか。その答えはこちら!!  「ムツボシくんってだあれ」の中でその録音が聴けますよ。(昨年の録音もついでにアップしちゃいました。よかったら聴いてみてください。)

写真 ムツボシくん、今年は3年生と漫才、リングネイム?は何点とおる・たろう
2014年3月29日

ムツボシくん、初の卒業生との別れ

 ここ宮城教育大学では、3月25日(火曜日)、卒業式(学位記授与式)が行われました。去る4月に仙台にはじめてやってきたムツボシくんにとっては、はじめての卒業生たちとのお別れの式となりました。

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仙台国際センターで行われた平成25年度宮教大卒業式


 平成25年度、宮教大の特別支援教育教員養成コースを卒業したのは55名。うち11名が視覚障害教育を専門に勉強した学生たちでした。

 彼らの出身地をみてみると、地元宮城県が4名、青森3名、岩手・福島・千葉・愛知がそれぞれ1名です。また卒後の進路は、教員(講師を含む)が7名、公務員2名、進学1名、民間1名となっています。

 教員生活を始める7名のうち、視覚特別支援学校(盲学校)や地域の一般校で学ぶ視覚障害のある子どもたちへの教育現場(弱視学級など)に直接かかわるものは、講師として臨時採用された2名のみであり、各地で正式に採用が決まったものの中には、一人もこれら視覚障害教育の現場と直接かかわるものはいません。なんか寂しいというか、もっと「大学にて視覚障害教育を専門に4年間学んできた」ということを採用の時点で各教育委員会は考慮してほしいと願うところです。

 まあ、子どもたちを前にして「私の本当の専門は…」なんてぶつぶついっているようでは教員は勤まりません。自身が夢をあきらめずに追いかけているような人として、子ども達を応援しつづける教師になってほしいと願いつつ、ムツボシくんは学位記を一人ひとり手渡したのでありました。

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視覚障害教育コースの学位記授与式、新しいきみたちに心から乾杯!
2014年3月19日

地下街や駅周辺の指で読む地図に‘イエローマップ’をムツボシくんが推奨!


 ハーイ!ムツボシくんです。みなさんは「イエローマップ」って聞かれたことありますか?「はいはい、それ、聞いたことありますよ!」なんていわれると困っちゃうんですが…実は、イエローマップとは、私、ムツボシくんがつい先日に考えた新しい用語だったのであります。何を指す用語か?視覚障害者用の触る地図のうち、点字ブロックのラインを中心に描いた地図のことを‘イエローマップ’と呼ぼうぜ!と提唱するために作った用語なのです。

 視覚障害者用の触る地図(触地図)はこれまでもたくさん作られてきました。もちろん学習用の日本地図や世界地図から視覚障害者関連施設の周辺図などいくつもお世話になってきました。でも、これまでどうも実際に歩く場面で有効だった地図がなかったことにはたと気づいたのであります。なぜ有効じゃなかったのか?実際に歩くのは点字ブロックの上なのに、多くの市街地用触地図にはこの点字ブロックのラインが書かれていないからです。点字ブロックが「あるか」「ないか」やその位置は視覚障害者にとってかなりの目印になるにもかかわらずです。

 白杖を頼りに一人歩きする者にとって点字ブロックはとても心強い友人です。点字ブロックがどこにどのように、どちらに向かってどこまで引いてあるのかを知っているだけでかなり自由な歩行ができるものです。特に、駅前周辺など点字ブロックがある程度引き巡らせ手ある区域では、私のいう‘イエローマップ’は、頭の中の地図づくりに心強い友になるのではないでしょうか。

 ムツボシくんの住む仙台では、JR仙台駅2階西口にある「ペデストリアンデッキ(広場を伴う公共歩道)を制する者は、白杖歩行を制する」と視覚障害者の仲間内でいわれるほど(?)、このデッキを白杖1本で闊歩できるかどうかが生活の自由度を左右します。食べたいものがあるお店のビルまでいつでも一人で行けるか、それとも誰か見える人を誘わないと行けないのかといった問題が常に私たちにはまとわりついているからです。

写真1
これが仙台駅西口2階のペデストリアンデッキだ、点字ブロックのラインを覚えると好きなビルや目的のバスストップに一人で行けるようになる。


 そこで、イエローマップの登場です。立体コピーの原図製作ボランティアのYさんの協力で、このペデストリアンデッキのイエローマップを試作してみました。立体コピーとは少し大仰なネーミングですが、これは、黒インクで描いた線に熱を加えると1ミリ程度その線がもりあがるという特殊な用紙(カプセルペーパー)で作った触地図です。


写真2
右がイエローマップの原紙、普通の白い紙に黒のインクで書いた地図。左がカプセルペーパー、右の地図をこの特殊なペーパーにコピー機で差し込み印刷する。


写真3
差し込み印刷したカプセルペーパーに熱を加えるピアフという機器。黒インクの部分がもりあがって出てくる。


写真4
これで立体コピーによるイエローマップの官制、黒い線が点字ブロックのライン、黒丸はエレペータの位置を示している。


 ムツボシくんのような全盲者は普段どのように白杖1本にて歩いているのでしょう。私の子どもの頃に比べて今は格段に歩きやすくなりました。点字ブロックが増えたことと、何より駅で乗り降りのサポートが受けられるからです。私が一人で東京まで行くことを想定してみましょうか。自宅からはまず仙台駅行きのバス停まで徒歩。これは歩行訓練士さんに訓練を受けて歩けるようになりました。バスはJR仙台駅のかなり手前で降ろされてしまいます。ここから駅の改札口まではどうしても一人でたどり着かなければなりません。改札口まで行ってこそ駅のサポートが受けられるからです。ここにイエローマップの必要性が出てきます。改札口までたどり着ければあとはJRの関係者の方が手引きにて新幹線の座席まで誘導、そして東京でもホームまで駅関係者が迎えにきてくれており、乗り換えの電車にも乗せてもらえます。

 この他にもイエローマップがあれば、複雑そうな地下街なども頭に地図を描きながら一人で歩けるようになるでしょう。

 いかがですか。触れる地図に感心を持たれている方がおられましたら、ぜひ‘イエローマップ’という発想で点字ブロックのラインをメインに下地図の作成もご一考いただけたらと思います。今後も触地図のあり方で情報交換ができたらいいなとムツボシくんは考えております。何か感想をもたれた方はどうぞメールくださいね。

 この記事を書いている今日は、奇しくも点字ブロック記念日、1967年3月18日、日本ではじめて、ということは世界ではじめて点字ブロックが岡山県にてお目見えした日でもあったのでありました。

●ムツボシくんへのメールはこちらまで!(アットマークを半角にしてくださいね)
nagao@staff.miyakyo-u.ac.jp
2014年3月1日

駅ホーム 安全なはずだったホームドアにあった落とし穴!

 ハーイ!ムツボシくんです。今日は少し痛かった出来事のお話。それは、東京の池袋駅、山手線ホームでの出来事でした。

 2月16日、なんと、私、ホームと電車の間に落ちたのであります。落ちたといっても電車が停止しているときでしたので、片足が太ももまですっぽり隙間に落ち込んだだけで、助かったのではありますが、かなり激しく左の太ももを痛打しました。幸い骨は折れませんでしたので、左足はひきずりながらも、その後、仙台まで戻ることはできました。

  話は少しそれますが、杖もバキンと折れちゃいまして、引きずる足で階段はつらいので、エスカレータまたはエレベータばかりを通って駅員さんにはそれぞれの駅で手引きをお願いしました。こんなとき、進んできている駅構内のバリアフリー化はほんと助かります。

 さて、なんで私は落ちたのか?であります。池袋では、知り合いが見送ってくれましたので、乗り込みのときには駅員には頼んでおりませんでした。それが油断ともなりました。私は電車がついたので、その知り合いに別れを告げ、「慣れているもんね」みたいに軽快に車両に近づき、その車体を触りながらその横っぱらをたどって、乗車口を探して後ろへ、後ろへ…。見つけました。横っぱらの切れているところを。ここがドア、入り口です。杖で床面があることを確かめて一歩中に踏み込みました。そして、ホームの方に振り返って、知り合いに再度挨拶…。さて、ドア横にあるはずの持ち手をさがそうと横向きになり、さらに奥に踏み込んだ時です。何が起きたのでしょう。気づいたらまわりに人がたくさん集まってくれていました。そうです。片足がすっぽり電車とホームの隙間に落ち込んでいたのです。杖がどこかに激しくぶつかった音でしょうか、パシャンという音だけは耳に残っています。激痛が走りましたが、支えていただきながら立てました。骨も折れて居なさそうなので、「大丈夫です」とみなさんに御礼をいいながら席まで案内してもらいました。申し訳ありません。電車はおそらく数分遅れとなったことでしょう。そして、座って気づきました。杖がグラグラしています。ジョイント部分がやられちゃいました。

 なんで、こうなったのか?ムツボシくんのひとり反省会は山手線の電車の中で始まります。

 そうです。池袋の山手線ホームにはホームドアがあったのです。私が電車の横っぱらと思って触っていたのは、実はホームドアの横っぱらだったのです。そして、このホームドアの切れ目を私は電車の入り口と勘違いしたのです。そういえば、すぐにドア付近にいつもは持ち手をさぐるのですが、いま思えばあの時、それに手間取った気がします。ホームドアが開いているところに私は立ったまま、知り合いの方をむいて挨拶、そして、電車の奥に進もうと体の向きを横向きから後ろ向きにしようとしたのです。この時点では私はまだホームの上だったのです。そこから体を横向きにして踏み込んだところ、つまりそこがまだ電車の床面手前、電車とホームとの隙間だったのです。それが私の左足にすっぽりはまったのでした。

写真
池袋駅山手線ホーム8両目、おそらくこのあたりで落ちたのでした。


 そこで、教訓!

 教訓その1。これから行く駅に、ホームドアがあるかないかは情報として事前に知っておくこと。ホームドアがあるかないかで電車へのアプローチはかなり異なってきます。

 教訓その2。また、駅に着いたら、初めての駅ならなおさら、ホームドアは電車をまっている間に、触れておくこと。触っているものがホームドアか電車か勘違いしないためにです。

 ということで、いまは左の太ももは毎日シップ、インドメタシンのお世話になっています。これがなかなか綺麗に太ももに引っ付いていてくれません。痛いとはいえ、どうしても歩かなければいけません。シップの端ってやつは剥がれやすいのです。ズボンやパジャマを脱ぐ時などにベロリと剥がれかけてきます。先ほどなどは、トイレでがんばろうとしたら案の定、またズボンと一緒にシップの縁がベロリ。それを知らずにトイレットペーパーをゴロゴロ引っぱりだしていたもんですから、気づきました。なんと、ペーパーがめくれたシップ面にぺたり。ああ、もう…。そんなとこにくっついたら、とれへんがな…!
ということで、今は、太もものシップにトイレットペーパーもぶらさげながら歩いているムツボシくんでありました。
2014年2月26日

宮教大に念願の点訳サークル「ムツボシくん」が誕生!

 ハーイ!ムツボシくんです。今回はとってもうれしい! 私のような点字愛用者にはとってもうれしいご報告です。

 2月23日。そう、富士山の日(おっと、これは関係ないか…?)、宮城教育大学に点訳サークルが誕生しました。その名も点訳サークル「ムツボシくん」です。私と同じ名前のサークルとは重ね重ねうれしい話です。

 23日、午前中は記念すべき第1回学習会。紙に打ち出した点字を目で読む練習やパソコンでの点訳の練習など、びっちり2時間…。「パソコンで点字を打つだけなら、それは特技でもなんでもないよ。目で点字が読めるようになったら、それは特技といってもいいからね。」とムツボシくんの檄が飛びます。

写真1
記念すべき第1回勉強会。現在会員は7名でーす。



 ところで、点訳サークル「ムツボシくん」の初仕事はなあに…?はいはい、それはこれ!次の写真をみてください。

写真2
‘たんや善治郎’という牛タンのお店でみんなでお食事。いただきまーす!



 えっ、みんな「牛タン定食」を前にオスマシ…?そうなんです。学習会の後、集合したのはムツボシくんが仙台に来て、ここなら許せるとおもった牛タンのお店‘善治郎’。はいはい、このお店の点字メニューを作るのです。それがわがサークルの初仕事なのです。お店の責任者Kさんからしっかりメニューのコピーの束をいだたきまして、では、私たちもいただきまーす!みんな、がんばってネ。早く仕上げないとどんどん消費税の率が上がっていくよ。

 宮教大にはどういうわけかずっと点訳サークルがなくて、ちょっぴり寂しかったムツボシくん…。手話サークルの「ハンズ」はしっかり活動していました。対抗意識ってのもおかしいけど、どうもこれまで、ちょっとばかりくやしかったムツボシくん、これからは点訳サークルのみんなとがっちりタッグを組んで宮教大、いやいや仙台全体に点字の文化を広げていくぞー!

●仙台名物牛タン焼きの店|たんや善治郎
http://www.tanya-zenjirou.jp/

2014年2月22日

ムツボシくん率いる宮教大フロアバレーチームが善戦!

 ハーイ!ムツボシくんです。思えば、あの年末のクリスマスの日、わが宮教大に初めてフロアバレーチームが誕生したあの日から2ヶ月弱。東北でもフロアバレーボールの盛んな宮城県立視覚支援学校の門をいよいよたたく日がやってきました。


写真1
仙台市にある宮城県立視覚支援学校


 時は2月19日、宮教大チーム対宮城県立視覚支援学校チームとの対戦の火ぶたが切って落とされたのです。といっても、相手は東北地区のフロアバレーボール大会をここ2連覇している強豪校です。そんな学校のクラブチームには歯が立ちません。そこで、中学部と高等部普通科生合同による体育の授業にお邪魔させていただき、練習相手をさせていただきました。とはいえ、正式ルールに則った真剣勝負。わがチームにしては正式な審判の方によって裁かれる初めての試合です。さあ、みんなの意気込みは…?空回りしないといいのですが…。


写真2
試合直前、初めての正式ルール。試合になるといいのですが…


 ここで、ムツボシくん率いる宮教大フロアバレーボールチームを簡単に紹介しておきましょう。彼らはいずれも特別支援教育の教員をめざす1年生の学生です。視覚障害を専門に学ぶ学生の他にも、聴覚障害や発達障害、健康・運動障害などを専攻している学生など4つのコースの学生の混成チームです。4つのコースの有志がこのたび20名ほど集まってくれて、今回の対戦が実現したのです。

 互いにA・Bの2チームずつを作り、計4チームで試合開始です。試合時間は15分。わが宮教大チームの戦いぶりやいかに…?


写真3
さあ、試合開始!相手チームのサーブです。


 いやいや、善戦・善戦・善戦です。結果的には、4戦4敗でしたが、いずれも僅差でした。ある試合などは8対7というところまで追い上げました。少し専門的なルールの話になりますが、サーブミスがやや多かったのが敗因の一つとなりました。あれだけ「しちゃだめだよ!」といっていた「ネット前コール」も連発。アチャチャです。この反則はどういうことかと言いますと、前衛の全盲プレイヤーのために試合は基本的には動きを指示する「掛け声」しかしてはいけません。特に、サーブの時は、そのボールが相手チームに入るまでの時間は誰ひとり声を出してはいけないのです。それがその、わが学生チーム、サーブした瞬間についつい、「あっ!」とか、「あれっ!」とか余計などうでもいい声を無意識に出してしまう癖がとれていませんでした。で、そのつど、「ピピピーネット前コール、得点、宮城県立視覚支援学校チーム」とホイッスル。

 もう一つの敗因は、やはり全盲プレイヤーの動きの違いです。さすが視覚支援学校の生徒さんたちは動きが違います。わがチームのにわかアイマスク前衛プレイヤーはコート端でサーブをした後、自分の位置まで戻るのに四苦八苦。何秒もかかって戻るため、ボールを取った相手からはその足下を狙われてアタックポイント献上です。また、ボールを取ってからのアタックまでの時間が学生とは違います。速いのです。ブロックできていないスキが狙われました。

 4連敗したとはいえ、それでもムツボシくんが心配していた反則だらけで試合にならないという事態は免れ、女子前衛プレイヤーのスパイクが決まったり、後衛からのバックアタックも決まったり、思わぬラリーが続くなど、まずは満足の初戦でした。視覚支援学校の生徒さんからの感想で「えっ、わずか1ヶ月あまりでこれだけやれたらすごい」「思ったより強かったよ」などとお褒めの言葉もいただきました。実は、ここまでできたのには、宮城県立視覚支援学校の体育科のI先生の指導をいただけたからでもあります。I先生は大学に2回もルール研修にきてくださいました。また練習方法なども伝えてくださいました。

 「実際に障害をもたれている方と交流したい」、「一緒になにかやりたい」という学生達の強い気持ちから始まったこの企画です。この日、敗れたとはいえ、たくさん交流ができて満足しているだろうと学生に感想を尋ねたところ、なんとなんと、全員が「くやしい…!」「これだったら勝てるかも…」「先生、来年こそはやっつけましょう」ですって。これは、「障害のある方と何かしたい」という気持ちのどこかにあった「上からの目線っぽいところ」が一気になくなった瞬間でもありました。
2014年2月6日

絵画美を言葉で伝える限界が見えたかも…? ミュシャ展

 ハーイ!、ムツボシくんです。今回は美術鑑賞のお話です。

 仙台にやってきて、今回、話題にする「ミュシャ」にて、ボランティアと見て回る視覚障害者のための美術鑑賞会も4回目となりました。これまで、伊藤若冲・ゴッホ・シャガール、そして今回の1月末のミュシャ…。



写真1
ミュシャの前で饅頭をミュシャ・ミュシャ食べてるムツボシくん(それくらいのこと、きっと、やると思ったわ!)



写真2
今回のミュシャ展のポスター。これはあるシャンパンのコマーシャルポスターをデザインにしている。



 これまで、絵を前にしてのボランティアの方との対話を通してムツボシくんもいろいろと考えてきました。特に、見える人にとっての「美しい」とか「気持ち悪い」とか「この絵、私、好き!」といった個人的な主観の美が私たち全盲者にも持つことができるのかといったテーマについてです。

 言葉により、絵の様子は知識として私たちにも入ります。でも、あくまで‘ある程度’です。また、指をとってもらってのなぞり書などで構図や対象の配置なども知識として入ります。これも‘ある程度’です。この‘ある程度’というのがくせ者だということがわかってきました。ある程度の理解では「美」の基になっているものは何も伝わってないことになるのではないでしょうか。ある程度では、錯覚を誘導する虞の方が大きいのではないでしょうか。もちろん、「錯覚」自体を楽しめばいいじゃないかという意見もあります。でも、全盲者は所詮錯覚しか得られないのかと、つきつけられたらどうしましょう。「そんなことはない!」とムツボシくんとしては言いたいじゃありませんか。

 私たちがやってきた鑑賞会にはこんなルールがあります。名付けて、「鑑賞の‘しない’ルール」です。

@静かに鑑賞しない(おしゃべりしながら作品鑑賞をたのしみましょう)
A見える人は一方的な説明をしない(自分の声や相手の声、作品の声を「聞く」ことも忘れないで)
B見えない人、見えにくい人は聞き役に専念しない(見える人に、どんどん困らせる質問をしましょう)
C全てをわかり合おうとはしない(むしろ感じ方の違いを楽しんで、気軽に鑑賞しましょう)

 このルールで4階鑑賞してみて、ムツボシくんが率直に感じたことを言います。視覚障害者から質問することって、決まり切ったことしか質問できません。「どんな色?」「なにが?」「どうなってる?」「どう見えるの?」「これ、いい?」「どこがいい?」です。

 次に、視覚障害者からの感想といわれても、「これまで知らなかった構図への驚き」、「色や形について見えるひとから言われてきた過去の言葉の蓄積とのすり合わせ」しかありません。

 それで十分じゃないか、と見える人側からはいうかもしれませんね。でも、ムツボシくんは物足りません。なぜなら、絵画美を前にして、全盲者が口にする言葉はすべてが見える人からもらった言葉ばかりだからです。私自身が見つけた印象がひとつもないことに気づきます。私が第一発動者として世に放つ言葉がないのです。つまらないのです。どこまでいっても、絵の前では、私たちは‘聞き役’にならざるを得ないのです。

 ‘ある程度’への解決、世に放ち出す印象を第1人者としてもつ権利、これらをなんとかしないとここから先にはいけないと信じるようになりました。そのためには、やはり‘触ること’を、私たちはもっと主観の美を目覚めさせるための鑑賞の武器にしなければいけないでしょう。ただ、この‘触ること’も‘ある程度’の壁を破り切れないことが予想されます。でも、いまは追究してみるだけかもしれません。

 かばうわけではありませんが、仙台で参加しているこの鑑賞のスタイル。確かに楽しいことは間違いありません。見える人の美意識を根掘り葉掘りその場で尋ねられるのがムツボシくんとしてはとっても楽しいです。「ミュシャってエロチックよ」といわれたあるボランティアの言葉がいまも耳に残っています。描かれる女性の多くが美しいデコルテを露わにしています。ドレスの肩紐がゆるんでいる「自転車のポスターー」の説明ではムツボシくんもなんとなく心が色めいてしまったのでありました。おーい!どんな過去の言葉の蓄積とのすり合わせをしとったんや、そのときは…?



写真3
これがムツボシくんをときめかしたウェイヴァリー自転車のポスター。ネットで見つけてもらいました。

http://www.muchafoundation.org/gallery/browse-works/object/51
2014年2月1日

「細い文化」との出会い 〜ソウルで考えたこと その2〜

 ハーイ!ムツボシくんです。ソウルの話は地下鉄の続きです。

 ソウルの地下鉄は視覚障害者にとって、とっても安全でした。なんたって、ホームドアがあるのです。線路に落ちる心配はありません。



写真1
ソウルの地下鉄のホームドア



 券売機にも点字がいっぱい。でも、肝心なところはタッチパネル操作。これって韓国の見えない人たちはどうしているんだろう。きっと何かの工夫があるんだろうな。券売機を使わなくても買えるといったような…。



写真2
地下鉄の券売機。枚数や「初乗り区間」などはタッチパネルを触らないと買えなかった。



 ただ、またしてもムツボシくん、ソウルの新たな文化現象を発見!点字ブロックが小ぶり…。日本より細いのではと疑念? また、トイレに向かう誘導ブロックにおもしろい形状をみつけました。これって細い横向きの波型? おや、よく触ってみたら‘W’の形?おお、そうかそうか、「WC」に向かうのだから‘W’になってるんかな…?(あやしいけど)



写真3
プラットホーム、車両入り口付近。明らかに小ぶりの点状ブロック



写真4
トイレに誘導している点字ブロックに‘W’の形を発見!これって女子ト
イレ? 「woman」の‘W’(でも、それじゃ戻りは性転換して「man」の
‘M’になるじゃん



 ホテルに帰ってさらに「細いもの」と遭遇! 鉛筆が細い。ペットボトルが細い。極めつけはトイレットペーパーが細い。「この細さなら、○○さん、困るだろうな…」なんていらぬことまで心配しちゃったムツボシくん。これはやはりソウルには「細い文化」が確かに存在しているのでありました。だって、あの殺人的冷麺もむっちゃ細かったしね…。



写真5
ホテルでみつけた細いものベスト3…鉛筆・ミネラルウォーターのペットボトル、そしてこの幅でたりますか?トイレットペーパー



 夜の公式行事が終わると、誘い誘われムツボシくんたちは居酒屋の食察に出動。まあ、こんなに細い隙間通ってどこいくの?っていうようなビルの間をぬけて店に到着。さっそくマッコリで乾杯。なんと昭和風情たっぷり、やかんで出てきたのでした。



写真6
マッコリはやかんも器もこれってアルマイト…?



 女性の店員さんを呼んで「何かお魚もの、ありませんか」というと、「これしかない」と出てきたのが、えたいのしれない乾物。ソウルの居酒屋には焼き魚や煮魚、まして「おさしみ」は何ひとつなかったのでありました。



写真7
お世辞にもおいしいとは言えない乾物。またしてもあの殺人的冷麺みたいに堅くてかみ切れない。



写真8
店員さんとムツボシくん。互いに求めあって(?)のツーショット。そう言えば、このお姉さんも細い。



 酔い覚ましに立ち寄ったコンビニ。ここでは「おまけの文化」にも出会いました。豚饅をひとつ持ってレジへ。すると、黙って200ccくらいのオレンジジュースのパックを握らせてくれるではありませんか。なんと、このジュース、豚饅についてくる‘おまけ’。「じゃ、反対にこのジュース買ったら豚饅、おまけでいただけますか?」と尋ねると「それ、ありません」といわれたムツボシくんでした。ポテチ2袋買えば3袋目はただ、とかのおまけ文化がソウルのコンビニやスーパーにはいっぱいあるようでした。



写真9
ホテル横のコンビニ、買ったものを飲み食いできるスペースで一休み
2014年1月25日

挟む文化との出会い 〜ソウルで考えたこと その1〜

 ハーイ!ムツボシくんです。年末、ムツボシくんはソウルにいました。日韓の「視覚障害教師の会」の第1回親善セミナー参加の日本側参加者の一人としてでした。韓国は2007年より急速に公務員に占める障害者の率を高める政策に入り、最近では教員採用試験においても、障害者別枠試験が実施され、全体に占める障害者合格率6%を目指していると聞きました。そのためか、韓国の視覚障害者教師たちは私を含めた日本側代表団に比し圧倒的に若く、また全盲者よりは弱視者が多かったです。

写真1
日韓視覚障害者教師の会親善セミナーにて挨拶する日本側代表。

 会場となったのはソウルにある国立中央図書館。ここには、障害者支援室があり、「点訳本やデイジー本のダウンロードサービス」など日本と遜色のない障害者向けサービスが整っていました。また、全盲の利用者を最寄り駅まで迎えにいくサービスや福祉タクシーなど来館者のアクセスには日本よりもよく考えられた施策があるようでした。聴覚障害者のための「手話絵本」や「手話本」の製作といった日本ではまだまだの分野にも着手されていました。ただ、手で触れる図入りの点字本の製作といった「図を触る文化」についてはあまり資料もなくこれからのようでした。

写真2
朝鮮語の音声画面読み上げパソコン。もちろん拡大表示もできる。


写真3
「タッチミー」という感触を楽しむ絵本。これは日本にも出回っている。ただエーデルで描いたようなパソコン点訳による点図はなかった。


 さて、セミナー第1日目を終え、ムツボシくんも韓国の関係者と食事となりました。まずは韓国焼き肉。楽しみです。おや、長いお肉のままテーブルにあるようです。日本でもよく知られているようにハサミで切って焼くのでしょう。隣の席の韓国人に尋ねてみました。「長いまま焼いて食べる人は韓国にいるのですか?」「いない」と返答。全盲者への自立活動でもあるまいし、それなら最初から切っておいてくれ!といいたくなるではありませんか。


写真4
焼き肉にはハサミがついてくる韓国。


 翌日の昼食は誘われての冷麺専門店となりました。かなり麺が細い。あの重い韓国のお箸を手にムツボシくん、麺をすすりはじめました。口に入る分は噛み砕こうとしたのですが、これがなかなかかみ切れません。しかたなく、再度すすりこみつつ、そろそろ麺の端っこがくるだろう…と期待。切れ端を探してひたすら麺をすすりこむのですが、麺はまだ続くのです。すすってもすすっても麺の切れ端がない。思わず窒息しそうになったムツボシくんでした。そしてみつけました。ハサミがまたしてもテーブルにあるではありませんか。韓国では、器の中にハサミを入れ、すする前に麺をバチバチ切るようなのです。それなら、なぜこのような殺人的に長い麺をこしらえる?、こんなに長い麺をつくる方が麺職人もたいへんだろうに…。しばし麺職人のご苦労に思いをはせながら、ふとムツボシくん、気づいたのでありました。これはもう文化です。「挟む文化」なのであります。


写真5
このままじゃ窒息するよー、だれかなんとかして…


 そういえば、その夜、地下鉄を降りる時のことでした。停車時間の短い韓国の地下鉄のドアは、ものすごい勢いでムツボシくんの白い杖を挟みにきたのでありました。恐るべし「挟みの文化」なのであります。

2014年1月4日

百聞は一触に如かず、トミカを触ってイメージ一新!

 ハーイ!ムツボシくんです。共遊玩具のタカラトミーといえば、ミニカーシリーズの「トミカ」ですよね。なんと、この「トミカ」の貸し出しサービスを同社はやってくれています。ムツボシくんもさっそく申し込んでみました。貸し出し期間は約2週間、返却は自己負担となります。

写真1
トミカが勢揃い、今回は20種類がやってきました



 働く車を中心に、今回は2セット20種類の車がムツボシくんのところにやってきました。なんと、点字の説明と同内容の音声CD付きです。

 触りたくても触れないものが以外と世の中にはたくさんあることにみなさんはお気づきでしょうか。富士山の全景、湖水に乱反射する光、星空、風に踊る猛火の炎、桜舞い散る光景など、身近なものでは、自分の家の屋根の形や父母や親戚の顔なんてのもよくわからないままムツボシくんもこの年になっちゃいました。でも、ある程度はイメージする力を鍛えることでカバーもできるものです。そう、想像するのです。想像のためには、やはりそれなりの素となる確かなイメージだけは手で触ってしっかりつかんでおきたいのです。たとえば、鳥ですが、これもそう簡単には触れません。それでも鳥の素となるイメージ作りのために、雀の剥製(はくせい)のひとつにでも触った経験があればずいぶん違うものです。あとはここから言葉の力でイメージをいろいろと広げることができるからです。トミカもそうですよね。実によいイメージの素をつくる教材となっています。

 今回、やってきたトミカによって、ムツボシくん、あれれっ、こりゃこりゃ、えっ?これまでのイメージの素を壊して作り直さなきゃと考える発見がいくつかありました。

写真2
ホンダ・フィットのパトカー、えっこれがパトライトなの…?



 パトカーのパトライトといえば、なぜかずっと円筒形の回転灯とばかり思っていました。子ども頃、パトカーの屋根に飛び出ているものを触った記憶があるのですが、そのイメージが消えることなくこの年までずっと訂正されずにきていたのです。今はこんなふうなライトになっているんですね。まさに、百聞は一触に如かず、触らないと気づかないことでした。


写真3
ヘリコプターのローター、うーん十字形だとばかり思ってました



 ヘリコプターのローターもそうです。ずっと、2本の棒が十字形に固定した形で回転しているものとばかりおもっていました。2本が独立して動くのですね。それぞれの独自の動きによって、微妙な回旋や傾き保持などが可能なのですね。これまた触って納得です。


写真4
自衛隊の軽装甲機動車、トミカがないと一生触れない車だね。



 また、自衛隊の車や特殊な工事用車などはトミカでないとまず触ることのできないものたちです。この機動車でムツボシくんもはじめて屋根にハッチがあることや、柵がついていることなど知りました。このハッチもフタが開閉する仕組みになっているとさらにいいのに…と思いました。

 この他にもトミカには驚きと発見がいっぱいです。昔つくりあげた古いイメージを一新するのにはまさに持ってこいのイメージの素をつくる教材です。ミニカーばっかりこんなに集めてどうするのよ…!と叱った方もおられるかもしれませんが、見えない・見えにくい子どもたちにはとっても有意義なおもちゃであることを改めて確認したムツボシくんでした。


●トミカの貸し出し申し込みはタカラトミー社お客様相談室
 電話:0570−041031(平日の月曜から金曜、午前10時から午後5時)まで
2014年1月3日

視覚障害者スポーツ「フロアバレー」のルール研修会を宮教大の学生が自主的に開催

 ハーイ!ムツボシくんです。今回は視覚障害者スポーツのひとつ、「フロアバレーボール」のお話です。

 ネットを低く貼って床面との間をボールが通ります。ころがすボールによる平面的なバレーボールとでもいいましょうか、宮城教育大学の特別支援教育を学ぶ1年生の有志諸君が、この日、クリスマスの午後だというのに集まってくれました。

  「長尾先生、ぼくたちにフロアバレーのルールを教えてください。練習して宮城の盲学校チームと試合ができるまでになりたいです。」彼らの意気込みに打たれたムツボシくん、さっそくスリッパ姿ではありましたが、体育館に登場。ルールの概要を説明したのでありました。

 フロアバレーは6人制バレーです。前衛選手と後衛選手に3名ずつ分かれます。前衛はアイマスクをしなければいけません。見えている後衛選手は、よって、ボールの位置や前衛選手のボジションを言葉で端的にアイマスク選手に伝えるのです。これがなかなか難しいのです。アイマスクをつけた前衛選手の主な役割は、ブロックやアタック、そして自軍前衛エリアにあるボールの処理です。ボールが止まらないうちに相手側に打ち込まなくてはいけません。この前衛の動きを後衛は言葉で「2歩右」とか「左1歩」のように指示をするのです。

写真1

「味方の指示でボールをゲット、前衛選手のアタック」



 学生諸君はさすがに若いのであります。約1時間の練習でラリーが続くようになりました。アイマスクをつけるのも初めてという学生も、ボールを追いかけています。コートの中を左右前後にわずかずつ動けるようにもなっていきます。

写真2
「5名ずつのチームの対戦だが、ラリーが続くようになった」



 ムツボシくんも滋賀の盲学校の生徒の時代、フロアバレーはいっぱい楽しんだものです。ぜひ、宮城の盲学校のフロアバレー部の胸をかりてゲームの相手をしてもらえるようにまでなったら、仙台全盲物語にてまた報告させていただきます。お楽しみに…!!
2014年1月1日

これは画期的!宮教大生協自販機の点字化を、視覚障害者の働くNPO法人ビートスイッチが年間保守契約

 ハーイ!ムツボシくんです。新年第1弾にふさわしいこの画期的な試みについて、ここ仙台から、わが宮教大から発信できることをとてもうれしく思っています。

 宮城教育大学生協は、このたびNPOビートスイッチと、自販機の点字化に関する年間契約を結びました。自販機のボタンに点字を貼ることを中心に、点字使用者がなんら困難なく自販機が単独で使いこなせるようにするための年間契約です。よくはがれてしまう点字シールも年数回の巡回保守作業でばっちりです。これらの保守もふくめての年間契約なのです。自販機1台当たりいくらという年間契約が生協側と2013年12月、とりあえず3台の自販機の点字化で結ばれました。ムツボシくんの知る限り、このような自販機の点字化に関する契約が結ばれるのは全国でも初めてのことではないでしょうか。少なくとも極めて希な画期的な出来事なのであります。その点字化作業がさっそく12月18日行われました。

 そこで、ムツボシくん、作業中のビートスイッチの方に直撃インタビューにでかけたのであります。

写真1
点字シールの貼り付けと確認をしている全盲の尾形さんと副理事の千葉さん



 まずは、ビートスイッチで働く全盲の尾形さんにインタビュー。新しく始まったこの自販機の点字化の仕事はどうですか?

 「私も全盲ですので、これまでひとりで使える自販機が仙台ではまったくありませんでした。一人歩きできる私の生活範囲にこのような点字化された自販機があるとうれしいです。どんどんこのような契約が広がって私たち視覚障害者の仕事も増えるといいのですが、なにより見えない人たちの生活がこうして豊かになっていくことがうれしいです。」

写真2
ビートスイッチではマッサージ室のスタッフでもある尾形さん(26歳)



 寒い中、作業を続けるビートスイッチの人たちにあったかい飲み物を差し入れにきてくださったこの方、宮教大生協専務の佐藤さんこそ、この年間保守契約という画期的な試みに踏み切ってくださった方なのであります。この話のきっかけを伺いました。

 「食堂も含めて視覚障害のある方の利用については常にその時点での最善の方法は何なのかを、本学の特別支援教育講座の先生方のアドバイスも受けながら考えてきています。「差別解消」に関するテーマについては指摘されるから考えるのではなく、共に考えこちらからも提案できるようになりたいと考えております。その意味で今回の自販機の点字に関する年間保守契約のシステムが、視覚障害者の仕事の幅を広げるとともに、生活の場も豊かにする取り組みにつながることを、今回みなさんから教えていただくこととなりました。ぜひ、仙台市の大学生協の仲間にもこの試みについて広げていきたいと考えております。」

写真3
こちらがとてもハートフルな宮教大の生協専務の佐藤さん



 これまでムツボシくんもひとりでは使えなかった宮教大の自販機、これで、ラーメン、アイスクリーム、飲み物と3台がいつでも買いたいときに買うことができるようになったのであります。自分で「ねえ、何のボタンがあるの?」なんて人に尋ねることもなく、また読んでくれる人がそばにいるかいないかなんて気をつかうことなく「いつでも買える」「いつでも自分で選べる」。これこそ買い物の醍醐味。人としての自由の原点なのです。さっそくこの自由を享受しているムツボシくん、生協が閉まっていたこの日、「黒い豚カレーうどん」がお昼ごはんとなったのでありました。(カップ麺の中の自由ってのがまだまださみしいですね)

写真4
ひとりで選んだカップ麺。今回は黒い豚カレーうどん。ボタンを押せばお湯だって入れられちゃう!



 これまで自販機の点字化については、点訳ボランティアや学生たちが全国各地でたくさんの自販機に点字シールを貼っていただいておりました。でも、そのほぼすべてが継続されず、いつの間にかシールははがれ、また入れ替えごとにシールも貼り直されることはなく、使えなくなってきていました。そこで登場した今回の宮教大生協の年間契約の試み、点字化と保守を組み込んだ年間いくらという契約は画期的かつもしかしたら歴史的な一歩になる試みかもしれません。今後の展開に大いに期待しつつ、ひとり暮らしのムツボシくんは、昨夜の大晦日、点字化された自販機に出かけたのであります。そう、年越しそばが「緑のたぬき」だったのは言うまでもありません。(うーん、やっぱ、カップ麺の中の自由だけでは、まだまだ自由の範囲がせますぎる〜、トホホホ)

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