ムツボシくんの仙台全盲物語
むつぼしくんが飛行機に乗っている画像
2015年12月27日

ぼくのマイナンバーはなぜか14桁!?

 ハーイ!ムツボシくんです。家族に読んでもらえた文字が見えない人の中には、「もうご自身のマイナンバー、覚えちゃったよ!」なんて方もおられることでしょうね。ムツボシくんも早く自分のマイナンバーを知りたいのであります。なんとかゴロ合わせにピッタリのマイナンバーが届かないかなと楽しみにしている一人なのであります。「9540−1089−1649」=「くらしは−あおばく−ひろしくん」なんちゃってね。(解説:「ら」は点字では数字の5、「あ」は数字の1の仲間なんです。解説がいるようではダメですね。)

 実は、このお楽しみのマイナンバー、1ヶ月前にはちゃんと届いていたのでありました。ところがです。なんといまだに自分の番号を知り得ないでいるのです。マイナンバーは視覚障害者には読めないようになっているのです。

 さっそく青葉区の戸籍住民課に電話、「あのう、自分のマイナンバーが読みたいのですが…」。すると、「用紙の下に視覚障害者のための音声コードがありますので、ご自身で読み取ってください」ですって。でも、戸籍住民課では、この視覚障害者用音声コード、どんな機器、アプリで読み取るのかはご存じありませんでした。「あのう、でも、そのコードってどこに書かれているか自体がわからないのですが?」。すると「用紙を触ってみてください。少しザラついた箇所があります。ここがサクラのマークの模様の裏となります。ザラついている面が裏の上側となります」とまあ、紙の向きだけは教えてもらえたという次第でした。

写真1
こちらが裏なんでしょう、確かにザラついた部分が用紙にはありました。



写真2
ここが視覚障害者用音声コードの場所?手で触ってもわかるように切り欠きのクボミをつけるくらいなんでしなかったのでしょうね。




 そこで、いろいろと情報を集めてわかったことは、

(1)このコードはユニボイスというスマホアプリで読めるように工夫されたということ(アプリは無料だがスマホがない人はダメ)。

(2)スピーチオという音声コード読み取り機器が日常生活用具として給付されていること(私は無償給付ではない)。

(3)青葉区役所まで行けば読んでくれるということ(見える人はおうちで自由に読めるものをなんで有料ヘルパーを使って交通費を出して仕事まで休んで出向かないといけないのか。区役所は平日夕方5時すぎまでしか開いていない)。

 では、まずは自力作戦!職場のiPod touchでユニボイスのアプリを立ち上げて、視覚障害者用音声コードがあるあたりにカメラを向けてみたものの…。結果は無音・無音・無音!カメラがコードをうまく枠内に捕らえているか見えないとまったくわからないことがわかっただけでした。

写真3
音声コードはいったいどのあたりにあるのかしら?いろいろやっていたらバッテリー残量切れでシステムシャットダウン!と言われちゃいました。



 次は、見えなくても一人暮らしをがんばっている全国の友人への電話調査の開始。「オーイ、どないやってマイナンバー、読み取った?」。多くの友人はムツボシくん同様困っていました。そこに耳寄りな情報が届きました。S県H市では役場の職員が家まで訪ね読み上げてくれるサービスをしているらしいと。また希望すれば点字にして届けてくれるサービスもしていると。さすが故郷・H市。さっそく、この情報を青葉区に伝えてみたのであります。わが青葉区も捨てたものではありません。届きました!届きました!私のマイナンバーが点字で届きました。

写真4
点訳の苦心の跡がやたら残る私の点字マイナンバー通知。それにしても、点字シール、真っ直ぐ貼るくらいの気遣いはなかったのかな…?




 この点字によるマイナンバー通知、分かち書きが一切ないことは許せるのですが、どうしても許せないのが、肝心要の12桁のナンバーが読めないのであります。12桁は3ブロックに分けて書いてありました。「**** ****」とここまで8桁、これはなんとか読めました。さて、あと残るは4桁。のはずなのですが、この写真を見てください。うーん、どう見ても6桁あるように読めちゃいます。

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最後の4桁のはずがなぜか6桁。切り貼りのあともイタイタしい点字がかわいそう!



 結論、というわけで、私のマイナンバーは14桁なのであります。一般国民は12桁、法人は11桁、すると14桁のムツボシくんは宇宙人? もしかして、あの元総理も14桁? となるとスターウォーズも見に行かなきゃな、なんて考えているムツボシくんでありました。

 このマイナンバー、総理府など、やたら「同居の家族以外に見せてはいけません」などと強調しすぎのように思います。所詮は自分以外の人に伝えるナンバーなんです。必要な人には後日点字でも通知しますと気軽に対応してくれたらよいだけのことなんです。ムツボシくんなんかは電話で伝えてくれたってかまわないんですが、なんかボタンを掛け違った個人情報の扱い方ですね。というわけで、さすが日本の財務省、宇宙人からも国税を徴収する準備を始めたとは、ある意味お見事。笑点の黄色の人も気をつけてね。

2015年12月11日

ムツボシくんが見た「仙台市営地下鉄東西線」のマルとバツ

 ハーイ!ムツボシくんです。12月6日(日曜日)は、おそらく日本で最後の地下鉄新路線になるのではと言われている仙台市営地下鉄東西線の開通日でした。いやいや、おめでたい日、仙台の冬の大イルミネーション「光のページェント」も、この日に合わせて例年よりも早く点灯したのであります。

 でも、わが宮城教育大学とその敷地に住むムツボシくんとしては手放しでは開通を祝ってはおられません。なんせ、JR仙台駅と大学を結ぶ市バスが見事にすべてなくなっちゃったのです。これまでは少ない時間帯でも20分には1本あったバス、朝夕は5分から10分おきに走っていたバスがです。

 今回開通した新路線・東西線で近くにちゃんと「青葉山駅」ができたからもうバスはいいでしょ、ってことです。ところがです。大学からこの青葉山駅、ムツボシくんは15分以上もかけて歩かないといけなくなったのでした。

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青葉山駅に向かってとぼとぼと…。公式には7分というけれど、私と白杖の3本足では約15分かかっちゃう!



 嘆いていてもしかたありません。全盲の私にとっては頭の中のメンタルな地図をすべて再構築しないと一人歩きができません。開通の日、さっそく頭の中に新しい地図を作るべくムツボシくんは歩行訓練を受けたのでありました。まずは、一日乗車券をゲット!これまでの地下鉄南北線と今回の新東西線との新関係図、そして地下鉄とJRとの新乗り換え図といった私のメンタルマップの書き換え作業のさあ開始です。

写真2
まずは地下鉄仙台駅東改札から攻略。青葉山駅で降りるには4番線2両目後ろのドアが最適のようです。




 次は、青葉山駅から乗って仙台駅に着いた時のJR在来線や新幹線への乗り換え練習です。さあ、電車を降りたらエスカレータを見つけて地下鉄の仙台東改札を出てエレベータを探さないといけません。

写真3
JRに乗り換えるには、2両目の真中の扉から降りるとすぐに地下鉄の改札を出るためのエスカレータがあった。



写真4
地下鉄から抜けてここを右に曲がるとエレベータがあるはず。2FがJR在来線、3Fが新幹線改札に近いようだ。




 こうして、実際に何回か歩いては一つ一つ頭に地図を入れていくこと約5時間、この日の歩行訓練をムツボシくんはクタクタになって終えたのでありました。

 さてさて、この新路線・東西線を視覚障害者の立場から見たらマルかバツかであります。最初は「これはマルだ」と言えるところを2つ紹介しましょう。

 【○1】ホームに安心して歩ける線状(誘導用)点字ブロックが敷かれた点は大きなマルだ!

 次の写真2枚を比べてみてください。左が従来の地下鉄南北線のホーム。JRと同様線路側には点状(警告用)点字ブロックしか敷かれていません。右が今回の東西線、ホームドアから少し離れて誘導用の線状ブロックが私たちのホーム上での歩みを確保してくれているのです。

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ホーム上に安心して歩ける誘導用の線状ブロックのない南北線(左)と、ホーム上に安心して歩ける線状ブロックが敷かれた東西線(右)。




 【○2】ホームと電車との隙間がなくなった!

 もう一つの「マル」はこれです。ホームの縁に特殊なゴムを張り、可能な限り電車との隙間をなくそうとする工夫がされています。

写真6
これなら足を隙間に落とすことはない。杖の先だって入らない。池袋駅でこの隙間に片足を落としたことのあるムツボシくんもこれなら安心!



 次に、市交通局には耳が痛いかもしれませんが、残念ながら「バツ」にも触れざるを得ません。

 【×1】エレベータでは、点字の案内と音声の案内が一致していないのだ!

 私の最寄り駅・青葉山駅はホーム階が地下6階という深い駅です。改札階は地下1階となっておりました。エレベータの音声案内は、ホーム階につくと「地下6階です」と言い、また改札階に着くと「地下1階」と言うのです。でも、点字は「ホーム階」とか「改札階」と書かれています。統一してほしいところです。

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エレベータのボタンには「改札階」と点字で案内があるが、音声は「地下1階です」と流れ違和感が残る。



 【×2】テスリで誘導したいのか点字ブロックで案内したいのか?なんでこうなるのだ!

 ここは階段の踊り場。テスリには点字による行き先案内がちゃんとあり安心です。だからテスリを持ちながら階段の端付近をリズミカルに降りていたら、あれれ、踊り場ではなんで点字ブロックが踊り場中央に敷かれているのでしょう。

写真8
この踊り場ではテスリ側にもっと近づけて点字ブロック敷いたらなぜいけなかったのかしら?



【×3】あいかわらずお粗末な視覚障害者のトイレ誘導方式!

 次の写真をみてください。トイレに続く点字ブロックをたどるとどうなるか?なんと壁に案内されるのです。その壁には「トイレ案内図」という触れてわかる?触知図があるからです。これで誘導は終わりです。で、どこに行けば用が足せるの?となりますよね。この案内図をじっくり読んで頭に覚えて、覚えられたら、さぁその通り後は一人でたどり着いてくださいというのが現在日本で多く行われているトイレ誘導方式なのです。こんなバカげた誘導はありません。でも、この方式が国のどこかのガイドラインに正式に書かれているようなのです。誰がこんなルール決めたのでしょうね。いち早く用を足したい視覚障害者を触知図の前に案内してどうするのでしょう。「この図をまずはじっくり読み取れ!そうでないとこのトイレ、使用してはならず!」とでもいうのでしょうか。どうして私が提唱してきたようにテスリをうまく引き回してのトイレ内まで案内する方式(テスリワーク)をとらないのでしょう。

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新しい建築物なのに未だに採用されているこのトイレ案内方式、なぜ誰も疑問感じないのか…?(青葉通一番町駅)



 いろいろと書いてきましたが、いずれにしろ今となればムツボシくんも慣れるしかありません。5時間かけて頭に入れた地図、忘れてはまた覚え直し…の繰り返しをこの先何回すればいいでしょう。正直還暦を前にして頭の地図の新規作成、なかなか辛いものがありますね。

〔参考〕 視覚障害者のトイレ案内方式(テスリワーク)については、拙稿、「これが私たちの目指してきた点字のある風景なのか?」、月刊誌『視覚障害―その研究と情報』第294号(視覚障害者支援総合センター発行、2012年11月)に詳しい。
2015年10月26日

視覚障害のみなさんに‘笑いをお届け’ムツボシくんマンザイ炸裂!

 ハーイ!ムツボシくんです。またまたやっちゃいました、ザ・マンザイです。南天とおる・たろうがシルバーセンターの舞台に出演!今回は仙台市視覚障害者福祉協会主催の第52回文化祭によばれてのステージ…。伝統あるあこがれのステージなのであります。今年の私のお相手の学生Fくんにはバイトを休んでもらっての登場!今回のネタは春の大学新歓マンザイをアレンジしたもの、ほぼ春のネタと同じなのではありますが、受ける・受ける…、もう、とっても気分よくさせていただけました。

 だって、いつも学生に聞かせている会場は居酒屋です。しかも確実に飲み放題付き。学生たちがちゃんと聞いているのは手元のコップが満たされている間だけ。私たちのマンザイの最中もかまわずに、鳴るわ鳴るわ、ピンポーン・ピンポーン!「私、カシオレ」とか「いも焼酎のお湯割2杯追加」の声。それに比べたら今回は夢のような会場、約100名の観客がじっくり逃げもせずに耳を傾けてくれたのでありました。

 実は、マンザイの前は、ムツボシくんのミニ講演もあったのでありました。与えられたテーマは「思い切って旅に出かけてみませんか」、これです。全盲の人だって、旅の楽しみを追求してみませんかとみなさんに呼びかけたのでした。

 お話はここまで。漫談みたいなミニ講演とマンザイ、音源をアップしておきますね。ぜひ聴いてみてください。


写真1
見えなくても旅を楽しむポイントを語るムツボシくん

 →ムツボシくんの漫談?「思い切って旅に出かけてみませんか」を聴く


写真2
今回の漫才、最高の出来?!(Fくんが手に持っているのはなに?)

 →第52回仙台視障協文化祭マンザイを聴く
2015年9月3日

言葉と触覚で宇宙構造のイメージがどこまで頭に思い描けるか?国立天文台訪問

 ハーイ!ムツボシくんです。先日、東京出張にあわせて訪れたのがこちら国立天文台でした。担当のKさんより、「天文台における視覚障害者も楽しめる音声ガイドの作り方」というテーマで意見を求められていたのであります。

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出迎えてくださったみなさんと国の有形文化財の門柱前でパチリ!



 このテーマは荷が重い。だってムツボシくんには、宇宙のイメージは太陽系惑星が円盤状に並んでいるというイメージしかないのです。内心、「気の利いたコメントなんてできないよ〜トホホホッ」と思っていたら心強いFさんの登場で俄然ムツボシくんの気持ちが和らぎました。このFさん、ユニバーサルデザイン天文研究会やユニバーサル天文教育の分野で草分け的に研究・実践を重ねてこられた視覚障害者の大先輩です。こちら国立天文台で真っ先に手渡された台内案内図入りの点字パンフレットの監修もされた方でもあります。

 まあ、難しい話はFさんに任せて、ムツボシくんはド素人のにぶりかけた感性から、まずは見学!

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日本最大65cm屈折望遠鏡(1928年、現在は現役引退)


写真3
1938年から60年間、スケッチによる太陽の黒点測定を続けた望遠鏡。スケッチ台に手を当てると熱の変化から日食だって感じ取れるとFさん。


 さすが日本の天文学の歩みがよくわかる施設が並んでいます。ただ残念なのは、担当のKさんの話を聞いていても素人のムツボシくんには言葉だけではよくわからないのです。つまり、望遠鏡の種類を説明してくださってはいるのですが、肝心の天文学に使うような望遠鏡自体がイメージできないのです。たぶんおもちゃの望遠鏡をでっかくしたものでしょうが、反射望遠鏡はまったく違うお椀型?、宇宙に浮かぶものもあるといいます。触ってみたいものです。観測の時はドームの屋根が開くというのですが、その屋根の開き方が第一もうイメージできないじゃありませんか。「桃太郎が桃を真っ二つに割って飛び出してくるイメージですか」と尋ねてみましたが、これがそうではなかったのであります。自由に触れる模型が何としてでもほしいところです。

 私も含めて見えない人たちの中で「宇宙」は意外と人気のあるテーマなのです。見えないからこそでしょうか、やたら宇宙と聞けばイメージをかきたてられます。でも、私の場合、録音図書などを聴いていても必ず本の半ばでイメージがついていけなくなってしまうのです。「太陽系」まではイメージできてもそこから先がもうストップしちゃうという現象が起きちゃいます。私だけかもしれませんね。おそらく、太陽系を超える世界についての模型などによる学習をしてきていないからではないかと思います。今回はじめて、銀河系の模型を触って私の宇宙イメージも半歩ですが太陽系から外に広げることができました。

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こんな簡単な模型でもずいぶん銀河系イメージの理解はすすみました。銀河系も円盤状だったんだ!渦巻きの構造もわかる銀河系模型が次は触りたいものです。



 担当のKさんの話。「今の天文学はもはや目で見える光のみを頼りにする時代ではありません。電波などの見えない光(電磁波)もとらえて研究するのです」といわれた言葉はかなり印象的でした。えっ?じゃあ、目が見えない私たちと天文学、もしかして近づいているのでは…と思えるではありませんか。「私の宇宙観が広がらないのはどんなイメージが持てていないからなんだ?」「このキーワードを知らないから理解が進まず、それがもつイメージの核を作るためのこの模型を頭に入れていないからこれまでわからなかったんだ!」そこに気づかせてくれる天文台であってほしいと願っています。これからの天文学からの私たちへの歩み寄りに大いに期待するムツボシくんでありました。

●参考サイト:国立天文台(NAOJ)
 http://www.nao.ac.jp/
2015年8月26日

点字は読めなくても遊べるトランプをムツボシくんが開発!!

 ハーイ!ムツボシくんです。今回は、まず、こちらの新聞記事をご覧ください。ムツボシくんが開発しているユニバーサルデザイン・トランプ(UDトランプ)のお話です。

●視覚障害者のトランプ開発/特殊インクで工夫(河北新報オンライン、2015.8.18)
 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201508/20150818_13069.html

写真1
河北新報8月18日付 夕刊3面の記事(写真クリックで拡大)



 これまでトランプが見えない方はどうしていたのでしょうか。そうです。次の写真のように、トランプの左上と右下に点字が書かれたトランプを使っていたのです。
写真2
従来の点字付きトランプ(ハートの9の写真)、「H9」という点字が左上と右下に書かれている。(写真クリックで拡大)



 点字が読める方ならこれで何らハンディなくトランプゲームが自力で楽しめます。もちろん、一緒にゲームしている人は場に出すカードを声に出すといった「読み上げ支援」は欠かせません。

 でも、点字が読めない視覚障害の方はどうするのでしょう。カードに目を近づけても、そのマークや数字が識別できない視力の方はどうしたらいいのでしょう。

 そこで、登場するのが今回開発している「UDトランプ」なのです。次の写真を拡大して見てください。透明なインクを吹き付けることでマークが触れてわかる仕組みになっています。またハートは赤、ダイヤは黄色、スペードは黒、クローバは青というふうにマークは色分けで表しました。

写真3
4種のエースのカード。盛り上がったインクによるマークの識別も触れてすぐわかる。カードの色がかろうじて見える人ならマークは見えなくてもゲームはできる。(写真クリックで拡大)



 開発に際して、次の点を工夫してみました。

 (1)通常のトランプは無理だけど、大きめの数字や色だったら見える人にも使いやすい工夫をすること

 (2)点字が読めない人の触知覚でも、触れればわかるマークとなるようにデザインを工夫すること。

 (3)慣れてきたら、両手でトランプを扇子のように持ったまま親指でも触れてわかるマークであるように工夫すること。

 (4)触れるマークの数でトランプの1〜13を表していること。ただし、マークがいくつあるかを触れて数えるのは時間がかかるだけです。そこで、「5」を表すために左右に1本線が、「10」を表すためには左右に二重線が浮き上がっています。つまり、「9」のカードは、左右に5を示す1本線+中央部に4つのマーク=9、と読むように工夫したこと。「13」のカードは、左右に10を示す二重線+中央部に3つのマーク=13、となります。

写真4
スペードで「5・9・10・13」の4枚のカードはこんなふうになっています。(写真クリックで拡大)

 このインクとその吹きつけの優れた技術は兵神装備株式会社の協力を得て開発しているところです。まだまだ、色使いやコントラストのための工夫などきめ細かな調整が必要ですが、このUDトランプについては宮城教育大学と兵神装備株式会社で共同して特許出願をすでに済ませております。今回、記事にしていただいたように仙台では宮城県視覚障害者情報センターにて、わが故郷・彦根では滋賀県立視覚障害者センターにて、それぞれ中途視覚障害の方々にお集まりいただき何度もゲーム大会を開催させていただいております。ほんの15分くらいの触る練習時間があれば、点字が読めない方でもこのトランプならすぐに遊べることがわかっています。そろそろ商品化に進みたいのですが、それほど広い市場でないことは確かです。それでも商品化に向けて力を貸してくださる方、おられましたらぜひご一報くださいませ。

●兵神装備株式会社
 http://www.heishin.jp/
2015年7月21日

「日本信号株式会社」様への手紙

 ハーイ!ムツボシくんです。まずは、私と日本信号さんとの出会い、そして、このお手紙に至ったこの間の経緯を簡単にご紹介しましょう。

 きっかけは仙台市営地下鉄の券売機。この券売機に付けられている点字の間違いについて、地下鉄の駅員さんにお知らせしたのが始まりといえば始まりでした。数か月後、券売機や精算機の点字表記の誤記がなかなか訂正されないので仙台市交通局に電話、そして、「なんでこんな誤記が生じているのですか」と尋ねて、教えてもらったのが、日本信号さんとの出会いでした。つまり、券売機や精算機はすべて日本信号さんの製品。当然、そこに記されている点字も日本信号さんが作成したもの、その上で納品されたものだったのでした。

写真1
間違いだらけの点字サインの一例(地下鉄精算機、点字で助詞に「は」は用いない。また、「挿入後に」の点訳部分の誤記については言語道断!)




 仙台市視覚障害者福祉協会からもこの問題には機敏な対応をいただき、さっそく交通局との話し合いを経た上で、私たちは交通局とともに券売機をはじめとする地下鉄管轄内にあるすべての点字サイン類の全駅点検にとりかかったのでした。

 7月8日、全駅点検のスタート。最初の駅「五橋駅」にムツボシくんも関係者とともに集まりました。この日は、日本信号さんも参加、さっそく、ひどい誤記のまま放置されている精算機から点検は始まったのでした。

 日本信号さんがこの点検に参加していたのにはわけがあったのです。交通局から点字の誤記について指摘を受けていた日本信号さんは、新しく張り付けるための訂正した点字サインを持参してきていたのでした。手渡された訂正された点字を読んでみて、素早い対応に感謝といいかけたムツボシくん。その口が固まりました。なんということでしょう。直してきたはずのこの新しい点字サインに、またしても点字表記の間違いがあったのでした。

写真2
日本信号さんが付けた点字の他にもこの日は五橋駅すべての点字サインをチェック、仙視協会長とともに手摺りも点検。


「日本信号」様への手紙

 あなた様はなぜ点字のいろはも知らないのに製品に点字を付けて納品するのですか。誤記かどうかも判断できないあなた様がなぜ点字を製品に付けるのですか。

 あなた様がここまで点字を付けたがるのは付加価値を高めたいからですか。それとも社会貢献を惜しまない企業イメージのためなのですか。

 あなた様にとっては、「せっかくサービスのつもりで無料で点字も付けてあげているのになぜ怒られなきゃいけないんですか」と反論されるのでしょうね。では、お伺いします。製品に刻印されている漢字などの文字に誤記があっても、「このラベルは無料サービスなんです。製品の性能とは関係ありませんので欠陥製品ではありません。」と言い切るのですか。

 このような御社の姿勢は、あなた様のホームページを拝見すればよくわかります。漢字の間違いなんて気にもせずに堂々と自動券売機の性能を掲げていますものね。

 「効果投入口の角度を上げるとともに投入口を拡大し、効果こぼれ帽子に配慮します。」(日本信号株式会社/製品情報/自動券売機の特徴ページより、2015年7月19日参照)

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 効き目の意味の「効果」じゃなくてコインの「硬貨」ですよね。あのね、「こぼれ帽子」ですって…、それってどんなキャップなんですか?これをかぶってプレーしたらエラー続出だったりして…

 http://www.signal.co.jp/afc/japan03_1.html
 (7月23日に訂正されたことを確認)

 あなた様はこの日、私が「なんで間違った点字をまた持ってきたのですか」と聞いたら、「だから、このようにご指摘いただいて訂正をしたいと考えています」とおっしゃられましたね。日本信号という会社は、ユーザーにまずは納品してから、不具合をその都度直していくという製品開発姿勢でおられることがよくわかりました。それとも、この点字表示の部分は製品の一部ではないとおっしゃりたかったのでしょうか。

 あなた様は、この日、こうもおっしゃいましたね。点字表示については日本点字図書館様にご意見をいただいていると…。日本点字図書館の名誉にも関わりますので、私はさっそく日本点字図書館の関係者に尋ねてみました。「これまで日本信号さんとは点字監修などでお付き合いはございません」とのお返事。耳を疑いました。御社はこのようなウソまでついて何がしたかったのでしょう。こんなウソでもつかないと、日本信号から点字を取り上げられるとでも言いたかったのでしょうか。

 あなた様に点字の表示に関する仕事を任せておけないからこのような問題が出ているのです。だから、この手紙を公開しているのです。点字表示の仕事はその方面の専門の所に任せたらいいのではありませんか。点字表示をつけたからといっていくらかの代金上乗せが製品にあるのですか。おそらくこの部分は無料サービスなんでしょう。

 でも、無料サービスとしてもあなた様がこの間してこられたことは日本の企業としていかがなものなんでしょう。卑近な例え話で恐縮です。町で私がお弁当を買ったとします。無料サービスでもらったお手拭きにカビが生えていて使えません。そこでお手拭きの交換を求めた私にお弁当屋さんは謝罪しつつ別の物を手渡してくれました。ところがそのお手拭きにもカビがあるではありませんか。ここでのお弁当屋さんは日本信号さんとなります。そして、お手拭きが点字を付けるという仕事です。消費者の私が「このお手拭きを作ったところはどこですか」「もう、そんなところのお手拭きをサービスでつけなくてもいいんじゃありませんか」「別のしっかりしたお手拭きを作っているところは他にもあるでしょう」とお弁当屋さんに考え直してほしいというのはいきすぎたクレイムでしょうか。日本信号さん、しかもあなた様の場合は、このカビのあるお手拭きを作っていたのもあなた様ご自身だったではありませんか。いつまでカビの生えたお手拭き付きでお弁当を販売するのですか。仙台市の交通局も消費者側です。いつまで私たちの税金を使ってこのような企業と付き合うのですか。なぜ、「利用してもらってから間違いを指摘していただき、その後で正しい点字にします」といった姿勢の企業に点字サインまでお願いし続けるのですか。点字を読む人たちをバカにするのも大概にしてほしいものです。間違った点字かどうかも判断できない製品開発者が点字に関する仕事をすること自体あり得ないことくらいなぜわからないのでしょう。点字なんて一覧表をみて膨らませておけばいいんでしょ、と言わんばかりの点字文化への冒涜です。「点字を付けるくらいは無料でさせてもらいます」という軽い御社の姿勢は「間違っていたら後で言ってね、直すから」といういかにも点字使用者への理解めいた姿勢を装いつつも、実は「点字を付けただけでもありがたいと思え」と私には聞こえます。発注側の交通局さんにもお伺いします。「見えない人も操作できること」も入札条件としていたのでしょう。それとも、点字を付けるのは点訳ボランティアに頼めばいい、だから、日本信号さんという点訳ボランティアに頼んだだけですと言われるのでしょうか。仮にそうだとしたら、交通局さん、なんで精算機自体も財政環境のきびしい仙台市のためにボランティアとして無料で提供してねと日本信号さんにお願いしないのですか。日本の点字はすでに125年の歴史を刻んでいるのです。点字のサインの内容を要領よくまとめ、張り付ける位置などを読み手の立場に立って考えることは誰にでもできるものではないのです。点字表記の専門知識はもちろんですが、ユーザーの立場からの「調査を踏まえた判断」を求められる高度に専門的な一つの“仕事”なのです。点字のことも、点字を指で読む人たちの文化も知らない企業が“おまけ”でできる仕事ではないのです。どうしても点字に関わりたいと言われるのなら、日本信号さん、点字の文化に詳しい視覚障害者をどうか雇用してください。

 最後に、一部は、発注者の交通局へのお手紙ともなってしまったようです。ここまでの事実確認において私が間違っているようでしたら、厳しくご指摘ください。ご意見・ご指摘についてはこちらまでメールにてお願いします。

●参考サイト:日本信号株式会社
 http://www.signal.co.jp/
2015年6月28日

視覚障害者からみた「共生社会」って、何と何が共生するのでしょ?!

 ハーイ!ムツボシくんです。6月20日、仙台市の中央図書館とも言える「メディアテーク」にて、「触る文化としての点字」というお話をさせていただきました。

 その内容はといいますと、「洗濯機などの家電にせっかくついている点字に何で誤記があるの?」、「仙台市営地下鉄にもアルアルこんな点字の間違い」、「この点字ブロックの敷き方は誰が考えたの?」などの話でした。

 ここでは、2つだけ紹介しておきましょう。1つは、JR仙台駅にある信じがたいこの点字サインです。何と天地が逆さまに張られているではありませんか。

写真1
新幹線13番ホームへの上り南側階段手摺り。上下逆さまに点字が張られている。これじゃ読めないJR東日本さん…



 もう1つは、消火栓の鉄のフタのために切断されてしまっている点字ブロックです。ちょっと考えたら途切れない敷き方もあったと思うのですが、何でこのまま放置されているのでしょう。

写真2
青葉通と東五番丁通の交差点西南角の横断歩道に誘導する点字ブロック。広い車道をこれから渡ろうとしているのに、横断歩道に向かっている途中で切れたらドキドキするではありませんか。



 これらのお話でみなさんと共有したかったのは、「何でこんな間違いが起きているのか」、「何でそのままいつまでも放置されているのか」、「間違いだらけの点字サインや変な点字ブロックの敷設が起きないためには、私たち視覚障害者側とみなさん側とでどうしていったらいいのか」という点でした。

 この記事を読まれているみなさんの地域にも大なり小なりこのような類似事象はあるのではと思います。これらの原因の一つに、私たち視覚障害者が町づくりや商品開発に対して、これまであまりにも見える人まかせになっていたという点があるように感じます。それは、視覚障害者がこれまで町づくりや商品開発の現場に参加させてはもらえなかったという裏面もあるのですが。でも、時代は共生社会に向けて確実に動いています。お互いに声を出し合い、分かり合いながらの町づくりや商品開発がこれからは進むことを期待しています。

写真3

写真4
せんだいメディアテークでえらそうにしゃべっているムツボシくん



 さて、ようやく本題に入ります。この声高に唱えられている「共生社会」ですが、いったい何と何が共生することを目指しているのでしょう。一般には、障害のある人とない人の共生という意味でしょう。でも、これではどうしても、障害のある人の劣っている能力からくる不自由さに対して、健常者側が配慮してあげる社会を目指しているようにしか思えないのは私だけでしょうか。そこで、何と何が共生する社会とみるのかですが、私は次のように考えたいのです。劣ってはいない者と劣っている者との共生とは考えずに、見る文化をもつ者と触る文化をもつ者との共生と考えるのです。広瀬浩二郎さん(国立民族学博物館准教授)はこの見る文化をもつ人たち、つまり健常者といわれてきた人たちに「見常者」と漢字をあてています。そうすると、私たちは「触常者」となります。

 見る文化と触る文化が互いに歩み寄る社会が視覚障害者からみた共生社会なのです。

 「歩み寄る」とはどういうことでしょう。私たち触る文化に生きる者は、見る文化の人たちに対してこれまでたくさんの物事で歩み寄っています。漢字の知識も必要なら筆順だって身につけてきました。触らないと本当は何も分からないにもかかわらず「触っちゃダメ」とあちこちで言われてはガマンしてきました。大好きなショートケーキだってうまくフォークが使えない私、見る文化では汚く食べたら嫌われるはず、だから食べたくても人前ではガマンしています(詳しくは「どないなってんねん、ショートケーキ」を参照)。では、見る文化の人たちは、触る文化の私たちにどんな歩み寄りをしてくださっているのでしょうか。それが先にあげた2枚の写真のようなことなのでしょうか。点字サインをつけましたよ、点字ブロックを敷きましたよってことなのでしょうか。その気持ちはありがたいのですが、共生社会は異なる文化の歩み寄りによって実現するのです。互いの文化を理解してもいない歩み寄りはあり得ません。日本語の点字は120年以上の、点字ブロックだって50年以上も活用し続けてきた歴史と文化が私たち触常者にはあるのです。どうしたら触りやすい、触って理解しやすい、触れて歩きやすいのか、これら触る文化にぜひ歩み寄ってください。そうして互いの文化の歩み寄り方を互いにどんどん更新していく社会、それが結果的に共生社会を生み出していくと今は考えています。

●「触れる文化としての点字」/せんだいメディアテークダイアリー
 http://www.smt.jp/diary/
2015年6月10日

6月6日はシシャモ解禁の日これがシシャモ字だ!

 ハーイ!ムツボシくんです。みなさんはこのニュース、どれほどの興味をもって聞かれましたか。「食事コレステロール、もう気にしなくていい?‘血中濃度と無関係’厚労省は抑制目標値撤廃」

●産経ニュース(2015年4月29日付け)
 http://www.sankei.com/premium/news/150429/prm1504290012-n1.html

 えっ?ちょっと待てちょっと待て、厚労省さん!それは聞き捨てならんじゃあーりませんか。ニュースが伝えているところはこうです。

 これまで、取りすぎると動脈硬化などを招くとして悪者扱いされてきたコレステロールに対して、まず、4月に、厚労省が「食事摂取基準」を5年ぶりに改訂。その中で、コレステロールの1日当たりの摂取量を「制限なし」としたのです。これまでは、18歳以上で男性750mg未満、女性600mg未満と制限していましたが、この制限には科学的根拠がなかったとあっさり白状(?)。5月には、日本動脈硬化学会も「食事で体内のコレステロール値は大きく変わらない」とこれまた白状(?)したのです。

 あのね、忘れもしないあの若き日、健康診断結果に愕然とし医者通いを続けたこれまでの日々。「玉子は1日1個までにしてますよね」とか「居酒屋で明太子とか子持ちシシャモなんて注文してませんよね」なんて言われてきたこの20年(おっと、25年だったかな、おーい、忘れてるじゃん)、ムツボシくんが脅かされ続けてきたこの20年を厚労省さん、どうしてくれる。健気なムツボシくんは、ずっとこの間、大好きだった子持ちシシャモは、居酒屋でもネットスーパーでも見て見ぬ振りをしてきたのですぞ!レモンをギュッとしぼっていただくあの焼きたてシシャモを我慢してきたのですぞ!

 というわけで、6月6日、ちょうど「ムツボシくんの点字の部屋」開設記念日にあわせ、この日をムツボシくんは「シシャモ解禁の日」としたのでありました。

写真
シシャモ解禁ひとりパーティ。シシャモで人文字?食べてもいいんだから「OK」と書いてみました。



 翌日のことです。人間ドックを頼んでいた東北公済病院健康医学センターから電話がかかってきました。「長尾さん、予約をいただいていた脳ドックですが本病院では受けてもらえなくなりました」ですって…。病院の事務員の話を聞くとこうです。「‘階段があるので…’、‘検査中に体の向きを変えてもらわないといけないので…’、長尾さんには無理だと判断しました。これは検査技師が伝えてきたのです」と。目が見えないと階段は上り下りできないそうです。目が見えない人にMRIですか、右向いてくださいなどの指示は伝えようがないようです。医療関係者ですらのこの程度の障害者理解、これまで自分の病院でやってきた自己のスタイルは絶対に変えたくないのでしょうか、ちょっと工夫したら対応のしかたにも気づくのに…。「どんな配慮をしたら安全に受けてもらえますか」なんて私と相談する気もないようでした。コレステロールの話でも、これまで「数値が高い人はむしろ長生き」と主張してきた日本脂質栄養学会のデータに耳を傾けてこなかったのが厚労省や日本動脈硬化学会です。病院も官僚も学者もいずれも権威がかたくなな内向きの牙城を築いてしまうのでしょうか。

 シシャモ・ショックにこの障害者の検査拒否、なんとも為体な日本の医療現場を垣間見たという話でありました。

●東北公済病院健康医学センター(宮城県仙台市)
 http://www.tohokukosai.com/tkhptest/kensin/index.html
●日本人の食事摂取基準2015年版(厚生労働省)
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/syokuji_kijyun.html
2015年5月7日

これじゃわかんないぞ、大沢くん!ミュージアムの音声ガイド…、ヒトゴトにしないでヒトコト言わせて

 ハーイ!ムツボシくんです。みなさんは、美術館や博物館などに行かれたときに展示作品を音声ガイドしてくれる機器を借りられたことはあるでしょうか。全盲の私は必ず音声ガイドが準備してある特別展などではお借りするようにしています。そして、今回、訪れたのが東北歴史博物館の「医は仁術」です。この特別展がようやく宮城にもやってきたのでした。

写真1
特別展「医は仁術」の会場、東北歴史博物館(宮城県多賀城市)



 さて、お話ししたいのはその内容ではなく、この音声ガイドについてであります。こちらを見てください。今回520円と交換に手渡された機器はテンキーのないタッチペン、一緒に渡された音声ガイドシートの数字に自分でタッチしてその番号の案内を聴いてくださいという代物でありました。もちろんこのシートには点字どころか凸点もなく、闇鍋状態でタッチペンを動かすと何番の案内やら、ごちゃごちゃとは聞こえてきます。でも、まったく実用的ではありません。

写真2
これが音声ガイドタッチペンと音声ガイドシートだ



 まあ、同伴いただいたボランティアの方にタッチペン式音声ガイドは操作をお願いすることとして、いざ会場へ。さっそく音声ガイド2番の展示物があるようです。では、テレビドラマ『JIN-仁-』でおなじみの大沢たかおによるナレーションを聴いてみましょう。この場所のテーマは「病は、いつの時代も身分の貴賤なく、人々を襲う」です。目の前には、寛永日本地図(屏風)や江戸時代の錦絵4点が展示されています。「医は仁術」の公式ホームページにも載せられている作品です。

写真3
音声ガイド2番の場所に展示されていた作品はこちら。公式ホームページから…

 [参考サイト]特別展 医は仁術(展示内容)
 http://ihajin.jp/naiyo2.html



 この作品の前で大沢たかおのナレーションはこうです。「当時の錦絵には病を流行らす悪神やそれを退治してくれる守護神が描かれ、養生としての食べ物が書いてあります。神仏に祈り、お守りやまじないを信じることは遅れた時代のことかもしれませんが、‘病は気から’というように体の治療だけではなく心の救済にはとても重要だったのです。」と…。

 うーん、これじゃわかんないぞ、大沢くん。まったく具体的な作品名が出てきていないじゃありませんか。私は特別展に概要を聴きにきたのではありません。具体的な作品の紹介がほしいのです。同伴ボランティアによりますと、錦絵の一つ「開運麻疹疫病神除之傳」にはこんな子ども向けの解説文も添えてあるといいます。

 「麻疹(はしか)の神様がはやり病を防ぐ神様とされていた牛頭天皇前にひざまずいて「病気を流行らせません」と約束しながら手形を押しているよ」。この子ども向けの文ですらよく作品が伝わってくるではありませんか。もちろん大人向けの解説も書かれているといいます。せっかく520円で音声ガイドを借りているのです。具体的な作品解説をしてくれなきゃ、それって詐欺?じゃありませんか。だって、当時の事情の概要だったらさきほどの解説ホームページで十分なのです。

 で、ムツボシくんのまとめ…!ミュージアムの音声ガイドですが、機器自体、操作しにくくなっていくのも問題ですが、なによりナレーションの文章が作品解説となっていないことが大問題です。これはどうみても、見える人用に書かれたナレーション文なのであります。会場の作品に付けられている解説文とあわせてお楽しみくださいといったナレーションなのであります。

 ホームページを見ると、大英博物館の音声ガイドはマルチメディアガイドとなっており、スマートホンみたいな端末のようです。種類も多く、見える人のためには英語を含めて10の言語版があるのはもとより、子ども用やイギリス手話版、そして視覚障害者向け音声解説版があります。イギリス手話版と視覚障害者版は無料となっています。このように、見える人用のものと、見えない人のためのものを別に準備しているのです。日本でも見えない人のためのものを別個に準備しろとはいいませんが、せっかく音声ガイドを有料で準備するのなら、もう少し視覚障害者向けのナレーション文を意識してくれてもいいのでは…と思うばかりです。こんなことも視覚障害のある当事者が声を出していかないと世間は気づいてもくれないのだということが身に染みた1日でありました。

写真4
お手上げムツボシくん、操作もできないし、内容もつまんない音声ガイド


[参考サイト]
TBC東北放送|特別展 医は仁術
http://www.tbc-sendai.co.jp/tc_event/special/jinjutsu2015/index.html
東北歴史博物館
http://www.thm.pref.miyagi.jp/index.php?from=enter
British Museum - Multimedia Guide
http://www.britishmuseum.org/visiting/planning_your_visit/multimedia_guide.aspx
2015年4月30日

ムツボシくん、初のモデルにチャレンジ! 「障害のある方のための旅行サポートブックみやぎ」が完成

 ハーイ!ムツボシくんです。まずはこちらの写真をご覧あれ…。宮城県リハビリテーション支援センターの企画で作成した「障害のある方・高齢の方とそのご家族のための旅行サポートブックみやぎ」の表紙です。ロボコンに抱きついているのがムツボシくん…。

写真1
 「石ノ森萬画館に続くマンガロードにて、ムツボシくんがロボコンをじっくり触察中!旅のガイドの表紙にこれってふさわしかったのかな…?


さて、気になるその中身ですが、障害のある方や高齢の方のためのこの旅行サポ
ートブック。宮城県リハビリテーション支援センターのホームページに公開されてい
ます。

●参考サイト: 障害のある方・高齢の方とそのご家族のための旅行サポートブック
みやぎhttp://www.pref.miyagi.jp/soshiki/rehabili/supportbook-0.html


 今回は車いす利用者と全盲の視覚障害者に焦点をあてた構成となっています。その全盲モデルにムツボシくんが大バッテキとあいなったという話なのであります。

 見えなくっても旅って楽しいよというメッセージを伝えるページはこんな感じです。「石巻で石ノ森ワールド出会い旅。超有名マンガのキャラクターってこんな姿だったんだ」、「伊達政宗の思いが詰まった洋式帆船を訪ねて。慶長遣欧使節の復元船サン・ファン・バウティスタってこんな船だったんだ」、「聴いて、触れて楽しむ日本三景松島!歩いて・食べて・温泉でくつろぐ松島の旅。全盲の人が温泉に泊まったら、どうやって露天風呂や展望大浴場を楽しむの?」…

写真2
見えなくても楽しめる旅のページはこんな感じ…(帆船の寝台ってなんでこんなにちっちゃいの。牡蠣はじめてむきました。)



 他には、「車椅子を利用している方、足腰に不安のある方の観光やスポーツ体験の事例」、「バリアフリー旅行お役立ち情報(新幹線のチケットの取り方は?バスの割引は?飛行機の予約方法など)」、「旅のチェックリスト(旅行に行きたいけど準備はどうしたらいいだろう?心配な事を整理したいなど)」、「バリアフリーな旅行を実現するための旅行をサポートする情報や相談先」など盛りだくさんの全20ページです。

 では、ご機嫌で演じたにもかかわらず担当者からボツをくらってNGとなっちゃった写真をいくつか最後に公開しちゃいましょう。

 透かし橋ってご存じですか、隙間だらけの横棒でできた橋です。松島名所・五大堂の透かし橋、足下には海が見えるといいます。こんなとこ、一人で渡る白い杖の盲人…、「その人、楽しそう!」とはやっぱなりませんよね。写真見た人を心配させてどうする?よってボツ!

写真3
杖でさぐりながら慎重に渡る五大堂透かし橋。でも、ムツボシくんはけっこう楽しいのであります。



 次はこれ。瑞巌寺・国宝の庫裏内で見つけた「火の用心」の木の札。観光ボランティアの方がそっと触らせてくださいました。「火」の漢字の左右の点が、お日様とお月様の形になっていました。でも、公式にはこれは触れたらダメのようです。ボランティアの方の柔軟な対応に感謝です。

写真4
もしかして、これも国宝?昔から伝わる「火の用心」の札、漢字が絵文字のようにデザインされている



 そして、最後は松島の温泉旅館での1コマ。ムツボシくんのむさ苦しい身体の露出度が多すぎてボツ。でも、さっきフロントの人に温泉内を案内してもらったときに、ちゃんと電話の位置と使い方、教えてもらっていたので、じっくりお湯を堪能したらハイ電話…、迎えにきてもらったのであります。

写真5
写真6
ボツになったムツボシくんのきわどい写真、しかたないのでもう湯からあがります。さあてフロントに電話・電話…



 それにしても、「なんでリハビリセンターが旅のサポートブックなの…?」と、この企画に協力しつつも疑問がプカリ・プカリ!旅ってリハビリの延長なのでしょうか。障害者が観光地に出かけて何かに困ったら、それって窓口はリハビリの担当者なのでしょうか。うーん、ある旅館に全盲の私が電話で予約、「大浴場までどなたか案内してもらえますか、それなら目が見えなくても温泉が楽しめるのですが…」と。そして、「ちょっと、うちでは対応できません」といわれたとき、この問題を、その現地の旅館組合や観光協会と障害のある私との間の直接の問題として取り上げてほしいとムツボシくんは思うのです。でも、宮城県では残念ながらまだまだそのような共生社会への道筋はないのです。宮城県では、このような「ちょっとしたことで障害者も楽しめる旅にまつわる接遇ポイント」みたいな理解・支援をどこの部署がすすめているのか、すすめていこうとしているのかがわかりません。そんな宮城で、県立のリハビリテーションセンターが打ち出してくれたこの企画には、「観光課も福祉課も、観光協会も旅館などの業界も、どっこもなんにもしないのなら、うちがやりましょう」というリハセンの強い意気込みを感じます。ムツボシくんもこの先の展開がとても楽しみなところであります。作成したばかりのこのサポートブック、さあて、どこのだれに広げていこうかな…。
2015年4月9日

ここでも間違うか点字表記…!地図と測量の科学館

 ハーイ!ムツボシくんです。3月末でしたか、つくば市での用事を済ませて立ち寄ったのが「地図と測量の科学館」でした。

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国土地理院のお役所のすぐ隣にある地図と測量の科学館(茨城県つくば市)



 さすが地図の本家本元博物館。うれしいじゃないですか、正式な展示セクションの一つとして、「触地図」のコーナーがありました。さっそくムツボシくんの指が展示物をキャッチ…!目新しいのは、3Dプリンタによって作られていた触地図です。

写真2
さきほどの海底火山の動きにより小笠原諸島で隣り合う島が一つにつながった様子、これぞ触地図でないとわからない情報だ!



 この3Dプリンタによる触地図だが、まだまだ改良点がありそう。それは触り心地が悪いのです。つくば駅周辺の地図も3Dプリンタにて触地図が作成されていましたが、盛り上げた道路部分も、盛り上げていない区画された土地部分もまったく同じザラザラ触感。せっかく盛り上げたり盛り上げなかったりという変化がつけられるのだから、触感もせめて2種類はほしいところ。材料の問題で限界もいまのところあるような話を担当者からはうかがいましたが、何種類かの触り心地に差がつけられるような3Dプリンタ触地図が実現するなら、見える人の地図の色分けに対応できる触地図の読みやすい表現について検討できる時代がまもなく来るかもと思いました。

写真3
つくば駅周辺の3Dプリンタによる触地図だが触り心地がよくないのが残念



 さてさて、最後に伝えなければならないのが、展示されていた触地図内の点字に間違いがあったということです。一つではありません。あちこちに点字表記の間違いがあったのです。ここはどこでしょう。点訳を習った学生が、試作した地図を展示しているどこかの高校の文化祭会場ではないのです。国土地理院なのです。しかも、正式に「触地図」コーナーと銘打って国民に来館をよびかけている国の科学館なのです。それとも、国民には「この間違った点字を広く見てほしかった」とでもいうのでしょうか。

写真4
この地図の凡例の中に、点字が読めるみなさんはいくつ間違いを見つけられますか?



 なぜ、こんなものが堂々と展示され続けているのでしょう。点字自体を誰が間違ったのかが問題なのではありません。間違ったままの点字がどうして、そのまま展示室に持ち込まれ、そのまま放置され続けてきたのかが問題なのだと思います。なぜ点字表記の専門じゃない人が作成したものがそのまま公開されてしまっているのか、国民の目や指に触れるまでの過程で点字の専門家になぜ評価してもらわなかったのか。点字はこんなに甘く見られていたのです。悔しくて残念です。「ここに点字の五十音の一覧表があるのだからこの通り、点字なんて1点1点を盛り上げておけばいいのでしょ」と言われているみたいでとても悲しい気持ちになったのでありました。点字は顔文字のような単なる記号ではないのです。多くの文化を背景にもつ文字体系なのです。まだまだ点字が「文字」として国の機関にまでも認識されていなかった…、それもムツボシくんたち点字使用者側からの啓蒙不足のなれの果てなのでしょう…。悲しみの余り頬をつたうものをそのままに、ムツボシくんはトボトボ帰途についたのでありました(だって、傘、持ってなかったんだもん!)。

●地図と測量の科学館(国土地理院)
http://www.gsi.go.jp/MUSEUM/
2015年3月31日

ムツボシくんが河北新報・今度は朝刊五面に…?

 ハーイ!ムツボシくんです。ムツボシくん、またまた河北新報に載っちゃいました。今度は朝刊、三面じゃなく五面、五面でごめんなさいってネ。で、なんであやまってんの?ですね。

 今回の記事は声の交差点「持論・時論」という読者投稿コーナーへの掲載であります。内容は、3月22日付け点字毎日にも取り上げてもらいました「見えないと旅って楽しめないの?」というテーマを取り上げてみました。

 お話の舞台は日本三景・松島。松島は「食」はいい、でも、見えない者にとっての「触」がよくないのであります。私たち点字を使う日本人に対して、点字パンフレットはないし、点図による地図類もない。これじゃ、せっかくの日本三景の風景美もイメージできません。まるで点字民族の観光客は眼中にないっていわんばかりです。これに対して、中国語の繁体字と簡体字版、ハングル版、英語版と外国からの観光客向けには立派なカラーパンフがドドンと案内書には平積みされているのです。これを私たちはどう考えたらいいのでしょう。点字を読む観光客なんて少数も少数、そんなところまで配慮できないに決まっているじゃないの…。やっぱ、あなたもそう感じちゃいますか…?この話題、詳しくは「手でみる旅のガイド」の第18回をご覧くださいね。

 ちなみに、松島町のホームページからメールにて出した「松島町長宛のお手紙」、あれからもう二ヶ月が過ぎました。いまだに、なんの反応もなくなしのつぶてであります。読んでもらってもいないのかな…、うーん、寂しい!

写真
3月29日付、河北新報朝刊五面、ムツボシくんの投稿が掲載されました

 [追記] 松島町長への手紙、「なしのつぶて」と書きましたが、河北新報掲載もしくは本ブログ掲載がきっかけとなったのか、3月31日、松島町役場から電話をいただきました。4月中に、松島町の観光および福祉の関係者の方と話し合いをもつことができそうです。また、進展がありましたらご紹介させていただきます。その風景美が視覚障害があっても納得できる日本三景・松島になるように、求められれば微力ながら協力したいと考えております。

2015年3月6日

ムツボシくんが河北新報・三面記事に…?

 ハーイ!ムツボシくんです。ムツボシくん、新聞夕刊の三面に載っちゃいました。えっ、三面?なに、事件起こしてんのよ…とご心配の必要はありません。宮教大の点訳サークル「ムツボシくん」(サークル名もムツボシくんなのでややこしいですね)の学生たちの活動が、3月2日、宮城の地方紙・河北新報に紹介されたのです。

写真1
河北新報3月2日夕刊三面、「広がれ点字メニュー」の記事



 今回作成した点字メニューは、「太郎茶屋・鎌倉」(仙台上杉店)のメニューです。このお店は、宮城県立視覚支援学校や宮城県立視覚障害者情報センターがすぐ近くにある一角にあり、これら施設への最寄りのバス停が目の前なのであります。

写真2
これが、町家カフェ&雑貨の「太郎茶屋 鎌倉 仙台上杉店」
http://cafe-kamakura.com/top.php




 私、ムツボシくんもこれまで何度となく昼食・休憩に立ち寄っていたお店…。点字メニューができたことで、多彩なメニューから、ランチ・スィーツなどじっくり自分で選ぶ楽しみができました。

 2月26日、学生たちと、このお店を訪ねて、できあがったばかりの点字メニュー2冊を店長に贈呈、河北新報のS記者が取材に来られたのでした。

写真3
サークル代表のSさん、ちょっとテレての贈呈式



 この日、集まった学生たちは、S記者から、「何が一番たいへんでしたか」などとさっそく質問を受けていました。私、ムツボシくんも取材を受けました。「どうしてこのような活動をしているのですか?」とど真ん中の直球!「視覚を使えなくなって寂しいことの一つに‘一人で選べないといったつまらなさ があること」を説明しました。レストランでのメニューしかり、本屋の立ち読みしかり、洋服などのウィンドウショッピングしかりです。見える人にメニューを読み上げてもらうのに気を遣って「喫茶店ではコーヒーしか頼みません」といわれる全盲の方を複数知っています。特に大切な「食欲」を満たすせっかくの外食…。食べたいものをじっくり一人で選べることは何よりの楽しみとなるのです。でも、まだまだ普及していない点字メニュー、いまはボランティアに頼ってでも普及したいのですが、将来的には、これらメニューの点字版はお店が普通文字のメニューを開店時に準備するときにオーナーからの声かけで備え付けられていくことを願っているとも付け加えました。

写真4
記者からインタビューを受けている宮教大の学生たち



 まあ、難しい話しはここまで。記者もまじえて、此の後、さっそく点字メニューからみんなで注文開始です。このお店の自慢のスィーツの一つが「手作りわらびもち」。点字メニューからの指による第1号注文はムツボシくんからの「わらびもちセット」となったのでありました。

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 「甘味セット」と呼ばれるこのセットは、わらびもち+ドリンクでとってもお得!

●参考サイト:点字メニューで気軽に外食を 大学生が翻訳活動(河北新報オンラインニュース)
 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201503/20150302_13051.html
2015年2月13日

ムツボシくん、視覚障害のある教師の会、第2回日韓セミナーでスピーチ

 ハーイ!ムツボシくんです。私も所属している全国視覚障害教師の会(JVT)は、1月17日、韓国視覚障害教師の会(KBTU)から12名の視覚障害教師を横浜にお迎えして、日韓セミナーを開催しました。

 昨年度12月のソウルでの日韓セミナーに続く、今回は2回目。全体会、分科会ともに有意義な意見交流ならびに親善交流ができました。

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日本側JVT代表、重田雅敏氏の歓迎スピーチ



写真2
韓国側KBTU代表、キム・ホンヨプ氏のスピーチ



 「私たちはお互いに言葉も文化も違います。しかし、共通点があります。それは、まさに私たちが視覚障害というハンディキャップを負っておりながら、立派に後進の児童・生徒・学生たちを指導している教師であるということです。一つの社会で視覚障害者が一人の堂々とした教師としてひときわ高く見られるためには教職に対する専門性を持つことは基本ですが、各種施設、制度及び社会についての認識を常に新しいものに変えていくことが必須です。本日の親善交流大会とセミナーは、視覚障害教師の専門性の向上と権益の増進、一般社会との統合について両国間の価値ある議論の場になるでしょう。」と、キム代表は熱いご挨拶をくださいました。

写真3
事例報告としてスピーチするムツボシくん



 さて、午後は日韓ともに2本ずつの事例報告と分科会です。ムツボシくんも「日本における盲人教師の役割」について10分ほどのスピーチをさせていただきました。日本では、明治になり、私たちの先輩盲人たちが資産を投げ出して、目の見えない仲間のために盲学校を各地に設立していったこと。なんと明治期だけで全国に57校も盲学校ができていたのです。また、戦後はその多くが公立となるにつれ、実は盲学校運営における「盲人による盲人のための学校」という伝統的な精神はいつのまにか薄れていき、盲学校は、目の見える校長・目の見える先生たちの赴任先の一つにすぎないかのような公立学校となっていきます。そこで、私たち盲人教師の役割をいま一度みなさんで自覚しませんか。それは、盲の児童・生徒たちにとって、私たちの生き方が物語となるような軌跡を残したいとの思いで、盲の子どもたちの前に私たちが立ち現れることです。そして、何かをしてほしいと主張だけができる子どもたちを育てるのではなく、自ら他の人に灯りを照らし続けられるランプを手にかかげられるような存在を育てることではないでしょうか。分科会では、韓国側参加者の複数の方からは、「私たち一人ひとりがあきらめないで努力すること、それ自体、新たな道をつくることですよね」とご賛同いただきました。

写真4
分科会の様子、こちらのテーマは「視覚障害に由来するトラブル発生の経緯と対処の実例」



 夜の交流は、おいしい和食を囲んでの日韓両方からの歌のプレゼント、日本側からのおみやげ贈呈、なりより明日からの私たちに‘勇気のスパイス’を互いに振りかけあう時間となりました。

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夜の集いと韓国側からの歌のプレゼントの様子



●参考サイト:全国視覚障害教師の会(JVT)
 http://jvt.lolipop.jp/
2015年2月9日

ムツボシくんの点字の部屋、1日当たり訪問者、はじめて100を突破!

 ハーイ!ムツボシくんです。2月6日、とってもうれしいことが起きました。なんと、この「ムツボシくんの点字の部屋」のホームページを見ていただいた回数が「131」に…。1日当たりの訪問者数がはじめて100を超えたのでした。

写真1
2月7日午前8時のアクセスカウンターの写真。「yesterday 131」とあるのは2015年2月6日のこと。



 実は、この間、毎日20〜30アクセスを行ったり来たりでしたので、「おやおや、何が起きたの?」「いよいよ来たか?ムツボシくんの時代!」なんて、ほくそ笑んでおりましたが、1月からはじめた「どないなってんねんシリーズ」がもしかして好評…?そういえば、最近、出会う知人や学生に、「見てみて、どじなムツボシくんの4コマアルバム、気に入ったら拡散してね」なんて広めていたのであります。大学生のみなさんのつぶやきの威力ってすごいですね。フェイスブックやツイッターの力を認めざるを得ないこれは出来事でもありました。ムツボシくんのこと、広めてくださったみなさん、どうもありがとうございます。これからも、気にいった記事がありましたら、あちこちで、どんどんつぶやいてくださいね。

 気分がよくなってムツボシくん、仙台にお出かけ。まずは、先日ようやく見つけた私好みのお気に入りカフェ・クリヤコーヒー(KURIYA COFFEE ROASTERS)へ。ここは、現時点で私の中では仙台1のコーヒーが飲める店です。


写真2
北四番丁バス亭すぐにあるクリヤコーヒーはこちら
 http://www.kuriyacoffee.com/




 そして、自分へのご褒美はこれ。仙台で月1回行われている「魅知国仙台寄席」。席亭は、地元の女性落語家・六華亭遊花(ろっかていゆうか)。毎月東京から若手のお笑い芸人がやってくるのですが、この日は「ANZEN漫才」の二人が私の耳に止まりました。あの「もしかしてだけど…、もしかしてだけど…」の歌で売り出している「どぶろっく」の弟子のようです。

写真3
まずは満足の本日の寄席、ANZEN漫才はプチ注目かな…




 最後に、ムツボシくんのお出かけと言えば、新しく作成した「ムツボシ機関車」をご紹介しましょう。

写真4
これがお出かけムツボシ機関車、全盲一人旅のイメージですね。




 さあて、この「ムツボシ機関車」、実はすでにホームページ内に登場しています。よかったら探してみてください。正解はこちらです。また、ムツボシ機関車のヘッドマークに注目!「N62-4」となっています。このマークの意味、解読できる方がおられましたら、今月中にムツボシくんまでメールいただけたら、抽選で拙著をプレゼントなんてことになるかもです。1日アクセス数131件を記念してのプレゼント企画ですね。

2015年2月4日

(4コマアルバムその4) どないなってんねん、ガストのアップルパイ

 ハーイ!ムツボシくんです。ムツボシくん、今回はガストに登場であります。ガストといえばドリンクバー!でも待ってください。友人とのダベリングなら、ドリンクバー単体よりは、何か気のきいたデザートメニューとこのドリンク飲み放題をセットにした方が200円もお得なのであります。

 さあて、見えない者の苦悩はここから顔を出すのであります。デザート?ってかぁ…。うまくフォークで食べられるものって少ないよなぁ…。ショートケーキ類が選択外であることは、もう読者のみなさんならご存じですよね。

 そこで、ひらめいたのが、手で持って食べてもマナーとして公衆からはやや寛大に許されそうなもの…、そうです。アップルパイなのです。パイ生地だったら固いしそれに指が触れる部分はネチャネチャしてませんよね、まさに、アップルパイくんは見えないムツボシくんに手で持って食べてもらうために生まれてきたデザートではありませんか。いいところに気づきました。オーダーも決めたことだし、ではでは、元気よくピーンポーン!!


コマ1 きたきたきたな、アップルパイ!よーし、まずは探索、どれくらいの長方形かな?あれれ、端っこはどこ?あっ、つめた!なに、なんでこんなとこにアイスがあるねん。わちゃ、手がアイスでベッチャベチャやん、思わず指なめ、しちゃうムツボシくんでありました。登場したアップルパイはお皿いっぱいの満月形。おーい、お前はピザか?

コマ2 でっかい満月パイめ、しかたない、こうなりゃ予定通り手で持ち上げて食べてあげようじゃないか。両サイドを持って顔に近づけてパクリとかじりつこうとしたムツボシくんに悲劇が…。またしてもアイスの攻撃。中心部にいたアイスがいつのまにかとけてムツボシくんのお口めがけて決壊したダムのようにドドドドッと流れてきたのでした。わちゃ、あっ、つめた!

コマ3 いったん皿にもどしたアップルパイ、こうなりゃナイフとフォーク。えーい、切り刻んでくれるわ。あれ、どこにナイフ入れたっけ…、ああん、もう、わからなくなったやんか、ふにょふにょしすぎて、切り取ったはずの部品の位置情報がイメージできない。まあ、ええわ、これくらいにしてと…、さあて、フォークでさしてみましょう。おーい、なんでフォークの先にぶらさがるねん。しっかりついてこんかい。お口までたどりつくまでに落ちるっちゅうねん!

コマ4 もう、フォークもあきらめた。こうなりゃ、お箸、やっぱ日本人はお箸よね。でも、アップルパイの残骸、お箸で食べてるなんて、ムツボシくんらしいっていえばムツボシくんらしい。パイの皮しかフォークではひっかかってこなかったけど、こうやってお箸なら、リンゴもしっかりつかめるものね。
2015年1月27日

(4コマアルバムその3) どないなってんねん、釜揚げうどん

 ハーイ!ムツボシくんです。4アル物語、その第3弾は釜揚げうどんであります。えっ?なんで、ムツボシくん、釜揚げの登場なの…? そうお尋ねのあなた、やっぱ関西人は小正月もすぎると、‘御節もいいけど、うどんもネ’の気分なのであります。で、冬のうどんといえば、そりゃ、もう、あなた、釜揚げうどんなのであります。

 ところがところがであります。このつけ麺タイプの麺類はムツボシくんにとっては、これまた、どないなってんねんの世界なのでありました。あのショートケーキの土砂崩れ、そして、御節の顔面攻撃と災難続きのムツボシくん! 今回いったいムツボシくんを襲った悲劇とは…?

 ではでは、4アル劇場のはじまりはじまり、第3幕は、‘ムツボシくんに水難の相’の巻であります。



コマ1 お湯に浮いているうどんを割り箸でゲット。よーし、すくいあげるぞー、おっと、どこまで持ち上げたら、無事、左手の汁ちょこの真上に来るのかな、もそっと右?それとも、もそっと手前?そろそろお箸、おろしていってもいいかな…

コマ2 では、ゆっくり、お箸下ろすぞ、うどんくん、ちゃんと汁ちょこの中に入りなさいよ。あちちちっ、そこは、ちょこ持つ手の上でんがな。こら、お前、汁ちょこから逃げ出すんじゃない!

コマ3 あかん、うまく入らなかったので再度挑戦や。えーい、思いっきりすくい上げたぞ。わっちゃー、こらこら、落ちるなって。おいおい、うどんくん、かってにおつゆにダイビングしてどないするねん。パチャパチャパッチャーン!わっ、あつちこっち、おつゆだらけじゃんかい。もう、どないなってんねん。

コマ4 あーあ、釜揚げうどん、手に負えまへん。つけ麺はあきらめました。薬味もろとも、えーい、ドドドドッ、おつゆをぶっかけちゃいますわ。
2015年1月21日

ムツボシくん、点図作成のための入門書を出版!!

 ハーイ!ムツボシくんです。このたび、ムツボシくんは、長年点訳ボランティアとしてお付き合いさせていただいてきた点訳サークル「ぼちぼち会」(滋賀県)の畑中さんとともに、『まねて覚える点図入門 〜エーデルがひらく図形点訳の世界〜』(読書工房、2015年1月、3500円+税、B5判 144P オールカラー)を出版することとなりました。

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「まねて覚える点図入門」の表紙



 昨今、視覚障害者の読書環境は着実によい方向に向かっているとは、ムツボシくんも思っています。ただ、残念な分野もあります。図形や地図・イラストなどで図示されたページの内容がいまだにうまく私たち全盲の者には伝えられてこないというところです。

 図の説明を文章や声で訳していただいている点訳本・音訳本もかなり一般化してきてはいますが、文字や音声の流れだけで頭に図形や地図を描くことは容易なことではありません。でも、触れられる線で図示されれば私たちだって一目瞭然というか、一触瞭然なのであります。

 そこで、パソコンで簡単に描き点字プリンタで打ち出せる図形点訳ソフト「エーデル」の登場となります。エーデルとは元徳島県立徳島視覚支援学校の先生だった藤野先生が開発されたフリーソフトです。

 じゃあ、私も点図にチャレンジ!なんて、みなさんの多くの方に点字と同様、点図の世界にもどんどん足を踏み込んでいってほしいところなんですが…、ちょっと待ってください。こんな心配事が頭をよぎりませんか。

 「どの点の大きさ、どんな点間隔の線を使えばいいのかしら?」
 「ページの真ん中、それとも端っこから描いたらいいの?」
 「これじゃ、図が小さすぎるかしら?」
 「こんなにくっつけて描いてしまっていいの?」
 「私の図、見えない人が触って、はたしてわかるのかしら?」

 実は、今回出版した本はこのようなお悩みにズバリッ!お答えするものです。点図を描きたくても、ついついためらってしまうあなたの疑問がすべてこの一冊にて解決します。

 初刷500部の限定販売?とおそらくなるのでは。だってなかなかのマイナーな本です。重刷はあまり期待できません。興味をもっていただけたなら、品切れになる前に、ぜひお早めにお手に取ってみてください。

 【こんな特典も…!】 この本で扱う作図問題のすべての完成見本図データファイルがムツボシくんの本書サポートページからダウンロードできるようになります。また、作成途中の各段階ごとの工程図の点図データファイルも各章ごとにすべてをダウンロードできます。

【主な目次】

第1章 原図通りには描かない4つの基本的な約束事項
 コラム 点図と遠近法
第2章 直角三角形を描く
第3章 立体(四角錐・円錐)を描く
第4章 一次関数のグラフを描く
第5章 折れ線グラフを描く
 コラム 補点の役割と使い方
第6章 棒グラフを描く
第7章 円グラフを描く
補章 グラフ点訳のための頭の整理
第8章 断面図に変換して描く実験図
第9章 下絵をなぞって作図する地図
第10章 視点を変えて本質のみを伝える領土・領海・領空図
第11章 2枚に分図して表す天球図

●読書工房/まねて覚える点図入門のページ
http://www.d-kobo.jp/1_245.html

 2015年1月10日

(4コマアルバムその2) どないなってんねん、高級おせち

 ハーイ!ムツボシくんです。今回は4コマアルバム、縮めて4アル第2弾と参りましょう。一体全体どないなってんねん、お重のおせちの巻であります。君たち、私に何か遺恨でもあんの?見えない私が優しくお箸でつまんであげてるだけじゃご不満なの…?ってお話です。

 こちらは知人よりいただいた金箔黒豆。なんとも高級そう!うーん、でも、何粒食べても悲しいかな金箔無し黒豆との違いがわかりません。せっかくの金箔黒豆。ああ、見えない人にはもったいないだけじゃん…なんていわせるのもくやしいと、必死で金箔なるものを舌でころがすのですが、さっぱり味も感触も楽しめませんでした。

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見えたら、さぞ豪華絢爛なんだろな、金箔黒豆…



 さて、ムツボシくんが意外と見栄っ張りってことは、前回のショートケーキの巻にてバラしちゃったところです。で、ひとりもんの寂しいお正月。金箔黒豆ごときでめげてるわけにはいきません。おせちのお重、こちらは通販にて高級料亭直送?のものをゲット…!まあ、それなりの気分だけは新年、一人で囲む?食卓を演出したのであります。

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このお重、何が入ってんねん、まるで闇鍋状態…



 では、4アル劇場の始まりです。またしてもドジなムツボシくんを笑ってあげてください。TPP締結や中国からの輸入食品を通して昨今、関心が急激に高まってきた食の安全。でも、もう一つの食の安全に関する問題がムツボシくんの食卓にあったのでありました。

コマ1 お重の中を箸で探索、おっと、つまみやすい棒状のものをキャッチしたぜ。口に入れてみた。あちゃ、お前、なんで紙の服、きたままやねん。

コマ2 おっと、今度は大物をゲット、こら、食べごたえありまっせ。あちゃ、数の子やな、なんで口に入る前に、顔に当たるねん。イタッ!お前、エビやろ、鼻の穴にしっぽが先に入ったやんけ…、端っこはいったいどこやねん。

コマ3 こいつはなんだ、グニャッとしたけど、つかみごたえはあるじゃんか。わあ、串にささった団子かい、このまま近づけたら串で目、つきさすところやったわ。

コマ4 えーい、安心して食べられるものはどこ?わかったぜ、固いもんはどこか危ないってことなんやな、それなら、このフニャフニャを食べてみましょ。わーっ、これって草のかざりもんやんけ、まっずーッ!
2015年1月1日

(4コマアルバムその1) どないなってんねん、ショートケーキ

 ハーイ!ムツボシくんです。みなさん、今年未年も「ムツボシくんの仙台全盲物語」を引き続きどうぞよろしくです。

 さて、初春にふさわしいビッグ?な新企画の登場です。その名も「どないなってんねんシリーズ」。記念すべき第1弾は、「いちごのショートケーキの巻」であります。大いにどじなムツボシくん、笑ってあげてください。

 昨年末のこと、ひとりぽっちクリスマスに決まっているにもかかわらず、家族がいるかのように見栄で予約しちゃったホールケーキ。ショートケーキになるようにケーキカットすること7回にして、ようやく容姿端麗なピースを一つ切り出すことに成功したものの、あとは土砂崩れケーキ。毎日、賞味期限と追いかけっこしながら、食べるはめに。ああ、ムツボシくん、これだけでも十分悲しい物語なのであります。

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見栄はやっぱ張るものじゃありませんね。直径15センチのケーキ、これ、どうやってカットするねん…



 ところがところがです。唯一きれいに残ったいちごのショートケーキ風ピース、これだけはお上品にお紅茶でも入れて…とフォークを握ったのでありましたが、悲劇はなおもムツボシくんに襲いかかるのでありました。ここからは新たな試み、4コマアルバム(縮めて4アル)でお届けします。


1コマ 無事ひと口目をフォークでカット、見えなくても一人でできるもんね

2コマ あれ、ふたくち目は空振り、ここにいたはずなのに…。おい、こらー、ショートケーキ、なに、かってにこけてんねん

3コマ そっちがその気ならにがさへんで、ここにいるんやろ、ガバリッ、わあ、多すぎた

4コマ えーい、いちご、もろとも、さらえてくれるわ。まだ皿に残骸あるって?もうどないなってんねん!